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それは空に龍が見えたあの日。

作者: 友坂 悠

 紫に光る雲の向こうに龍がいた。


 雨は強く、そして、激しく打ち付け。

 屋根が揺れる。風の音が轟々と響いていた。


 にゃー。


 猫のミィが僕にすり寄って鳴く。


 そうか、お前も怖いよな。


 バタバタと打ち付けるトタン。あれは何処から飛んできたのだろう?


 窓の外は激しい雨。ベランダに引っかかったトタンが危険だとは思うけれど今外に出るのはもっと危険だと感じて。

 こんなに酷くなる前に雨戸のシャッターを閉じておけば良かった。そう反省する。


 それでも。


 シャッターが閉まってたらあの光景は見る事が出来なかっただろう。




 紫の龍。ほら、ドラゴンボールの神龍みたいなあんな昔ながらの龍。

 最近流行りの異世界とかで出てくる様なドラゴンではなくって本当に龍だった。


 雨雲の中で蠢くその巨大な龍は、自身がこの災害の原因であると主張するかの様に尊大で禍々しい存在感を撒き散らしていた。


 でも。


 あんなにくっきり見えるのに。

 あんなに巨大でうねうねとうごめいているのに。


 テレビはそんな事を何も語らない。


 ネットのニュースにも、全く、だ。


 まさかこれは僕だけが見えているまぼろし?


 いやいやそんな。そんなはず……。




 テレビでは、命の危険があります、避難してください、ってそうこの地域の避難情報が流れ始めた。

 でも。

 この雨と風の中ミィを連れて避難できるところなんて無い。

 幸い此処は鉄筋のアパートだ。

 下手に避難するより安全かもしれない。


 そう。

 思って窓の外を見ていた僕の目に映った龍。


 台風って嘘?

 それとも、台風っていうのがあんな龍の姿に見えるってこと?




 龍はだんだんと近づいてくる。

 ゆっくりではあったけれどこちらにまっすぐ進んでいる。


 ネットで確認してもこの辺りは直撃コースではあったけれど、それが龍だなんて聞いてない。


 あれがそのまま此処までくれば、この建物だってただじゃ済まない。そう覚悟を決めたそのときだった。



 真っ赤な服を着た女性? 髪は白銀で赤い帽子までかぶってまるでサンタクロースの様な装いの、多分女性。

 真っ赤なミニスカで、赤いブーツ。

 そもそもこの台風は季節外れでもう確かに十二月師走だけれどだからってサンタ?


 そんな彼女が目の前に浮いて。


 まるで龍から僕らを助けてくれるヒーローの様に立ちふさがった。



 それはまるで。


 くるくると回るダンスのように。


 彼女は龍の攻撃をいなし自身の両手から光る槍を飛ばす。



 まるで台風に雷雲がぶつかったかの様なそんな不思議な光景。



 縦横無尽に飛び回りながら龍をいなし攻撃を決める。

 そんな彼女の攻撃が30分も続いただろうか。龍はその長さが段々と縮んで行き、そして、最後には消え去った。



 龍が消えた場所に光が差し込む。


 虹が、ぼんやりと浮かび上がった。



 彼女は?



 虹に気を取られているうちに見失った彼女を、僕は窓から身を乗り出して探して。


 気がついたら涙が流れていた。



 雲の隙間から差し込む太陽のあたたかい光。


 くっきりと浮かび上がった虹。


 風雨は止み、キラキラと光る世界。



 人類にとっての最高のプレゼントだ。


 そう。


 感謝した。


   Fin

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