エギュンー9ー
「ここよ」
壊された研究室のドアの向こうには醜い姿をした悪魔たちが鎖で首や手足を繋がれていた。
「なんだ、これは……」
悪魔に近づくと、生きているのか、死んでいるのかさえ分からないほど静かだった。
「それは見ての通り、悪魔ですよ」
聞きなれない声の方を向くと、研究員と兵士2人が立っていた。
「誰だ!?」
「と言っても、出来損ないですけど」
爆弾の設置を終わらせたモーガンとバルクは銃を向ける。
「これはこれは物騒な。兵士になりすまし侵入して、研究所を破壊とは…大したものです」
「質問に答えろ」
「これは失礼。この研究所の所長をしているヒロセと申します」
「…何の用だ!?」
「騒ぎを聞きつけてやってきたんですよ。まぁ、ネズミ退治、とでも言いますかな」
「ネズミ退治だと…?兵士をたった2人連れて、ずいぶん余裕そうだな?」
バルクは銃口をヒロセに向けたまま、ヒロセの前まで近づく。しかし、それでもヒロセは微動だにしない。
「おい、お前!アルは…妹はどこに居る!?」
ウィルはヒロセに近づき胸倉を掴んだ。
「妹?あー、誰かと思えば君は…例の一族の。牢から脱走したって聞いてましたが、まさかこんなところに居たんですねぇ」
「話を逸らすな!妹の悪魔を利用しているのは本当なのか…?」
「どうしてそれを?……まぁ、バレちゃ仕方がないですねぇ。あの小娘は最高ですよ!叶うならこの研究所に連れてきて、もっと全身隈無く調べ尽くしたいものだ」
「ちっ、下品なやつだ。だが、どんなに喋ってもこちらの有利には変わりねぇぜ?とっとと避難でもしたらどうだ?まぁ、生かす気はないがな」
「それはこちらのセリフですよ。…いい機会です、この際見せてあげましょう。私たちの研究の成果を」
「オーガ」
「トロール」
黙っていた兵士たちが叫ぶと、目の前に2体の悪魔が現れた。
「お、おいおい、嘘だろ…」
この展開を4人は想定していた。だが悪魔がここまで恐ろしいものだとは思っていなかった。
足が竦み、立っているが精一杯で、逃げることすら出来ないほどの、圧倒的な殺意を感じた。
「この国に伝わる伝説の悪魔です。知ってますか?人を食らう悪魔を」
「僕、怖いよ…」
ベルガンはモーガンの後ろに顔を隠す。
悪魔たちは雄叫びを上げ、ウィルを睨んでいた。