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Chap. 1 友人と狩り

ここ、デルカ村は、アーリカ王国の、山の麓にある小さな小さな村だった。都は山の向こうにあり、とても貧しかった。幸い、山の木の実や小動物が豊富に採れ、近年豊作が続いていたので、食料には困らない。しかし、今年は雨が一滴も降らず、ひもじい思いをするものが少なくなかった。





そのデルカ村に住む十二の少女レチャは、自分と同じ黄色の母の目を見ながら言った。



「母さん、晩ご飯用の肉はある?」




「いえ、もう備蓄分しかないわ。米の代わりのゾツ(穀物)も少なくなってきた。」




「じゃあ山に行って採ってくるね。」




「ありがとう。気をつけてね。」






レチャは弓矢とナイフ、朝の袋を持って外に出た。外はカラッとした晴天。エム・ユル<天空の太陽>が少し傾き始めている。






山に入ると少し涼しくなった。この山ーーーチャツ山脈のトデ山ーーーの木にはいつでも葉が付いている。それは村の長者の魔力が働いているからだった。




毎年冬が来る頃、眠りの祭りが行われ、次の春も山が豊かであり続けるようにと魔力を注ぐ儀式がある。レチャはその儀式の一つ、若き者の生命力を山に送る若生式に参加した。その時に感じた山の魔力や命の力はとても強力であった。偉大な圧力に、生き生きとした生命力。以来、レチャは山での狩りでは余計なものを取らずに、必要最低限の量だけにしている。








しばらく耳を澄ましていると、右のほうからカサカサと音がした。これはウサギに違いない。レチャは弓を構えた。両手にはめている革の手袋と弓の弦がキュルキュルという。






と、何か色とりどりな動物が飛び出してきた。






「わあっ!?」






「それ」が何か、に気づく前に私は矢を持つ手を離してしまった。矢が弧を描いて飛ぶ。






「ああー!」






それは私の親友だった!




運動神経が良いのが幸いだった。彼女はさっと飛びのき、矢は地面に刺さった。






「当たらなくてよかったよ。私のことをなんだと思った、ウサギ?」




「図星.....。」






この少女はテーサ。レチャの1歳年上の幼馴染みである。祖先が強き武人なのならば、自分も、と言って武術を習っている。それゆえか、1歳違いなのにレチャよりも大人びている。テーサには3歳下の弟ガーサがいて、よく3人で遊んでいたものだ。






「食料が足りないのか、レチャ。」




「うん。」




「私の家もだ。まあ、みんなそうだが。去年の蓄えが多い家はなんとかしのいでいるらしいが。...... しかしうちは赤子が生まれるからな。」






さっきから思っていたけれど、いつの間にこんな言葉使いになったの?!

こんなしゃべり方をするのは少しくらいが高い人とか、武人とかであり、普通雨のこの年頃の少女が使う言葉遣いではない。






「へえ、そうなの。 って、え? そんなの聞いたことないけど! そうならそうと言ってくれれば食料分けてあげたのに。」




「いいんだ。すまない。実は理由があってな...。」






テーサの話はあの書物に書いてあることにとても似ていた。






「母さんに子供ができたときから、周りがおかしくなったんだ。母さんは意識がないし、父上とガーサは、まるで母さんの周りに壁があるように、母さんに近づくことができなくなって。ガーサは時々急に叫び始めるし! そしてね、ガーサはね、叫んだことを覚えてないの!」






テーサの言葉使いがどんどん昔の言葉に変わっていく。




テーサの苦しみや、追い詰められた感覚が伝わってきた。




なんて言ってあげればいいんだろう? どうすれば気持ちが楽になるだろう?






「うん、うん、ちょっと落ち着いて.....」




「父さんが村の長者さんに相談しに行ったらね、長者はこういったんだって。


   『君の子は..... 』」




「ヘラジャ・ヤイ・チャ。」




「う、うん。な、なんで分かったの、レチャ。」






テーサの目には誇りと不安が混ざった色が浮かんでいた。






「ヘラジャ・ヤイ・チャについての書物を読んだことがあって...」






その書物はとても興味深かった。ヘラジャ・ヤイ・チャが生まれる家は、セハルナームに生まれた最初の一人ーーーデラーダ・アレレの血筋を受け継ぐ。なぜかアーリカ出身の人しか受け継いでいない。年々、代々デラーダの魔力の血が濃くなり、一番濃くなった時に、ヘラジャ・ヤイ・チャが生まれる。それで、二、三十年ごとに生まれるのだそうだ。


しかしここ四十年世の救世主は誕生していなかった。




「とても名誉なことだとはわかっているけれど母さんとは意思疎通できないし、母さんの世話をできるのはわたしだけ。すごく大変で。」




「そりゃ大変だよ。責任重大だし。」




「うん。で、ヘラジャ・ヤイ・チャのことは村の人には伝えるな、って言われてて。だからレチャにも言えなかったんだ。」




「そっか。私も秘密にするね。ところで何か捕まえられた?森の中で。」




「ああ。ウサギ2羽に子ジカ1匹、サウラムケーを1羽な。弟と一緒に狩っているから。」




あ、テーサ、元気を取り戻してきたみたい。




「サウラムケー?それってあの、とても希少で、冬には水中に越冬しに行くと言われている不思議な伝説の鳥?確か栄養価がそごく高いんだよ...。」




レチャは眉を上げた。




あーあ、またレチャのウンチクが始まったよ。読書好きで物事に興味があるのは良いことだが!




「そうだ。弟が網で捕まえたんだ。あ、そろそろ行かねば。」




「うん、じゃ、元気でねー。」




レチャはその後、山の中を歩き回った。そして大きな鳥を見つけた




逆光だから色が見えないけれど、少し派手な鳥のようだ。鳥は何かを食べている。




弓を構えながらそっと近づく。




私は矢を放ちながら呪文を唱えた。




「フレアル・ファガート、矢。」




その途端、矢が鳥めがけて一直線に飛んだ。鳥がキエッと鳴き飛び立った。




こうなるのはわかってる。




「チェンジェ・トッラ!」




矢の軌道が変わった。鳥を追いかけ始める。レチャは矢を追いかける。




「チェンジェ・トッラ・ダウ」




鳥が枝にとまったところへ矢が落ちていく。




「よし、命中」




矢が煙のように消え、鳥は枝から落ちた。




「あれ?こ、この鳥は......?」




七色に光る羽。蜂蜜のような色の頭ととさか。とても奇妙な形をした茶色い口ばし。




「さ、サウラムケー?」




間違いない。


珍しい鳥、サウラムケーであった。


滅多に捕まえることができないのに、テーサも私も狩ることができた。偶然?




今夜の夕餉は少し豪華になりそうだ。



不思議な鳥サウラムケーを二人ともゲット! いずれ、サウラムケーの絵を載せますので、お待ちください。


次は、不思議な森の姿です。


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