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連れて来られたのは離宮でした。
壊れ物を扱うかのような丁寧な手つきでエスコートされながらくぐった門の紋章見てビビった。
王・家・の・紋・章!
殿下だった…変態は殿下だった。王位継承順位第五位のビミョーな位置の殿下だった。
変…殿下は物心がつく頃には自分の立ち位置がビミョーなのは判っていたらしく、欲望渦巻く王位を巡る長年の状況下、騙し騙され男も女も誰も信用できねぇ〜!って、あれ?穢れてないのって子供じゃね?(要約)とプッツンした後天性の変態だった。
細かい部分に目を瞑れば俺は変…殿下のお眼鏡に適ったらしい。合格点じゃないけど及第点。ストライクゾーンじゃなかったけど疑惑の判定でストライク…なにその妥協してやってる感。ムカつきたくないのに地味にムカつく。
そんな俺が行方不明と聞いて密かに心を痛めていたところ、夜中にたまたま通りかかった路地で俺が男に襲われていた。ご主人の件で何かしらの事件に巻き込まれたに違いない!これは助けてポイント稼がねば!なノリだったそうだ。“夜中”に“たまたま”とか…いかがわしい匂いしかしない。
超豪華な部屋で優雅に足を組む変…殿下。
銀フレームの眼鏡がお似合いな変…殿下。
ジットリ見てたんじゃなく、ただ視力が悪かっただけの変…もう変態殿下でいいや。
無理矢理は好まない。愛し愛された関係になりたい。主に俺と、期間限定で。ぶっちゃけ変態殿下が飽きるまで。手取り足取り腰取り色んな事を仕込みたいと。何をってナニを。言わせんな。
なかなか下種な事を言いながらも、浮かべる微笑みには王族の品がある。変態殿下は意外と紳士でした…って、いやいやいやいやいやいや。
妥協して頂かなくて結構です。御期待には添えません。植物がいいよ。与えた愛情を返してくれるって聞くし。花が咲く植物を育てたらいいと思うよ。うん。助けて(?)いただいてありがとうございました。俺は行くとこがあるのでこれにて失礼いたします。
「3代ジェスタ子爵、ティモシー・ブルク」
ご主人の名前を聞き、とんずらかまそうと思った俺はピタリと動きを止めた。
「彼、難しい状況にあるらしいね。だが、私にとって彼の状況はそう難しいものではないのだよ。いや、誓って私は一切関与してないよ。してはないが…これからいくらでも関わる事ができるんだよ。誤解を恐れずに言えば、私は“笠に着る”立場にある(原文ママ)」
凛とした声音は服従を当然とする絶対者の響き。
眇めた目は獲物を見つけた捕食者のそれ。
危ない変態は別の意味で危ない変態だった。




