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まさかハル様に飛び蹴りはできないので、丁重に放してくれるようお願いしたら丁重にお断りされた。嘘泣きしてもにっこりと微笑まれただけだった。強い、流石俺の嫁。膝の上でどうしたもんかとうごうごする俺に、拘置所に行ってもご主人に会えないという衝撃の事実をヘタレ男が教えてくれた。
ヘタレ男も思うところがあったらしく、事情を聞こうと拘置所に行ったらご主人は面会謝絶になっていて、差し入れも禁止されていて、誰が行っても門前払いされているとの事だ。じゃあなんで拘置所のご主人の様子が判るのかと思うだろ?ヘタレ男の同期が拘置所で泣かされたその看守で、誼みで話を聞き出してくれたそうな。たまに役に立つなヘタレ男。情報料として飴ちゃんをあげよう。何!?いらないだとっ!ヘタレ男のくせに生意気な。
明日、別方面からご主人の状況を詳しく探るからハル様の家で大人しく待ってろと…それ言外に俺を足手まといって言ってるよね?ハル様の前だからってエエカッコしぃしやがって。あ、ハル様もちょっとときめいてる?ときめいちゃってるの?グヌヌ…まぁ情報は大事だ、ご主人も言ってた。渋々な体で頷いてやった。
なもんで、今夜はハル様ん家にお泊まり。初お泊まり!って、喜んでる場合じゃない。ベッドが一つしかないのでハル様に一緒に寝ようと言われた。いや困る。ヘタレ男がブーブー文句言った。俺もブーブー文句言ったらハル様がしょげた。でもごめんなさい、一緒に寝たらホントに困る。
ヘタレ男は言葉を濁してたけど、ご主人の下に仕えていた俺にはわかる。ご主人の失脚を狙うだけの事態ならいい。良くないけどいい。けれど軍部が動いているとなると話は単純ではない恐れがある。ご主人の命の危険も視野に入れとかないと。
明日の情報を待って手遅れになったら死ぬ程困る。ってか死ぬ。
それに、足手まといと侮られた俺が颯爽とご主人を救い出す…ときめかない筈がない。ときめけ者共!うはっはっはっはっはっ!
夜中、もこちゃん背負ってハル様の家を抜け出した。
ソッコーでヘタレ男に捕まった。読まれてた!
また小脇に抱えられた。荷物扱いすんじゃないっ!身動きとれないなりに必死に手足をバタバタさせてたところに、四頭立ての黒い馬車が突っ込んで来た。馬車から伸びた手に首根っこ引っ掴まれてそのまま拉致られた。どいつもこいつも俺を荷物扱いして!荷物扱いするならご主人んトコに届けやがれっ!そして俺捕まり過ぎぃ!
結果から言おう。変態に捕まった。危ない方の変態にだ。
俺オワタ。




