穴
気づけば、私は友達から抜け出せなくなっていた。セフレにならないことが、彼女になる近道なのではないことに、この時やっと気がついた。
今更、彼と体の関係をもつことは到底できなかった。
今更、になってしまった。
時間が経ちすぎてしまった。
そして私は、未だに彼の想いを怖くて聞けないのだ。就職活動で忙しくなると同時に、彼と会う頻度が減っていった。
ーーー就活で忙しくなるから連絡できない。ーーー
彼にメッセージでそう伝えた。
私から彼を突き放した。
別に忙しくても連絡するくらいの余裕はあったけど、日々彼とやりとりするメッセージの話題にも、限界を感じてきていた。彼に捨てられるより、自分から捨てた方が楽だと思った。彼は中途半端で曖昧なこの関係をどう思っているのだろう。
いろいろな疑問は残るけど、好きな人と友達でいるのがもう辛かったのだ。このまま会い続けるのが、苦しかった。
もう、無理するのはやめよう。そう思った。
彼が私を遊びに誘うことはない。
忙しいと伝えたのは私の方だけど、やっぱり私は、彼にとってその程度の人間だったんだと思った。
彼から吹っ切れるために、男遊びが加速した。
彼を忘れるために必死だった。
私は心の底で彼を想いながらも、次に、前に、進まなければと思って、半ば諦めがつかないままいろんな男を浅く知っていった。
満たされているようで満たされない日々が続いた。
無数に男はいると思ったり、誰一人いなくて独りぼっちだと思い知ったり。
心が不安定だった。内心彼を越えてくれる人を探していたんだと思う。
それ以来、出会った男を彼と比べてしまっている自分がいた。どうしようもないな、と思った。
「「あんたさあ、いい加減彫り師のこと忘れなよ。ああいうはっきりしないタイプはあんたのこと絶対幸せにしてくれないよ。」」
カノンは彼のことを彫り師という愛称で呼んでいた。私があまりにしつこく彼に執着していることを小馬鹿にしている。それはそれで、なんだか彼という人間が実在したことを実感できて心地よかった。自分がおかしいことはよくわかっている。
1年経って、男遊びにも飽きていた。ずっと、楽しくなかった。心にぽっかり、穴が開いていた。私の頭の片隅にはいつも彼がいた。
次回、最終回です^_^




