曖昧な記憶ー2ー
「そもそも…この戦争は、貴方達王族の力を妬む4大国王の企てが元凶なの」
「どういうことだ」
「悪魔の力を欲した王たちは、研究所を建てる為に国民から税金を集め、多額の資金を費やした。国民の生活は苦しくなり暴動を起こすと、王たちは『喃堺が理不尽な条約を結んできて、この国を支配しようとしている』と言いだした」
「馬鹿な…」
「お前、王子のくせに知らなかったのかよ」
「俺は政治に口を出せる立場じゃない。それに…」
「あ?」
「何でもない。続けてくれ」
「…国民は税金を納めることで精一杯になり、疲れ、冷静な判断が出来なくなってたんだと思う。国民の怒りは喃堺の王に向けられた。
それを知った喃堺の王は、戦わずに降伏を宣言した。一般人との戦いを避けるためにね。王は正しい判断をしたと思うわ。誰一人傷つくことなく、平和的に解決するはず…だった。でも国民の怒りは収まらず、そして国王は…」
モーガンは俯く。家族が殺された時のことをウィルと重ねていた。
「その後、4大国間で争いが起きた。南の大国、舞島が喃堺を独占したせいよ。と言っても他の大国の王も同じことを考えていたんだと思うけど。大国同士の争いが始まり、羅白はすでに降伏し、残る3大国でまだ争いは続いている。
ただ、舞島はこの羅白を含め全ての研究所を独占することに成功した。今日みたいに悪魔を使う兵士もすでに存在してる。このままだとこの大陸は舞島に支配されるかもしれない」
「そんなことになっていたのか…」
「私たちは今日みたいに悪魔と戦いを強いられることになるかもしれない…。だからこそ、貴方の力が必要だと思ってるの」
「だが、俺たちは悪魔のことやあんたの能力をあんまり分かっていない」
「大陸を支配出来るだけの力ってのは本当にあんのか?」
ウィルは空になったマグカップを地面に置いた。
「そうだな…。助けてもらった礼に、俺が話せることは全て話そう…」