入学式
「馬子にも衣装だな」
と仕事を休めなくて入学式に出席できない父に言われ、知世はむっとした。
「華菜もお姉ちゃんと一緒の学校に行く!!」
と鼻息荒く妹の華菜は言った。妹も制服に惚れたようだ。
昨日の優弥の余計なひと言で、気持ち重く知世は母と入学式に臨んだ。
美優にも会うことだろう。どんな顔をすればいいのだろう。
嫌味のひと言でも言ってやりたいような・・・
クラスでひときわ目立つ、大人びた端正な美しさの美優がいた。こともあろうか、同じクラスだった。8クラスもあるのに。
「同じクラスだったね」
無視してるのも悪いような気がして、知世は美優に話しかけた。
美しい美優がほほをピンクに染めてにこりと知世に笑いかけた。
(もう何も言うまい、いや言えない)
美優の笑顔に知世は心を決めた。
帰り、母は母同士で、知世は美優と成り行きで一緒に帰った。
部活は何にするかとか、シスターに外国人の先生がいたとか学校の話をしながら帰っていた。
昨日の苦々しい思い出は置いといて、ふと気になったので、知世は言った。特に優弥に執着しているわけでもなく、他愛もない世間話程度だと思っていた。
「木島君は入学式いつだったの?」
「優弥、昨日だったよ」
ちょっと不機嫌そうに美優が答えた。
ちょっととげがある美優の仕草にもやっとしながら、翌日から一緒に学校に行く約束をした。