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目を閉じる、目を閉じる。
やってしまった、とは思わなかった。
後悔なんてしなかった。
まだ上手くまわらない頭で事が終わった光景を見回したとき、俺はイラつくほどになにも感じず、なにも思わなかった。
いや、無意識になにも感じないように、なにも思わないようにしていたのかもしれない。
この凄惨な光景を日常と固定づけることによって、全てを無かったことにしようとしていたのかもしれない。
まぁ、今となっては至極どうでもいいことなんだけれど。
そう、どうでもいいのだ、なにもかもが終わってしまった今となっては。
鼻の奥がつんとする。
あぁ嫌だ、今は涙を流したくなどない。
出てくるな、出てくるな、でてくるな、デテクルナ。
だって最期の顔が泣き顔だなんて、そんなの俺が笑いながら描いていた人生設計とは違う。
いや、こんな展開になっていた時点で人生設計なんて無いに等しかったのか。
早く、早く俺をこの身体から離してくれ。
次に目を開けたとき一番最初に飛び込んできたのは、それはそれは綺麗な、先ほど見た鮮血より鮮やかでいて深い、真っ赤な一匹の蝶だった。