終止符
あの時素直に、好きって伝えた返事を彼に聞けばよかったのではないかと後悔が押し寄せる。
彼は実際、あの頃私のことをどう思っていたんだろう。
そもそも彼に、好きだったことはちゃんと伝わっていたのだろうか。
私に対する沢山の優しさは一体なんだったのだろう。
あの時もう一度、彼に好きだと伝えていたら、何か変わっていたのだろうか。
彼の近況は全く知らない。でも、彼が結婚するまで、もしくは彼より素敵な人が現れるまで、きっと諦めがつかないまま、一生囚われて生きていくのを想像したらもう嫌になった。
完全に思い出となった彼との時間を、会わない期間にどんどん美化してしまっていた。
私は無性に彼にあの頃好きだった想いを伝えたくなった。
---久しぶり。元気?---
私は唐突に彼にメッセージを送った。
少し経って、彼から返信が来た。
私の連絡先なんて消されてるんじゃないかと思っていたから、返信が来たことにびっくりした。素直に嬉しく思った。
---元気だよ。---
そっちは元気なんだ。私は貴方のおかげで心穏やかではない日々を送っている。私は次に送る言葉をしっかりと決めていた。
---今更なんだけど、ずっと好きだった。---
伝えてしまった。
でももうこんな関係だから、彼になんと言われようと、どう思われようと怖くなかった。
そんなことはどうでもよかった。
自分の心の整理のために伝えたのだ。
彼に好きだったことを伝えられればそれでよかった。
やっとすっきりした。これで彼から解放される。そう思っていたら、すぐに返信が来た。
---あの時言ってくれればよかったのに。---
彼がそう続けた。
私は様々な感情が押し寄せた。
あの時言ってたら、なんだっていうんだ。
もし私があの時好きだと伝えていたら、どうなっていたのか、私は当時十分に理解していたつもりだった。
彼の本心はわからない。
でもそんなことを言われたら、彼と付き合って、恋人になっていた未来を考えてしまう。
だけど私は確信していた。
あの頃彼は私のことが好きではなかったと思う。
仮に好きだったとしても、私と付き合いたいとは思っていなかったと思う。
そもそも彼女を欲していなかったと思う。
だから私も、彼と付き合うとかそういう概念を考えるのことをやめたのに、彼はまたそうやって私を惑わせる。
悲しさと怒りと後悔で私の頭はいっぱいになった。
私は、彼と過ごした期間を仮にやり直せたとしても、また同じことを繰り返すと思う。
未だにどうしたらよかったのか、全くわからない。
むしろこれが正解だったのかとも思う。
彼は優しいが故に、私のことをいつまでも突き放してくれないし、いつまでも彼のものにしてくれない。
つまりそういうことだ、と思った。
なんだかすっきりと腑に落ちた。
彼はそもそも私と結ばれる運命ではなかったと思えた。
彼はそういう人なのだ。
あの時好きと伝えていたら恋人になれていたのか、気になったけど、怒り任せに聞くことはやめた。
私は彼の連絡先を消した。
心残りはない。彼とは終わったんだ。
幸せの手段を、男にしない方がいいと学んだ。
それでも彼との時間は幸せだった。
さようなら、私の初恋。




