表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/19

3 戦闘

 二人が現場に到着すると、数人の少年少女達が巨大な二足歩行の野獣を取り囲んでいた。


 「ユノス!」

 「ユエお兄ちゃん?ゴメン、こいつ強い!」


 野獣と正対していた少女が両手にバトンのような物を持ち、左手を相手に向けて伸ばした姿勢のまま叫ぶ。

 それは硬質、難燃性の補助具であり、稲妻、火炎等の作用の発動補助を行い、主に二級衛士が武器として所持する物であった。

 厄災に対しそれ自体では微々たる効果しか有しないものの、火薬や光学兵器をほぼ無効化する相手に対し、牽制を行うには十分な武器となる。先ほどの炸裂音もこれによるものであろう。


 「待たせた!みんな下がって!」

 「わかった!」

 「ご武運を。」


 素早く正面に出て、それまで牽制を行っていたホットパンツにポニーテールの少女、ユノスとポジションを交代すると、皆が散り散りに後退してゆく。

 非戦闘員であるオリエンスも、派手なスピンターンをかましつつ相手の攻撃圏内から離脱する。


 「ゴアァァァァァァァァ!!」


 野獣が威嚇するように叫ぶ。

 ロキ=コンガ。厄災の中でも比較的危険度は低いとされているものの、その巨躯と文字通り鋼のような肉体、一撃に凄まじい破壊力を秘める剛腕は脅威である。

 一見ただの大型動物のように見えるが、全身が剛毛で覆われ、上半身から顔面にかけて硬質化しているのが特徴で、通常兵器ではほぼダメージを与えることができない。


 野獣を見据えたままユエは『マゴス』を感じる。

 外から、内へ。

 それは事象を改変する能力なのか、それとも願望を実現する能力なのか。

 いずれにせよ、ユエが天才魔道士と呼ばれる所以は、生まれながらにして誰から教わることも無く『マゴス』を自在に操る方法を理解していたからであった。

 内から、外へ!


 「ガアッ!!」


 一歩踏み込むと同時に、掌底をかざして相手の下顎あたりに衝撃を与える。


 「ウゥゥゥゥグルルルルルゥゥゥゥアアアアア!!」


 一瞬ひるんだものの、再び野獣は突進して掴みかかろうとしてくる。

 それに対しユエは、素早く引いては同じように掌底波を打ち込み、弧を描きつつダンスを踊るように押し引きを繰り返す。


 「ギャッ、ギャッ、グェアアッ!!」


 徐々に相手の動きが鈍くなってくるのが見て取れるものの、ユエの体調にも明らかな変化がおとずれていた。

 心臓の鼓動が早くなり、軽いめまいと頭痛がする。それと同時に全身に痺れるような感覚も。

 以前には感じなかった症状であった。能力を酷使した結果なのか、それとも・・・。


 『それでも、やるしかないんだ。』


 ユエは左足を起点に、右足を地面すれすれに回して蹴りだすような動作を行う。

 地上に波が立つようなエフェクトが生じると、野獣の足元に波及する。


 「ゴアァァァッ!!」


 飛び込もうとしていた相手は両足をもつれさせて前につんのめるようにして倒れる。

 ユエは両手を上に広げ、頭痛をこらえながらも意識を集中させる。

 光の粒子に似た槍状のものが形成され、徐々にそれは大きくなってゆく。


 「ハアッ!!」


 投擲された光の槍はロキ=コンガの急所である延髄を打ち抜き、野獣は悲鳴を上げ、そして動かなくなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ