知世と優弥
知世は優弥に怒っていた。
(デリカシーがない)
(私、バカって言われてるみたいじゃない)
美優が公立高校の入試を白紙で出したことの告白を聞き、それが、知世と一緒の学校に行きたいからだという理由だったと優弥は言った。
優弥は、高校に入ってから、たまに知世の家にやってきて、連れ出しては、美優の学校の様子を知世から聞き出した。
優弥に怒っているのだから、用事があると言って、邪険にすればいいのに、一時期惚れた弱みなのか、知世の人の好さなのか、聞かれるがまま、自分が知っている範囲で優弥に教えた。
たまたま二人がブランコに座って話している姿を見かけた、元同級生から冷かされたことが何度かあったが、知世は優弥は優弥のデリカシーのない発言以来、どうでもいい存在の気持ちもあったので、言い返しもしなかった。
かえって、優弥のほうが、ごめんごめんと知世に謝っていた。
(あやまるくらいなら、私を呼び出さなければいいのに)
知世にとって、中学校では憧れの存在だった優弥も今では、ただの友達のような、それがたまたま異性だったというような扱いだった。
「おまえ、中学校のころは、俺に話しかけるときは、なんか恥ずかしそうに話してたのに、今じゃ、ためぐちだし、口悪いし、えらく変わったよな」
優弥がぼやいた。
「あんたさ、おまえって言い方、私にやめてくれない?美優のお兄様だから気をつかっていただけです」
そのころから、知世も応酬するようになったのだった。