8/8
青い海、白い砂浜、燃える太陽の下、俺は国境近くの南に移り住むようになってから初となる戦いに挑もうとしている。
ヤツは水中を自由自在にすばしっこく動き回る。ヤツの名は魚。
唸れ!俺の釣り竿(流木)!
とばかりに、ドリャアアァと投げた釣り竿(流木)が勢いよく後ろにすっぽ抜けて、アニキに当たりそうになった。アニキ、チョー怒った。すまぬ。
アニキは南の別荘…いや、家から学府に通う(徒歩15分)俺に初めてできたご学友だ。季節外れの編入生で完全アウェイな中、コミュ力の高い俺はすぐ皆と打ち解けた…嘘です。ボッチでした。
なんかスゴイのな学府って。宮殿で培ったノウハウまるで通じないの。独自ルールコワイ。
凹んだわ~めっちゃ凹んだわ~…もう勉強だけするガリ勉君になっちょうもんねーとグレかけた時に、捕まえたのがアニキだ。いや、ホントに捕まえたの。
砂浜の蟹を捕まえようと網を振り回してたら、同じく蟹を捕まえようとしていたアニキの頭がポスンと網の中に入った。
とったどー!
ってやってたら大笑いされた。そっから仲良し。ソウルメイトだと思う。
最近ではアニキのお陰でご学友達と話す機会も多い。その中で俺は“金持ちで鼻持ちならないいけ好かないヤツ”から“頭のいいバカ”にシフトチェンジしつつある…言い出したヤツ、一歩前に出ろ。
アニキも俺をバカだって言うけど、アニキもなかなかのバカだ。でも俺の知らないこといっぱい知ってるから、アニキって呼ばせてもらってる。今日は学府の帰りにアニキをはじめ、ご学友達に魚釣りを教えてもらっているのだ。俺は落ち着きがないから魚釣りで特訓すんだって。騒ぐと魚って逃げるの知ってた?水の中にいるのになんでわかるの?スゴイ。
結局、魚は釣れなかった。俺が騒いだせいだって言うけど、ウミガメ来たんだよ?そりゃ興奮するだろ、ウミガメだよ?一緒に泳ぎたい。イルカでも可。その前に泳ぎ教えろください。今度の休みに入り江で泳ぎを教えてもらう約束して皆とバイバイした。帰ったらポール爺に寄り道ダメって怒られた。翌日、先生に魚釣りした全員でトイレ掃除をするよう命じられた。魚釣りがダメなんじゃなくて、海に子供達だけで行くのは危ないから必ず大人と一緒に行きなさいって。あと寄り道もダメで、一度家に帰ってから何処に遊びに行くのか家人に伝えてから行きなさいって。ダメなこと二つもしちゃったんだねって言ったら皆目を逸らした…知ってたなっお前ら!
アニキやご学友達と話すようになって、びっくりすることが沢山ある。一番びっくりしたのが、俺の“当たり前”とアニキやご学友達の“当たり前”が全然違うってこと。
アニキは俺を「金持ちの子」だって言うけど、俺に言わせれば「金持ち」はご主人だけで俺は一文なしだ。
俺はアニキが「物知り」だと思ってるけど、アニキに言わせれば俺が「物知らず」だ。
他にも沢山の違いがあって、それが俺とアニキだけが違うんじゃなくて、ご学友達とも“当たり前”が全然違ってた。そしてアニキとご学友達それぞれが違う“当たり前”を持っている。カルチャーショック受けてたら、ご主人に皆違うのが“当たり前”なんだって言われた。だから当然ご主人の“当たり前”と俺の“当たり前”も違う。
目から鱗が落ちるってこの事な。
今までご主人って簡単な事を難しく考える性分なんだと思ってた。そうじゃなかった。ご主人って俺と考えてる事が違うんだ…いや、知ってたよ。まるっきり同じこと考えてるとか思った事ないよ。なんて言うか…根本が違う?基準が違う?例をあげると「俺が南の別荘に行くのは当然じゃない」っていうのは俺的には「俺は南の別荘に行っちゃいけない」なんだけど、ご主人的には「俺が南の別荘に行かない選択肢もある」ってことなんだ。
ここにきてやっと、ご主人が折に触れ俺に言い聞かせて来た数々の言葉の意味がわかってきた。
ご主人は、俺に色んな選択肢を与えてくれてた。色んな世界を見せようとしてくれてた。全部俺のためで、俺のことを考えてくれてたんだと思ったら胸の真ん中がギュッてなった。
そこで俺は考えた。
今までのこと、これからのこと。すっっっっごい考えた。考え過ぎて熱出した。また、小もこちゃん達がワッショイワッショイ踊ってる夢見た。きゃわわ。
考えた末「セナ」という名前を貰った時から始まった俺の世界に、ご主人がいるのは当たり前で、俺がどんなに世界を知っても、俺がどんなにカッコよくなっても、チョー優秀で金持ちでウハウハになっても、ご主人と一緒にいたい気持ちだけは絶対に変わらないっていう結論に達した。
また俺は考えた。
俺はどうしたいのか、どうすればいいのか。すっっっっごい考えた。考え過ぎて熱上がった。小もこちゃん達が踊り狂ってる夢見た。ごめんもこちゃん、ちょっとコワイ
けどどう考えても、ご主人と一緒にいたい以外の結論には至らなかった。だからご主人と一緒にいる為にはどうすればいいのかを考えた。考えたけどどうしたらいいのかわからない。きっとそれは俺が「物知らず」だからだ。ってことで、熱が下がって1週間ぶりに学府に行った日に「物知り」のアニキに訊いてみた。
「結婚すればいいんじゃね?(原文ママ)」
解決した。流石アニキ。頼りになる。
ってことでご主人!俺と結婚してください!
息急き切って学府から帰って開口一番言い放った俺を見て、ご主人は深い深いため息を吐いた。
……失礼な。ちゃんと給料3か月分の指輪用意しますよ。すっかり忘れてたけど今までの俺の給料払えください。学費と相殺?じゃあ仕方ない。その代わり今日からご主人は俺の嫁です。ハル様も俺の嫁ですけど、ご主人も二人目の俺の嫁です。いいですね!(ドヤァ)
「だが断る」
断った…だと?ってかそれ俺が言いたい台詞ナンバーワンのヤツ!
ぷんすか怒ったらご主人は俺の交渉方法のダメ出しをしてきた。まず最初に無理ぽな要求をしてから、まぁそれならいいかレベルまで要求内容を下げる。この交渉の基本がなってないと…プロポーズも交渉なんですね。人生の岐路をなんだと思ってんですか。でもわかりました。嫁の要望を叶えるのが男の甲斐性です。巧い交渉ができたら結婚してくださいね!
「だが断る」
二度も言った!今のはわかってて言ったでしょ!
悪人顏で笑うご主人はやっぱり性格が悪い。
男同士が結婚できないと俺が知ったのは、ずっと後の話。
俺がご主人の養子になるのは、もっとずっと後の話。
そんな未来をもこちゃんは知っているのか知らないのか、今や定位置になった出窓に座ってヤシの実で作った変な人形と青い空を眩しそうに見てた。
これにて本編終了です。お読みいただきありがとうございました!
あと番外編というか、蛇足というか、舞台裏的な小話をいくつか書く予定です。よろしければもう少しお付き合いいただけると幸いです。
また、ブックマーク登録ありがとうございます!ホントに励みになります。




