曖昧な記憶ー5ー
ぼんやりとした視界に赤く揺れるものがあった。
パチッと何かが弾ける音がして、その度に赤い何かが激しく揺れていた。
「…王子?」
声につられてそちらを見ると女がこちらを見ていた。一度目を閉じ、また開くとそれがディテだと分かる。
「ああ…、俺は寝過ごしたのか…?」
「ううん。あの2人はまだ寝てる」
ディテが見た先に、寄り添って寝ているモーガンとべの姿があった。
「まだ休んでても大丈夫よ」
「いや、いい。…バルクは?」
「薪を取りに行ってるわ。そろそろ戻ってくるはずよ」
「そうか…」
ウィルは寝袋を片付けると、一度辺りを見回し、改めて今自分の居る場所を確認した。
「これから…どうするんだ?」
「次は西にある研究所に向かう予定よ。この地下道はその近くまで続いているの」
「歩いていくのか?」
「まさか!ここから20分くらい歩いたところに列車が停めてあるの。それを使って私たちはここに来たのよ」
「そうか」
ウィルは火の側に座っているディテの横に座った。
「もしかして…寝てないのか?」
灰の量から、絶えず火を焚き続けているのが見て分かった。
「ああ…まぁ…ね」
何となくきまりが悪そうな態度をとるディテをウィルは妙だと思った。
ウィルが下を向いた時、ディテの足元に銃が置いてあるのが見えた。
「ん?これ?護身用にね」
それに気づいてディテは銃をウィルに見せる。
「少し借りる」
ウィルはディテの言葉を待たず銃をディテから奪い、ディテに銃口を向けた。
「え…?王子、何を…」
「お前、何者だ?」