表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
漆黒の魔女と見習い戦士  作者: かたつむり2号
1/2

神話への回帰

――くそ、俺は強いんだ。こんな奴らに負けるはずない。


「ははっ、こいつ大きい口叩くくせにまじよえーよな。」

体格のいいリーダー格の少年が辺りを見回しながら言った。

周りにいた少年たちも合わせるように笑っていた。


―黙れ。本気だせば、お前なんか。

笑っている少年たちを睨み付ける。



「ん?こいつ泣きながら睨んでるぜ。皆、もうちょっとやっちまうか!」

そういいながら倒れている少年の腹を蹴る。

周りも同調し、少年に暴行を繰り返す。


栗色の髪が土で汚れ、良くみれば端正な顔も今や泥まみれとなっており、見る影もない。

―っお前らなんか……

もはや顔を上げる力をなくし、うつ伏せのまま心の中でつぶやく。


反応があまりなくなったのを見て、飽きたのかリーダーが暴行をやめる。

それをみた周りも離れていく。

「つまんねー、もういいや。」

「汚れたし、戻ろーぜ」


――見てろ。俺は絶対強くなって、親父や兄貴のように…お前ら全員ぶったおしてやる。

痛みで体が動かない中で、生まれてから何度目か分からない決意をする。


「というか、ルーイ。あいつがよえーのはわかってたろ。時間の無駄じゃね」

ルーイと呼ばれたリーダーの少年が不思議な顔して考える。

「……しらね。なんだかあいつの目を見てると腹立ってくるんだよな。」

「あーそれ。俺も分かる気がする」

「あ、お前も?」

「あいつが守護戦士につくことはありえねーな」

笑いながら少年たちは川へ向かっていく。


夕暮れの村外れ。

青い葉が時折風に揺れる木立の中、いつものように繰り返された喧嘩。

栗色の髪の少年は自分を痛めつけたルーイ達といつも変わらず負ける不甲斐ない自分自身を恨んだ。


だが、どこかで諦めに似た感情が芽生えていることにも気付いていた。

―俺はもう強くなんてなれないんじゃないか。兄貴や親父のようには……。

―俺は一生、負け続けていくのか


「俺は……」

言葉に出すことは怖くてできなかった。

しかし確実に思いはそのうつ伏せに倒れたままで汚れた体と心を占めていた。



「あなたはウルザ?」

突然声がした。気配はなかった。

けれど近くから聴こえる声。頭に直接響くようだった。


「……そう、なのね」


こちらの答えを待たず、結論付けた。

意味はよく分からなかったが、声の主を確認しようと顔を上げようとする。

―しかし、痛みで顔が上がらない。


「……痛そうね。ごめんなさい。私、治癒魔法は使えないの」

少し申し訳なさそうに答える。


徐々に少年の瞼が下がってくる。

痛みと疲労で意識が薄れていく。


「今はおやすみなさい。時が来たらまたあなたを尋ねましょう。」

「私は古き契約に従う魔法使い。」

「大いなるウルザを従い、目的を果たします。」

夢か現か、微睡む意識の中で心地よい声が響く。


変えられない現実を嘆く少年エリオ。齢15歳。

――彼の現実と運命が動き出す3年前の出来事。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ