歪んだ記憶
これが、あの八年前の出来事。あの後、懸命の捜索が行われたが、現在まで二人の姿は見つかっていない。私は警察や先生から、色々と話を聞かれて、事細かに何があったか答えた。そして、こっくりさんは私の学校では禁止になった。放課後の校舎に、生徒が立ち入ることも禁止された。
三人のうち、私だけが戻ってこれた。今の今まで、そのおぞましい記憶を、すっかり奥深くに眠らせて、思い出すことはしなかった。
小学六年とは言え、こんな出来事に巻き込まれて、正常でいられるはずがない。だから、忘れようとすることしかできなかった。
あの二人は、今もどこかにいるのだろうか。それとも――。
「絵美、どうかしたの?」
俯いて黙ったままの私を気遣った佑奈が、顔を覗き込む。
「なんでもない。ちょっと思い出しちゃっただけ」
「そっか……。あ、私、ちょっとトイレ行ってくるね」
気まずい空気にいてもたってもいられなくなったのか、佑奈はバッグを持って、逃げるように会場を出た。
……ちょっと待って。
何かがおかしい。
私たち三人は、怖くなって帰ろうとしていた。それなのにどうして、ランドセルが教室から見つかったのだろう。
それに、逃げている私たちは、ランドセルを持っていただろうか。その記憶は、なぜか曖昧で不確かだった。八年前のことだから、はっきりと覚えていなくても無理もないかもしれない。しかし、他の八年前の記憶と比べれば、かなり鮮明に覚えている。
それなのに、なぜかランドセルを持っていたかどうかを覚えていない。
それだけじゃない。私は確かに三人で逃げたと思っていた。でも、私は教室から出て、発見されるまで間、他の二人とは一切会話していない。
それに、どうして私は、窓に鍵がかかっていたことを知っていたのだろう。そして、知っていたのなら何故、それを菜々美に教えなかったのだろう。
考えてみれば、おかしいことだらけだ。
おかしなことはもう一つある。
雷光の中に現れた、あの亡霊の姿。あれはまさしく、その時私のしていた恰好そのまんまではなかったか。
白いワンピース。長い黒髪。
気のせいじゃない。確かに、私は当時その姿でいた。
最後に見た亡霊の顔。あれは、鏡に映った私の顔ではなかったか。
頭痛。心の中で、何かが壊れていく音がした。
違う。真相は、こんな事じゃない。
……雨……ずぶ濡れの私……血……スコップで土を掘る音……。
頭痛は激しくなった。割れるような痛みに、顔を顰めた。断片的な記憶が、次から次へと湧き出てくる。
何があったのか、思い出したい。しかし、思い出してはいけない。私の脳は、本能的に拒否していた。
しかし目を閉じて、強引に再び八年前に戻る。
あの時、そう……あの時、私たちは、こっくりさんなんかやっていない。
あれは、私の作り上げた、空想の記憶だ。
パンドラの匣が、今再び開いた。




