〈弐〉1 赤紙と招待状
夢ニ溺レヨ。
偽リニ身ヲ浸セ。
過ギ去リシハ、淡キ想ヒ出ノ―――。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
―――初めまして。私は『管理者』、=====といいます。
貴方は×××××ですね。『視通す者』、私と同じ能力の持ち主。
今日は折り入ってお願いしたいことがあって来ました。少し、時間を頂けますか?
本来なら、私と貴方は出逢ってはいけないんですけれどね。でも、貴方の最近の行動には目に余るものがあったので。
帰れ? まだ来て五分と経っていないじゃないですか。もうしばらくお話をしましょう。お互い、同一である存在は他にいないのですから。
ウザイ、ト思ッタ。
―――こんにちは。…そんな、邪険に扱わなくても良いじゃないですか。私が来るのが迷惑ですか? ……即答されると流石に傷つきます。
不毛などではありませんよ。貴方には運命を変えうる能力があります。私にも運命を操る能力があります。けれど、その能力は不安定なんです。貴方だって、
あら、今日はお友達もいるんですね。…天邪鬼さんですか。初め………、
×××××さんは凄いですね。私はあの人のテンションにはついていけないです。気疲れします…。
目障リ、ダッタ。
―――世界を管理する、と言っても、そう大それたことはしていません。元の道筋と現在進行の道筋が違ったら、それを補正する。それだけです。
ある程度の差異は問題にならないですよ。未来はあくまで不特定多数に別れていますから、そのどれかを進んでも構いません。ですが、
特に未来を知る、或いは視ることの可能な存在には細心の注意を、
…すみません。口が過ぎました。貴方は理解している。した上で、そうしているんですものね。忘れて下さい。
余計ナコトバカリスル、女ダッタ。
―――学校の帰りですか? 私もご一緒させて下さい。
テストの点数は満点ですか。問題を読んで、答えを視て、答案用紙に書き込む………カンニングペーパーいらずっていうのは便利ですけど、視通す能力をそういう風に使うのは…。
ご存知の通り、私は学校に通っていないんですよ。私の母国は宗教間の紛争が酷かったので、学校なんて……。
×××××さんの通う学校に、私も通うのはどうでしょう? クラスも同じになるように根回しして………冗談です。そんな、本気で嫌がらないで下さい。
ナニガ、愉シイ?
―――こんばんわ。何をしているのですか? …それでは、お月見でもしませんか? ×××××さんはゆとりを持った方が良いと思います。
フフ、最近は此処に入り浸っているせいで、皆が怒るんですよ。容認してくれる人もいるんですけれど、他は心配し過ぎでノイローゼになりかけてて。
確かに夜半、女子が男子の元へ訪れるのは不純ですけれど、×××××さんはそんな悪いことしませんよね? ………しませんよ、ね。
月が綺麗ですね。あらゆる界を繋ぐ星門、その輝きが紅く揺らめく刻、二つは一つになる…。
詩的に言ったつもりはないです。笑い過ぎですよ。…そんなに可笑しかったですか?
それでは、おいとまします。お茶をありがとうございました。
また、逢いましょう。私達は、同じく『視通す者』なのですから。
何故、マタ逢ウ。
逢ウ必要ハ、無イ。
オ前ハ、俺ニトッテ。
俺ニ、トッテ。
―――どうしたんですか、×××××さん。機嫌悪そうですけど…。
何を………キャゥッ!? ×××××さ……止めてくだ……。
わた、しの態度が、気に入らない、んですね。全てを視っていて…知らない、振りをする、のが……。
視って、いまし…たよ。今日、この時間に逢いにくれば、こうなる、という………ことを。ですが、
不毛、などでは、ありません。そうしなければ、界……ひず…………ぅ。
わ………たし……は、あな…に、視……………、
×××…×さ、ん………………。
呼ブナ。
呼ブナ。
ソノ名ヲ、
呼バナイデ、
―――おはようございます、憑物さん。
理解は………やはりしてくれませんか。まあ、視通した通りの結果ですね。
良いんです。それでも貴方は、私と同じ道を歩んでくれるのですから。多くを望めば、バチが当たります。
×××………いえ、憑物さん。もう一度、約束してくれませんか?
ええ、これ以降、私は憑物さんの前に姿を現しませんから。最後の別れとして…。
別レ。
別離。
別々。
…死別。
―――誓って下さい。道しるべから外れぬよう、刻の流れに逆らわぬよう、
無限にも広がるあらゆる世界を、その全てを、
いつまでも、いかなるときでも、私と共に視守るように。
現世の限りを、視届けますように。
視届ケル。
オ前ト、
俺ノ、
二人、デ。
ソレガ、約束。
ワタシト、キミトノ、
―――友愛の契りを、結ばんことを。
親愛ノ約束ヲ、守ランコトヲ―――。