タトゥー
彼の家でまぶしい朝を迎えた。
大きいソファで2人で寝た。朝といっても、もう11時を回っている。喉がカラカラだった。
彼のタトゥーをぼっーと眺めた。
彼はまだ寝ている。少し幸せな気持ちになった。
すると彼の家のインターフォンが鳴った。
……え?私は慌てて服を探す。
彼も起きた。
そして第一声、
「「やば、スケボー誘われてたんだった。」」
そう言われて、彼の正式な彼女じゃないのに、彼の家にいることにとてつもない罪悪感を感じた。
彼の友達には会いたくなかった。まだ彼女じゃないから、また昨日みたいに勝手に傷つくかもしれない。
でも扉の外には彼の友達がいて、逃れられないと思った。怖かった。
すると彼が
「「家の鍵開けといていいから、ゆっくり準備してから出ていいよ。俺一旦行くわ。またね。」」
ドアが閉まる音がした。
嘘…行っちゃった。
まだ2回しか会ってないけど、私を家に残して外に行けるんだ。
衝撃を受けるとともに、嬉しく思った。
嬉しい。
私が彼女じゃないから、彼の友達に会ったら勝手に傷つくとか、そんな複雑なことは考えてないんだろうけど。それ以前に、彼がいない時に私を家に置いていいと思えるくらいに、心を開いてくれているのかなって思わせてくれて嬉しかった。
別にいろんな女の子にこういうことしてるのかもしれないけど、私はそんなことどうでもいいほど舞い上がっていた。
早く家に帰ってメイクを落としたくて、そそくさと彼の家を出た。
てか今日の夜バイトじゃん。超だる。
私は大学の近くの居酒屋でバイトをしている。常連さんが多い店で、みんな店長の料理を好んでやって来る。
仲の良い常連さん、といっても30〜50代のおじさんばかりだ。そういう人に適当な笑顔を振りまくのは得意な方だと思う。接客も好きだ。
営業が終わるといつも店長が賄いを作ってくれる。料理を提供するときに覚えて欲しいからと無料で食べさせてくれるのだ。今日は始めて白子の天ぷらを食べたけど、なんだか苦手な味だった。
店長は営業中は長袖のヒートテックのようなものを年中着ている。営業が終わると暑いのかすぐに脱いで、腕にぎっしりと掘られたタトゥーが露わになる。よくよく思えばムキムキだしこんな人が道にいたら普通に怖い。
ってか、店長タトゥー入ってんじゃん。
忙しくてバイトの間は忘れていた彼の顔が思い出される。
「ねーねー店長タトゥーって痛いの?」
「「場所によるかな。お前入れんなよ。就職前に。」」
「べつに入れないし。てか彫り師ってどう思う?」
「「……どう思うって何が?」」
「いや、恋愛対象?として?」
自分が意味不明な質問をしていることに気づく。店長は一瞬ぽかんとした顔で私を見る。
「「彫り師ってだけじゃわかんないだろ。人による。」」
あっさり当然の回答をされてしまった。
店長の顔を見ることができない。
………やばっ終電なくなる。店長にさっと挨拶して全力疾走で駅に向かった。




