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迷い子  作者: 竜胆
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二人と一匹での生活

彼氏が私の家に週末に来るようになりました。

お風呂場で彼氏に髪を洗って貰っているうちに私はうとうととし始めた。「眠たいの」との彼氏の問い掛けが遠くに聞こえて、私はすっかり身体の力が抜けてしまい、正気に戻ったのは、彼氏には髪をとかれてるいるときだった。柘植の櫛に絡んだ髪が引っ掛かって、その痛みで目を覚ました。


みぃは驚くことには、彼氏の膝の上に寝ていた。裏切り者がここにも居た。


「おいで」と彼氏から言われ、私の背後から彼氏は私にぴったりとくっついて来た。狭い布団だから仕方が無いのだけれど、私たちは密着していた。

彼氏は囁くようにまた「ごめんね」と言った。私は「謝る気が感じない」とまだ拗ねていた。

彼氏は私の髪を撫でながら、「俺も大人気なかったのは分かってるよ。これでも俺、必死なんだよ」と私を笑わそうと茶化して来た。

「仕方がないわね。そこまで言われちゃうと。私にとってもあなたは特別な存在だと分かっているでしょ」と機嫌を直して答えた。


「みぃはあなたに懐いたの」と彼氏に聞いた。「お風呂で俺の匂いが瑠璃と一緒になったから、膝の上に来たみたいだよ」と彼氏が言った。「みぃとうまくやれそう?」と聞いてみた。「何とかなるさ」と彼氏は楽観的だった。

「私はどうしたら良いの。何かして欲しい?」「何も。瑠璃は変わらないさ。みぃを連れて俺の家においで」

背後から彼氏に囁かれながら、抱き締められながら私は熟睡した。


翌朝、みぃがにゃおにゃお鳴きながら、寝室の扉を爪でカリカリと掻いている音で目覚めた。彼氏はまだ寝ていた。

ミィにまずは昨夜のことを謝った。私の指をチュウチュウと吸って、ゴロゴロ喉を鳴らしてくれた。

朝ごはんにしようか、とミィに人工ミルクと離乳食を作ってあげた。満足したのか、みぃはまた寝てしまった。

私は彼氏と二人分の朝ごはんの支度に取り掛かった。出来上がる頃に、彼氏が寝室から出て来た。

「久しぶりにまともな朝ごはんを食べられるよ」と彼氏は言っていた。

「私も二人で誰かと朝ごはんをまともに食べたことないわ」と答えた。


「考えたんだけど、週末にだけみぃを連れて瑠璃、俺の家に来ないか」と提案して来た。「両親に相談してからでいいかな」と私は逃げた。

「じゃあ、俺がこのうちに週末来てもいいか」と言われてしまい、彼氏に押し切られ、私は流されてしまった。


彼氏は週末だけでなく、毎日のように我が家を訪れるようになった。

みぃも諦めたのか、それとも彼氏に慣れたのか、たまには彼氏に甘えてみせるような素振りをするようになった。


彼氏は仕事で帰りが遅くなるのだと思っていた私は、晩ごはん時には必ず来る彼氏に驚いていた。聞いてみたら、「ちょっと仕事を部下に回すようにしたんだ」と平然とした顔で言うので、どこまで信じて良いのか分からなかった。彼氏の仕事についても私はよく分かっていないままだった。彼氏の役職についても曖昧だった。


みぃは牙も生えて、獣医さんが勧めてくださったキャットフードを食べさせてみる事にした。最初は食べるのが下手だったけれど、なんとか食べていた。一生懸命に食べる姿が可愛かった。

彼氏もいつの間に私の横にいて、そっと私の肩を抱き寄せてくれた。


「あのね、今日は金曜日でしょう、外で食事したいわ。ね、デートしたいわ」と彼氏には始めて私からデートに誘った。

「瑠璃、行きたいところある?」と彼氏が聞いて来た。「うふふ、お店分からないの知ってるでしょ」と返した。「何がたべたいの。瑠璃は野菜が好きだろ」と問われて、「あなたはお肉が好きよね。でも鉄板焼きって行った事がないの。目の前で焼いてくれるのよね?」と聞いてみた。「分かった。店選び任せといて」

「シャワー浴びて来たら?」と私は彼氏には言った。


彼氏には内緒にしていたが、私はお弁当も初めて用意していたのだった。


シャワーを浴び終えて彼氏はシャツにスラックス姿で、テーブルに私が並べた和食の朝ごはんを二人で食べた。「瑠璃の味つけは京風だけど、お母さんの影響なの」と聞かれた。「分からない。母は早くに結婚して、祖母の濃い味付けを受け継いでないのよね。母は独学で料理を作るようになったみたいよ。結婚当初は母はレパートリーが少なかったっけと言っていたわ。でも私たち姉妹が幼い頃は母が専業主婦をしていたせいか、おやつも全て手作りだったのよ」と母のことを彼氏に話した。

「父は仕事が忙しくて一緒にごはんを食べた記憶があまり無いわ。みぃが我が家に来てから、両親たちとここで食事をするようになったのよ」と父や両親の話もした。


食べ終えてから、私はお皿類を洗っていたら、彼氏は身支度を整えていた。私はネクタイを締めてみたくなって「したい」と言って、彼氏に締め方を習いながら締めた。どうかな。うまく結べてる?」と彼氏に聞いた。

「うん。ありがとう」と彼氏はネクタイを撫でていた。


彼氏が仕事に出る前に、「ちょっと待って」と声を掛けた。彼氏のスーツやスラックスに付いたみぃの抜け毛をコロコロで取ってあげた。

「これ」とわたしがお弁当を渡すと彼氏はきょとんとした顔をしていた。

「お肉いれてるから」と、私も照れくさかった。

「行って来ます」「はい、行ってらっしゃい」と私は庭に出て彼氏の車が見えなくなるまで見送った。


そのまま、庭の手入れをして室内に戻って、お洗濯をした。

みぃは食後のお寝んねから目覚めて、私の足元に擦り寄って来ては、時おり撫でて、と鳴いていた。

彼氏とわたしの仲が甘すぎるかな、と反省しています。。。

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