ラベンダーの香り
青春や友情ってキラキラして素敵なもの。失敗しても、ぶつかっても、またやり直せるよ。そんな前向きな気持ちを登場人物たちに託して書いたつもりです。まだまだ表現力はありませんが、読んでいただけたら嬉しいです。
「このにおい、なんだっけ・・・?柔軟剤じゃないよな?」
優弥が言った。
「ここどこだと思ってんのよ」
あきれ顔の知世が言う。
そう、ここは植物園の一角のハーブ園。ミントやローズマリー、ラベンダーが鬱蒼と生えている。
今は植物の生命力がみなぎる5月も後半、新芽がどんどん伸びていく季節。
(あ、木島君はどれが、ミントのにおいかラベンダーのにおいか区別がつかないんだ、男ってそんなもんか)
知世は木島優弥を小ばかにしたことを思った。
知世は私立女子高校3年。ミッション系の学校なので、男とのデートはご法度のはずなのに、中学校の同級生の優弥、公立高校3年とデート?している。
しかし、柔軟剤なんて発想が貧困だ。優弥は、相当男くさくて、おばさんが柔軟剤使いまくりなのだろうかと考えながら、ちょっとローズマリーをちぎってみる。ほんとはいけないことは重々承知で。
「ローズマリーがね、こんな、においよ」
「ローズマリー?なんか柔らかい松みたいな感じだな」
と優弥が間抜けなことを言う。
知世はあきれ顔で、次は、ミントの葉っぱを触るように優弥に促す。
「あー、なんかアイスの上にのってるやつか」
(あんたは食べ物でしかぴんとこないのか)
さらにあきれ顔で思いつつ、ラベンダーのほうに向かう。
優弥がついてきて、ラベンダーを触る。まだ花は咲いていない。咲くのは、来月くらいだろうか。
「これ、美優が好きだった花か・・・」
(あー、そうだった、これは美優の好きな・・・)
しまったと思ったわけではないが、いや、優弥と美優を思い出すために、知世はここに連れてきた。