出会い
一人暮らしの女性と、家に迷い込んで来た猫との暮らしぶりを書いて行こうと思います。
幼い頃から、私はよく迷い子になる子だった。
デパートに母と行った時には、必ずいつの間にか母とはぐれてしまっていた。
ある時、祖父とスーパーへお買い物に行ったところ、祖父を待てずに記憶をたどりながら、祖父母の家に帰るつもりが、全く逆方向の神社にたどり着いた事もあった。
私は大学を卒業したものの、働きもせずに実家に居候をしていた。妹は立派に看護師になって、すぐに家庭を持ち、すぐに子どもも授かった。
羨ましい気持ち、妬む気持ちから、妹から距離を置く心情になって行った。
私はまずは契約社員として働くようになった。それから、持っていた資格で自宅で出来る仕事をするようにしていた。実家を出て小さな平屋の一軒家を借り、一人暮らしを始めた。その小さな庭の手入れをするのが楽しみの一つになっていた。
ある日の休日の朝、「ミィミィー」という鳴き声が外から聞こえて来た。庭の角隅に小さな子猫がいた。
まだほんの手のひらサイズの小さな子猫で、白い猫だった。牝だった。
猫の身体と顔をホットタオルで拭いてあげて、それでも汚れが落ち無かった足などは、洗面器にぬるま湯を張り、嫌がる猫をなだめながら洗ってあげた。
知り合いの動物病院に、その子猫を診て貰うために、子猫を籠に入れて連れて行った。
ワクチンの接種や、猫エイズの検査を受けさせた。
子猫の名前は、その鳴き声のまま、「みぃ」と名付けた。
私はみぃを完全室内飼いにすることにした。
みぃは最初は私を怖がっていたが、餌をあげるとすぐに私に懐いた。私が台所に立って、料理をしていたら、足元にまとわりついて、危ないくらいだった。みぃは子猫だからなのか、好奇心旺盛で、彼女が遊ぶ姿を眺めるのに飽きることは無かった。一人暮らしに飽きて来た頃にみぃが我が家に来てくれたのは幸いだった。
みぃは私のことを母親と思っているようだった。私の指を吸ったり、また着ている服を両手で揉み揉みして、吸ってみたりという行動をしていた。
寝る時には、私が掛け布団をめくってあげると、みぃは布団の中に潜り込んでは出て、また潜り込んでは出てを繰り返して、を繰り返してやっと布団の中に入って寝ていた。やはり揉み揉みしながら。
朝はみぃの鳴き声で五時には起こされていた。お腹が減ったとしきりに訴えていた。私がみぃの離乳食やミルクを準備している時には、この世の終わりのように鳴いていた。みぃは満足すると、毛繕いをしてからまた寝ていた。子猫はよく眠るのだな、と思った。私も一緒に二度寝していた。
私は一日をほとんど家で生活をしていた。買い物すら億劫に感じる性質だった。仕事場も自宅であった。そんな生活にみぃは弾みをつけてくれる存在だった。
ミィは甘えん坊で、構ってあげないとすぐに拗ねていた。
ある時、彼氏が我が家を珍しくやって来た。みぃはフワーっと彼氏を威嚇して、シャーシャー言って、ついには震えていた。私はびっくりしてしまった。慌てて彼氏には事情も言わずに追い返してしまった。
「ごめんね、怖かったね」と、みぃを宥めるのに必死だった。
みぃは私が相手をするようになるのを知ると、ちゃっかりとしていて、喉をゴロゴロと鳴らし、態度を豹変させて可愛かった。
彼氏に、猫を飼うようにしたの、と改めて話をしたのだか、私は少し気まずい思いをした。なんだか浮気を責められている気分を覚えた。
彼氏からはますます家から出なくなるのでは無いか、と遠回しに言われたけれど、私は苦言を受け流した。
彼氏とは以前からも上手くいっていなかったので、これっきりになるのかな、と感じていた。
母がみぃを飼うようになってから、初めて我が家に来た。「あら〜可愛いわねぇ、お名前は何ですか」と、母はみぃに話し掛けて、その姿を見て私は母が猫が好きなのだと初めて知った。母はみぃと遊ぶのを目的に、頻繁に我が家に来るようになった。
父は母からみぃの存在を聞いて、みぃを自分に何とか懐かせようとした。両親揃ってみぃにメロメロになっていた。
ぼんやりとしている私が子猫を育てられるのか、心配もあったのかも知れない。両親は我が家によく来るようになって、我が家はさらに賑やかになった。
みぃが、両親と私の仲を取り持ってくれていた。
ゆっくり連載します。
よろしくお願いいたします。