麗息
万智は夏が好きだった。
何故かなんて、それは俺にも解らないが。
午後の授業ほどだるいものはなく、更に夏となるとさらに不快感は増していく。
下敷きで顔のあたりを煽ぎながら少し考えた。
『私の誕生のチャンスを、一緒に探してくれないかな?』
万智が昨日言った言葉。
少しばかりファンタジーが過ぎるとは思ったが、俺はその頼みを承諾してしまった。
解決策なんてある筈ないのに。
蘇生活動なんて、軽く承けてしまったら、もしかしたら後で呪われてしまうかもしれない。
成功したら神様から、失敗したら万智(幽霊)からだ。
そんな事を考えながら、俺は今更後悔してしまうのだった。
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「奏汰くーん!!!!」
……げ。
例の屍少女のご登場だった。
万智はこちらに来るみたいだった。
ダッッ!!
俺は逃げた。捕まらないように。
俺は万智の蘇生活動は断るつもりは無かった。しかし一時の現実逃避というか、なんというか。
「えぇ??!奏汰くん酷いよーー!!!!待ってよーーー!!!!!!」
しかし万智は結構足が速かった。
どんどん俺に詰め寄ってくる。
結果、5分後には、この鬼ごっこは終わりを迎えた。
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俺は頭を擡げていた。
万智はまだ怒っていた。
あの後で何故逃げたかと聞かれたので、適当に『お前からうんこ臭がした』と言っただけなのに。ジョークだと解らないなんて万智もまだまだお子様だな、全く。
「って、こんな事話したかったんじゃないの!!!」
ああ、そういや、さっき俺のとこ走ってに来た理由を聞いてなかったな。
そして万智がなぜ俺のところに来ようとしたのか、尋ねた。
「誕生のチャンス、調べたの」
万智は穏やかに言う。
「そしたらね.....」
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連れてこられたそこは古ぼけた神社だった。
「ここには神様がいるんだね?」
俺は頷く。
万智...なんかとっても不安なんだが .....この気持ちはなんだろう......
「って事で、神様にお祈りして誕生のチャンスを貰おう!!」
!??
思わず万智にチョップをかます。
「ちょっと、何するのさ!!」
こいつは具体策があってここに来たのでは
ないのか....?ただ単に神頼みかよ.....
だんだん頭に血が上るのを感じながら万智に怒鳴る。
「だってぇ .....」
半べそをかきながら、万智が言った。
今俺は呆れた顔をしてんだろうな、多分。
こいつの脳には多分脂肪が詰まってるんだろうなと思いながら、こめかみを押さえて深呼吸する。
「あっ....あの.....」
ん?
後ろから女性の声がした。
振り向いて、みる。
その人は巫女服を着て、髪は長く黒く、整った顔立ちの麗しい出で立ちの人であった。
そしてなぜかその人からは、懐かしい――――
香りがした。