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僕のところに突然やってきた守護騎士は黒髪の美少女だった  作者: 渓夏 酔月


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8/21

はじめてのちゅー

「むっちゃん、お願い。今日はくっついていたいの」


 電気を消した薄暗い僕の部屋の入り口に、枕を抱えたパジャマ姿のケイキが立っていた。


 これはいったいどういうシチュエーションなのだろうか。心の準備ができていない!


「別に……いいけど……」


 僕がそう言うと、ケイキは僕のベッドに潜り込んできて左腕にしがみついた。ケイキの胸が僕の腕に当たるっていうか、やわらかい!!!


「わたしね、本当は元の世界から追放されてこっちに来たの」


 ケイキは僕の腕にしがみついたまま、顔を僕の肩に(うず)めてそう言った。


「わたし、もともと戦災孤児だったの。それが剣の腕一本でのし上がって、王国最強の証、聖王国騎士団筆頭までのぼり詰めたの」


「それって、小林商店でおじいさんが言っていたやつ?」


「そう。騎士団筆頭ってすごいのよ。最強の証。騎士の、武人全体の憧れの存在。どんなレストランに行っても何も言わなくても最高級の部屋に通されて、最高級の料理が出てくるの。まあ、あとでお金は払うんだけどね。王国一の武具を扱う店に行っても、普通は通されない部屋で伝説の武具を用意してもらえるの。まあ、これもあとでお金は請求されるけどね」


 それっていいカモにされているんじゃないか!


「そんな誰もが憧れる、子供の頃から夢見ていた地位について、わたしは天狗になっていたのかもしれないわ」


 そう言うとケイキは、僕の腕にさらにギュッとくっついた。


「筆頭になってから、現場以外にも様々なお偉いさんたちの会議にも出るようになったの。でも、その会議で話されることと言ったら、お偉い人達の都合や利益や権力争いばかり。わたし達騎士の命なんて、これっぽっちも大切にされていないって思ったの」


「だからわたし、腹が立っちゃって。それ以来公然と元老院っていう偉い人たちを批判したの。今思えば批判しているだけで何も具体的な改善策を進言していない、ただ自分の怒りをぶつけていただけね。こんな小娘に侮辱されるおじい様方からすれば、たとえ正しいことだと思っても受け入れなれないのも当然よね」


「そしてとうとう国民も傍聴している議会の場で、元老院議長っていう、とても偉いじいさんを怒鳴りつけちゃったの。おまえが国を悪くしている元凶、売国奴だって」


 ケイキはため息をついて僕の目を見て笑った。


「大変なことになったわ。当然よね。元老院議長は国王の信託を受けて就く王国の宰相。その人を罵倒することは即ち国王に対する反逆と同じことよ。通常なら死罪は免れないところを、今までの功績に免じて爵位剝奪、領地・財産没収、筆頭はやめさせられて、ただの一王国騎士の身分にされたわ。そして異世界の魔力持ちの守護、という名目の流刑、追放としてこの世界に転移させられたの」


 さみしそうにケイキが笑った。


「たぶんもうわたしは元の世界に帰ることは出来ないわ。一生をここで終えるの。わたしは転移装置を持っていないから自分から帰ることは出来ないの。とっても頑張って、筆頭までなって、実家も再興したのに何もなくなっちゃった。何もなくなっちゃったわたしに唯一残された使命はむっちゃんを守護すること。もうこれしか残ってない。これしかないのよ」


「でも、昨日むっちゃんが襲われていた時、わたしは呼んでもらえなかった。最後にわたしに残された唯一の役目なのに、必要としてもらえなかった」


「ごめん、あれはただ、君を呼ぶ程じゃないと思ったんだ」


「うんわかってる。むっちゃんはそう思っているだろうとわかってた。でも、周りの生徒に教えられて、校舎の三階からむっちゃんが襲われているのを見たとき思ったの。わたしは必要とされていない、もうわたしに残っていた唯一の役割すらなくなった。わたしは無価値な存在じゃないかって」


 ケイキの目から涙があふれる。


「榊原君の腕を折ったのだって、自分の不安をごまかすため。むっちゃんの言うことも聞かず、自分の不安を、何もなくなってしまうという恐れをごまかすためにやってしまったの。むっちゃんのためでも何でもなかったのよ。すべて自分のためにやったことだったのよ。本当にごめんなさい」


 泣きながら僕の肩に顔を埋めるケイキ。いつも明るく強気な裏には何かあると思ってはいたが、想像以上に大変な過去があったのだ。


「ケイキ、僕は君が必要だよ。君が生きていることが、君が存在しているだけで君の価値は十分過ぎるほどあるよ。君が怒ったり笑ったりはしゃいだりしている姿を見るだけで、僕は嬉しい。君が大好きだ。確かに君にとって使命や役割はとても大切なものだったと思う。でもこれからは、君が生きているだけでとても嬉しい僕のために生きてくれないか。僕に君を守らせてくれ」


 ケイキは顔を上げて僕をまっすぐ見てくれた。


「い、生きているだけでいいの?」


「ああ。君がいるだけで僕にとっては価値ありまくりだよ」


「わたし、なんにもないよ」


「僕には君しかいないよ」


「わたし、守ってくれるなんて言われたの初めて」


 ケイキが微笑む。ああ、かわいいなあ。


「贅沢なんて言わないわ。むっちゃんの運命の人、銀髪の女の子と出会うまででいいから、その時までわたしをそばにおいてね」


 そう言って、ケイキは僕に口づけしてくれた。あ~、ケイキの体温はあったかいな。誰かと一緒に寝るなんて、いつぶりだろう。




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