『第1話』
初めまして、時音と言います。
小説を書くのが初めてで、拙い作品かもしれませんが、よろしくお願いします。
『第1話』
高校に通い始めて初めての夏休みが終わり、久々の登校風景。僕、篠宮春明は軽くテンションをあげながら学校に向かった。
久しぶりだからといって、道に迷うことなく学校に到着して、自分のクラスに向かう。そして、教室につくといつも通り先生へ罠を設置している友人の姿があった。
「なに休み明けしょっぱなから、先生のストレスになるようなことしてんだ。」
そう問いかけると、
「お、やっときたか。久しぶりだな。」
何の変哲もない返答が返ってきた。
こいつは谷城秋弥。常にテンションが高く、先生すら手を焼かすほどのいたずら好きなやつなのだが、僕にとっては数少ない親友ともいえる友人なのだ。背は、僕より少し高いくらいで身長の低い身としては、少しの差でも羨ましい。
今、秋弥は先生へのトラップとして、古典的な黒板消しを使ったものを設置しようとしている。それも、チョークの粉をたっぷりつけたやつをだ。
「また怒られても知らないよ。」
「そんときはその時考えればいいさ。」
この時、ちゃんと秋弥の行動を止めておけばと、この後、後悔することになるとは、今は知るよしもなかった...。
とりとめもない話をしてから自分の席について、趣味で始めたタロットカードを取り出して、タロット占いの準備始めていたときに、
「お久しぶり。今日も占ってもらえるかな?」
そう声をかけてきたのは、クラスメイトの女子で夏休み前から、相談してきていた浅間夏鈴。ショートカットで、元気が取り柄のような女の子だ。いつもは彼女の親友の早風冬菜も一緒のはずなんだが、今はいないようだ。
「いいよ。いつも通り、今後の運勢でいい?」
「うん。」
友達を占うことは、久々だったので緊張しながら準備をしていると、
「あら、もう始めていたのね。」
と、いきなり横から声をかけられた。
驚いて振り向いて見ると、特徴的な腰まである長い黒髪をした女子が立っていた。彼女が、夏鈴の親友の早風冬菜である。
「ごめんね、驚かせて。」
優しい物腰で、いきなり話しかけたことに対する詫びを言ってきたので、返そうとすると、
「遅いよ、冬菜ちゃん」
夏鈴がさえぎってきた。
「軽く例の彼をボコしてきたから遅れたの。夏鈴のためを思って行動したのに、遅いってわがまま過ぎない?」
「う...。ごめんなさい。」
軽い文句に対しても、正論で潰すのが彼女の特技だとか。
そうこう話していると、
「いやぁー、面白そうなことしてるな。」
トラップを設置し終えた秋弥が戻ってきた。
「あら、もう仕掛けてきたの?
「先生のあたふたする顔が楽しみだね。」
めちゃくちゃいい笑顔でこちらにサムズアップしてくる秋弥。
「久しぶりにこの笑顔を見たわ。」
「お、早風じゃん。久しぶり。」
「ええ、久しぶりね。相変わらずいたずらが好きね。こっちも巻き込まれるならまだしも、見ているのは楽しいから許容の範囲内でどんどんやってちょうだい。」
「お、珍しく早風が推奨してる。」
「私を巻き込まない、っていう条件があるけどね。」
秋弥と冬菜が楽しく話している中、タロット占いの準備ができたので、夏鈴を占ってみると、
【大アルカナ つるされた男】 正位置
意味:試練、報われる、忍耐
「ねえ、これってどういうこと?」
夏鈴が、結果を聞いてきたのだが、
「試練や、忍耐って意味だったはず。でも、この場合は・・・」
ガラっ、ボフっ
「なんでこんなに粉のついた黒板消しが落ちてくるんだ!?」
どうやら、秋弥の仕掛けた黒板消しトラップに先生以外の人が引っ掛かったようだ。誰が引っ掛かったのかは、やはりいつものうるさい奴だった。彼は川野真樹。自己中、ナルシストとクラスの嫌われ者だ。そして、何でもかんでもご都合解釈で何かと自慢話をしてくる。
「おい、谷城!お前だろ。いつもいつも俺に罠を仕掛けて楽しいのかッ!」
やはりうるさい。こいつに対しては、秋弥をはじめ、多くのクラスメイトがうんざりしてる。
「あのさ、うるさいんだけど。こっちは先生に対して仕掛けてたトラップに勝手に引っかかったバカのせいで、仕掛け直しになったんだけど、謝る気ないの?」
「なんでこの俺が謝らないといけないんだ。そっちが仕掛けていたのが悪いんだろ!」
秋弥と川野の関係は、まさに水と油だ。いつも、何かあるたびに川野は秋弥に絡んでくるのだ。
そして、
「ん?夏鈴じゃん。お久しぶり。俺に会えなくて寂しくなかった?今日の授業が終わったら、どっか遊びに行かない?」
「何回も言ってるけど、付きまとわないで!!」
「あはは、照れないでもいいんだよ。ほら、今日の授業後に遊びに行こうじゃないか。」
そう、川野は夏鈴に惚れているのだ。それも、ストーカーレベルで。
「これ以上そのいやらしい口を開くなら、あんたの今後の生活の場所が病室になるわよ?」
いつも通り、川野への威圧が入る。冬菜は川野のことを生理的に嫌っていると、周りの友達には漏らしていた。
「ったく、めんどくせぇ。もう一回仕掛けてくるか。」
「めんどくさいなら、仕掛けるのをやめたらいいんじゃない?」
僕がそう言うと、
「仕掛けることは楽しいし、引っかかる奴の顔を見るのも好きだから、やめるわけないじゃん。ただ、あいつのせいで仕掛け直すのが面倒だってことだよ。」
そう言って、秋弥はもう一度先生への罠を仕掛けにドアの前まで向かっていった。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴ったことが引き金になったのかわからないけれど、突如として下から光を当てられたかのように、輝きだした。
「「「「えっ!?」」」」
「「な、なにが起こってるんだ!?」」
「おいおいおい、何だよこれ。」
やはり、一人だけ騒がしい。
次第にクラスメイト全員の足元に大きな魔方陣が浮かび上がってきた。しかし、よく見ると僕の足元には別の小さな魔方陣があった。
みんなが慌てふためく中、教室の扉のほうに人の気配を感じた。
「センセー、早く入ってきて!」
誰かの悲鳴じみた声が聞こえたのか、扉が開かれたのだが、どこかの誰かが仕掛けた黒板消しが先生の頭に直撃した。
そして、チョークの粉がたっぷり付いていたからか、先生の顔の前まで粉の壁ができて、教室の中を見ることができなくなっていた。
(秋弥ー、なにやっちゃんってんだ!!)
クラスメイトの心の声が見事にそろった。
当の本人は、思いっきり顔が引きつっていたのは見ないことにしておく。
そろったタイミングでそのとき教室にいた30人の生徒は、姿を消した。