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ある小間使いの独白  作者: 七転び
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3/8

俺にとって降って湧いたような養子の話は、ハル様にとって以前から考えていた話らしい。しかも何度かご主人と話合いもしていたらしい…初耳だ。それにちょっと待ったをかけたのはパツキンだ。学府(寄宿舎のある国立の最高学府な)に出した方がいいと、立ち消えた筈の話を蒸し返して来た。俺の身の振り方はご主人が決めますから結構ですと言ってみたものの、喧々諤々(けんけんがくがく)と言い合っている二人は聞いちゃいねぇ。俺を背中に隠したクレアちゃんが3段特殊警棒をカッシャンカッシャン鳴らしながら、そんな二人を射殺さんばかりに睨んでいる。暫く会わなかったクレアちゃんはやたら攻撃的な性格になっていた…何があった?

クレアちゃん的には、新しく用意した南の国境近くの別荘に俺とご主人が移り住むのが当然の決定事項なのに、何勝手な事抜かしてんだって事らしい。南?別荘?ナニソレ?って訊いたらクレアちゃん驚いてた。

よくよく聞いてみたら、不測の事態にはポール爺が金目の物を一切合切持ち出して、リョウ兄も他のお屋敷の皆も一足先にその新しい別荘へ移り、生活基盤を整える手筈だったんだって。クレアちゃんは王都に残ってジークンドーの基本的な訓練を終えてから合流する筈だったんだって…ちょっと待って。不測の事態とか手筈とか、俺聞いてないとか、そんな事よりクレアちゃん!何目指してるのっ!?

ちょっとうちの子になんて事させるのって、ポール爺に詰め寄ろうと思ったら目が合った瞬間にテヘペロされた。もっかい殴られればいいと思うよ。


相変わらずハル様とパツキンは二人で話してるし、二人を睨んだままクレアちゃんはまた窓割るんじゃないかって感じだし、ポール爺はお茶飲んで寛いでるし…こ、これは探検のチャーンス。コソコソとテラスから続く部屋の中へ移動したら、ご主人がパツキン家の家令っぽいレディにヘタレ男と一緒に手当受けてた。探検してる場合じゃねぇ。慌ててご主人に駆け寄って頬っぺに当ててる氷嚢を持つ。ちべたい。

右手の白い包帯が痛々しい。もこちゃんの中に救急セットが入ってたらもっと早く手当できたな…入れとこ。ヘタレ男の足首の包帯は大袈裟だ。唾つけときゃ治ると思う。

ご主人が俺の頭をガシリと掴みヘタレ男に謝りなさいと言ったので、ヘタレ男がご主人に謝ったら謝ると返した。強引に頭を下げさせようとするのを、首に力を入れて頭が下がらないよう頑張った。だって先にご主人ぶん殴ったのはヘタレ男だ。俺が先に謝るのは違う。怒られたって絶対先に謝らない。これは男同士のプライドをかけた戦いなのだ!

ヘタレ男がご主人に謝った…根性なしめ!

まぁ俺も男だ。謝る時はちゃんと謝る。飛び蹴りと靴ぶつけてごめんなさい。そして覚えておくがいい、ご主人に害なす者はすべからく敵とみなすべしと。仲直りの印に飴ちゃんあげようとしたらなかった…飴ちゃん屋さん失格だ。本気でごめんなさい。しょんぼりした俺を励ますように肩を叩いたヘタレ男は、養子の件は真剣に考えてくれと言った。俺が考えるの?え?なんで?

俺がちょっとわかりませんって頭傾げたらご主人が「お前はどうしたい?」と訊いて来た。ますますわかりませんって頭傾げたら、養子になりたかったら養子になればいいし、学府に行きたかったら学府に行けばいいと…全く以てわかりませんって身体ごと頭傾げたら、ご主人に身体引っ張られて真っ直ぐに立たされた。あ、氷嚢落としちゃった。拾おうとしたら肩に手を置かれて正面向かされた。

真面目な話だと。

南の国境近くの別荘に住むのが当然じゃないの?クレアちゃん言ってたよって言ったら当然じゃないって言われた。そっか、当然じゃないのか。

じゃあ養子になった方がいいの?って言ったらお前が決めろと言われた。

学府に行った方がいいの?って言ったらお前が決めろと言われた。

なんでご主人が決めてくれないの?って言ったらすっごい難しい顔された。いやいやいやご主人、簡単な事ですよ。ご主人がハル様の養子になれと言うならなる。ご主人が学府に行けと言うなら行く。俺の身の振り方はご主人が決めるんですよって言ったら、今度はヘタレ男が何か言ってきた。俺のやりたい事とかなりたいものとか、そんなんだった気がするけど、そんな事よりご主人が苦しそうな顔してる方が心配だ。

考えてみればご主人、一睡もしてない。眠いのかも…探検の大義名分が見つかったぞ。俺が今やらねばならぬのはふっかふかの布団の発見だ!ふっかふか加減は俺が責任もって確認しますから安心してください!

部屋を飛び出し、すぐにふっかふかの布団を発見したまでは良かった。ふっかふか加減を確認中に寝てもうた。

俺も一睡もしてなかったのを忘れてた。

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