沼
あの日からずっともやもやしている。
両想いになることも、付き合うことも、こんなにも難しいことなんだと知った。
片思いは苦しい。
ついこないだまですごく楽しかったのに、奈落の底に叩き落とされた気分だった。
私は次第に、もう一旦、彼とは友達でもいいやと思い始めていた。
とにかく彼との繋がりをこのまま断ちたくなかった。彼女になりたいけど、ただのセフレには絶対なりたくない。それなら一緒にいて楽しいと思わせて、ゆっくりと友達から彼女に進展できればいいのではないか、と思ったのだ。
それから、私は彼と何度も会う約束をして、色々な時間を共に過ごした。
家でまったり映画を観たり、ボーリングに行ったり、カラオケに行ったり、ショッピングしたり、どんどん彼との思い出を増やした。
彼といる時間は楽しい。
遊ぶ日を提案するのはいつも私からだったけど、会ってない期間も他愛のないメッセージを交換し合っていた。彼は送ったメッセージには必ず24時間以内に返信をくれていた。
1ヶ月に2回くらい会っていたと思う。
2年間くらいそんな期間を過ごした。
この沼から抜け出すことも考えたりして、他の男にも何度か会ったけど、彼を越える人は誰一人としていなかった。
この2年間は、彼の家に行っても、体の関係をもつことは決してなかった。
最初の頃に、私がそういうことはしたくないと言ったら、彼は優しく、「それが目的で会ってる訳じゃないよ」、と言ってくれた。
そこから彼が私を誘ってくることはなかった。
彼はとても優しい人だ。だけどその優しさが時に私を傷つける。なぜ私が彼と体の関係をもちたくないのかは、彼に説明しなかった。
彼女になりたいって言えなかった。
彼が私と過ごしていない時間に、誰とどんな時間を過ごしているかは知る術がなかった。




