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僕のところに突然やってきた守護騎士は黒髪の美少女だった  作者: 渓夏 酔月


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聖王国からの使者

 ケイキの大好物であるアジフライを10匹ほど揚げ終わり、先に作っておいた自家製タルタルソースとともにちゃぶ台の上に並べ終わったときだった。ちゃぶ台の隣に青白い光の集合体が突然現れ、その光の奥に何かいる、と思った瞬間ケイキは斬りかかっていた。


 凄まじい金属音とともに、直したばかりの居間のガラスが衝撃で吹き飛んだ。


「いきなり斬りかかってくるとは、正気か貴様!」


 青白い光が霧散すると、淡いアクアマリンブルーの髪と瞳をした美少女が、剣を抜いてケイキの聖剣アルテミスを受け止めていた。


「ケイキ~元気だった~?」


 そのアクアマリンブルーの美少女の隣には、亜麻色の髪を腰まで伸ばした美少女がそう言って笑っていた。


「ラフレシア!」


 ケイキはそう言うと亜麻色の髪の美少女に飛びついて抱き合っていた。


「元気そうでよかったわ~」


「うん、元気よ。ラフレシアは?」


 女の子同士がこんな感じで全身で再会を喜ぶ様子は、男子から見ると本当に羨ましい。


「いきなり斬りかかってくるとは、ケイキ、相変わらずだな」


 アクアマリンブルーの美少女は、そう言って剣を腰の鞘に納めると、やれやれと言ったようにため息をついた。腰まである長い髪が揺れる。ああ、何気ない動作ひとつひとつが気品に溢れている。僕は当然いままで貴族令嬢など見たことはないが、この美少女がきっとそうだ。


「ルーミも元気だった? しょうがないじゃない突然夕食の最中にやって来るんだもん。って、あああああ! アジフライがあああっ!!!」


 ケイキはカーペットの上に飛び散ったアジフライを見て悲鳴を上げた。僕はアジフライを拾い集めてお皿の上に載せる。ルーミと呼ばれたアクアマリンブルーの美少女も、「すまん」と言って拾ってくれる。かなりプライドが高そうなお方かと思ったが、意外といい人そうだ。


「おいひい!」


 ラフレシアはお皿に戻されたアジフライにタルタルソースをつけて食べるとそう言った。


「てめぇラフレシア! それわたしのだ! 勝手に食べるな!」


「いいじゃないのちょっとくらい。相変わらず食べ物に関しては意地汚いのね」


「うるさい! それはむっちゃんがわたしのために作ってくれたんだ! 食うな~!」


「大丈夫だよ。まだアジはあるから今から揚げるよ。二人とも落ち着いて」


「「本当に!?」」



◇ ◇ ◇



 何か、すごい光景だ。うちの居間のちゃぶ台の前に三人のどえらい美少女が座ってアジフライを食べている。やって来た美少女二人は、ケイキと同じ聖騎士団に所属する長年の戦友らしい。聖騎士団っていうのは美少女ばっかりなのだろうか。


「ふむ。なかなか美味しいな、これは。ケイキの好物のムルミー丼にも匹敵するな」


「でしょう、ルーミ! むっちゃんが揚げるアジフライは最高なのよ!」


 ケイキが勝ち誇ったように言う。ムルミー丼って何だ? 気になる。


「ところで、お前が守護しているという乙浜殿はどちらにいらっしゃるのだ」


「ここ」


 ケイキ、ひとを箸で刺すな!


「ぶっっ。何? 貴様乙浜殿に料理など作らせているのか!?」


 ものすごい美人の貴族のお嬢様が、口からアジフライを噴き出すのをはじめて見た。ちょっと得しちゃった感じ。


「だって、わたしが料理ヘタなことルーミだって知ってるでしょ」


「確かに。って確かにじゃない! 貴様、お前にとって乙浜殿は主であろう」


「そ~だよ、むっちゃんはわたしの大切な主様だよ。いまは恋人でもあるけどね!」


「キャー、お二人はおつき合いしてるんですか!」


 ラフレシアが目を輝かせて聞く。


「二人に紹介するね、わたしの大切なむっちゃん。ラブラブだよ。むっちゃんがどうしてもわたしのことが好きだっていうから、わたしのこと守りたいってきかないからおつき合いすることにしたの」


 確かに守りたいって言ったけど、なんかちょっとニュアンスが違う気が……。


「すごい~! ケイキとつき合ってくれる男性がいるなんて! ケイキやったね~! 大変でしょ乙浜様」


「お……け……わ……、確かに守護するものとされるものが恋人同士になる話はよく聞くが……。ケイキ、貴様は乙浜殿が何者か分かっておつき合いしているのか」


「むっちゃん? 魔力持ち。それとも何かあるのルーミ?」


「まあ、いい。今回我々は国王の勅使としてやって来たのだ。アジフライに舌鼓を打っている場合ではない」


 そう言って、ルーミとラフレシアは立ち上がり、居住まいをただすと書状を広げた。驚いたことにあの食いしん坊のケイキが、食事を中断してルーミの前に片膝をついて(こうべ)を垂れた。


「ケイキ・ハーミア、貴殿は悪魔大将軍二人を討ち取り、我が王国に平和をもたらした。その功績大なるをもって、聖バルト騎士団団長に叙す。ついては王宮まで参上されたし。以上」


 ケイキはゆっくりと頭を上げ、ぽかんとルーミの顔を見た。


「なにそれ?」


「騎士団団長なんてすごいねケイキ! わたしもびっくりしちゃったわ!」


 ラフレシアが両手を合わせて自分のことのように喜んでいる。


「団長ってさ~、代々グロスレス家の当主が就く名誉職じゃない。あたしみたいな現場たたき上げの騎士がなれるものじゃないでしょ」


 ルーミが書状を丸めながら答える。


「確かにそうだ。今のグロスレス家の当主は剣も持てるかどうかわからんおぼっちゃんだ。しかしグロスレス家が代々団長職についている理由は、600年前のグロスレス家当主が当時の魔王を討伐したからだ。その前例からすると、ケイキ、貴様にも団長になる権利はあると判断されたのだろう」


 ケイキはルーミを見たまま何にも言わない。前に僕に話してくれたことからすると、騎士団で栄誉を得られるというのはケイキにとって特別のことのように思えたのだが。


「ということで、王宮まで一緒に来てほしい。一応、形式ばかりの審査があるようだ」


 ルーミはそう言うと、ふたたびちゃぶ台の前に座った。


 ケイキはアジフライに箸をつけようとするルーミをじっと見ながら言った。


「あのさ~、ちょっと聞いていい? その礼服、何でルーミが筆頭になっていないの? 胸の十字架の刺繡が騎士団団員は赤、筆頭は金糸でされているはずよ」




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