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ご主人はえらい人だ。
なんでえらいのか聞いた時ご主人は「親のコネ」と、わかりやすく教えてくれた。
逼迫していた国の財政の立て直しを画策したご主人の祖父が一代で爵位までのし上がり、それを引き継ぎ抜本的改革を強行した父親は夭折、若くして三代目のご主人が家督を継いだ…と国史の前国主年間に載っててびびった。
「国史なんざ都合のいい事しか載せねぇよ」
と、ご主人は心底どーでもいいような口調で言った。
ご主人の仕事は忙しい。
実際どんな仕事をしているのかと聞いたら「金勘定」と、これまたわかりやすく教えてくれた。
財政の立て直しを謳ったご主人の祖父は半ば嫌がらせに近い形で財務大臣になった。祖父の意思を継いだご主人の父親は謎の死を遂げた。その志とともにご主人は爵位、及び大臣職も世襲…とポール爺が教えてくれた。
「全ては終わった事です」
と、遠くを見るような眼差しをしてた。
ちょっと…いや、かなりしんみりした。
「爺様は自分の商売と副業の金貸しに邪魔になる商取引の条例廃止の為、随分とエゲツナイ事をしていたらしい。爺様を取り込もうとした貴族院から爵位を授与されたんだが、打診された時に“タダなら貰ってやる”とか言って本当にタダで貰いやがった。で、貴族院の思惑なんざどこ吹く風、勝手気ままにテメェの財産を増やす事だけをしてた。権力を持っちゃいけねぇヤツに権力持たしたってろくな事がねぇって典型だな。ま、唯一の救いが国をどうこうしようとか、王族への関心が一切なかった。色々とヤバくなってきた時、親父に面倒事全部ひっ被せようとしたら親父が死んだ。謎の死?まぁ謎だな。お袋が生きてた時から女を取っ替え引っ替えして、何処の女に刺されたかわかんねぇんだからな。俺にとっちゃとんだとばっちりだ。爵位の世襲にも金かかるって知ってるか?払ってねぇけど」
と、ご主人は国史に載せれない都合の悪い全て終わった事実を教えてくれた。
俺のしんみりを返せ。