曖昧な記憶ー4ー
しばらくして、モーガンのイビキとベルガンの寝言が聞こえてくると、ディテとバルクは音を立てないように静かに立ち、どこかに歩いていった。ウィルは閉じていた目を開き、2人の後ろ姿を見て、また目を閉じた。
100mほど離れた場所でディテたちは密かに話していた。
「悪い。研究室を探したが薬を見つけられなかった…」
「バルクのせいじゃない。謝らないで」
「ああ…」
「今ある薬はあと一週間分ってことろね…。それまでに次の研究所まで着かなきゃ」
「そう…だな…」
「大丈夫、心配ないわ」
「だけど…」
「元気出してよ。らしくないわよ」
「う、うるせー」
「それに、バルクには感謝してる」
「何だよ、急に」
「研究所のどこに王子が居るのか分かってなかったのに、バルクがすぐに見つけてくれたでしょ?」
「そ、そんなの、たまたまだよ」
「それでも、ありがとう。助かったよ」
「お、おう」
バルクは照れくさそうに笑った。
緋蘭の研究所では、1人の研究員がパソコンで、とあるデータを見ていた。
そこに1人の兵士がやってきた。
「所長、さきほど羅白の研究所が何者かに爆破されたそうです」
「そうか」
「驚かないんですか?」
「いずれそうなることは予想していた」
「研究所は全て海に沈んだ為、あの男は死亡したと思われます」
「いいや、彼は生きてる」
「はい?」
「彼はいずれ此処に来ることになるだろう」
(………会えるのが楽しみだよ、ウィル…)
「研究所のことが王宮にも伝わってしまい…、王が大変ご立腹の様子でしたけど…」
「放っておけ」
「しかし、このままでは…」
「……はぁ。機嫌を損なって金をケチられても困るか…。近いうち私が王宮へ出向こう。そう伝えておけ」
「はい!失礼しまします」