ホワイトサンタクロース
季節外れに冬のお話を一話
その日、私は確かに見たんです。白いサンタクロースを。
それは忘れもしない、ある日のクリスマス前夜の雪降る日でした。
ホワイトサンタクロース
「はぁ…ついてないなぁ…」
そんな事を呟きながら冷たい凍えるような道端を顔をうつぶせながら
フラフラ歩いていました。
すると、端っこの雪の塊に何やら真っ白いマフラーの一部分が。
なんじゃこりゃ?と思いながらも引っ張ってみたら
ずるずると雪から人の手が、腕が、首が、足がでてくるではありませんか。
普通はびっくりして失神するか救急車や警察を呼ぶのかもしれません。
しかしながら私は好奇心の方が勝ってしまったようで
その人を雪の中から全部引きずり出していました。
その人は、全身暖かそうな真っ白い服装でした。
首には先ほどの白いマフラー、手袋も真っ白
おまけにその人は30代半ばの男性でした。
男は安らかに寝息を立てていて
まるで寒さを感じて無い様で…他からしたら不審者。
でも、その日の私の思考はきっとどうかしてたのでしょう。
まったくそう思わずに、その人を起こそうとしていたのです。
案の定、起きました。周りをきょろきょろ見渡しています。
「あれ…私はたしか…ああ、思い出した。あまりにも雪が気持ちいいから
寝そべって、うたた寝してしまったんだった。」
「うたた寝?!雪の上でですか??正気ですか??」
「起こしてくれてありがとう。クリスマスを寝過ごしてしまうところだった。」
「ええ?ね、寝過ごしちゃう??いやいや、ありえませんよ。
冷たいじゃないですか。凍死しますよあのままだったら。」
それを聞くと彼はとても楽しそうに笑って
「さぁてと。仕事に戻るかぁ」
そう言いながら近くの雪を漁ると、なんと雪の中から
大きな真っ白い袋と輝くサンタクロースみたいなソリがでてきました。
「君も手伝ってよ。じゃなきゃ間に合わない。」
「はい?いやいやいや、ありえな「ほぅら、手を貸して」…え?」
手が勝手に彼の手を掴む。途端に私の中に
衝撃が走り、服装は可愛い真っ白なクリスマスのドレスに早変わり。
冷えていた体は暖かくなり、頭にはクリスマスのサンタさんの帽子が。
なにこれ 何これ ナニコレ?!
その夜、本当に忘れられない素敵な日になりました。
そりは一人で宙に浮き始めてそのまま空を駆けました
袋に敷き詰められたきらきら光るシャボン玉を
そっと出し、下へ落とす仕事でした。
少しするとシャボン玉は割れて、中のキラキラが
家の中へと吸い込まれていく光景は まるで夢のようでした。
「えっ。貴方はホワイトサンタさんなんですか?聖夜と前夜に
暖かくて素敵な夢をプレゼントするのが役目?」
「そうさ。時々ああやって空から落っこちてそのまま寝ちゃうから
全部の家にプレゼントできない時があってね…君が居て助かったよ」
そう言いながら、一つのシャボン玉を取り出して私に持たせました。
「それはお礼だよ。アニエルはとても素敵な女の子だよ。
君を酷く振った男の子などどうかしてる。」
「どうして知って…」
「眼が語ってるよ。さぁ、ついたよ。そのシャボン玉が割れる前に
別途へ入りな。お休み。良い夢を」
その日は勿論、ものすごく良い夢を見られました。
もし、街中や雪に埋もれた真っ白いマフラーが見えたなら
引っ張ってみてください。
少しおっちょこちょいな優しいお兄さんが
大切な時間を寝過ごしているかもしれません。
終わり