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アイダと狐人族

【……マスター…】



「う…仕方ないんだ。これはケモナーとしての血が騒いでしまうだけなんだ」



おれはリンの後ろから後をついて歩く。

するとどうしてもユラユラと揺れる狐色のもふもふ様に目が引き寄せられてしまう。

アートの冷たい声が無かったらやばかったかもしれない。

27の男が見た目16〜17くらいの女の子の尻尾に頬擦りする光景など誰も見たくないだろう。



突然1人で話し出した俺に向かってリンは少し不思議そうな顔をするがあまり気にした様子ではなく森の中を進んでいく。



改めてリンを見ると茶褐色の狐耳と尻尾にそれよりも少し薄い茶褐色の髪の毛を肩あたりまで伸ばしたミディアムヘアーで、まだ若くみずみずしくも少し日焼けをした肌はその活発さを表している様だ。



「アートの声はリンには聞こえていないんだった。危うく1人で会話する変なやつだと思わるところだったぜ。これからはアートと話す時は小声で話さないとな」



【どうせすぐマスターが変なことはバレてしまうのですから気にしなくて大丈夫ですよ】


「俺は普通だ!」と叫びそうになるのをグッと堪えてリンを見失わない様に後をついていく。





1時間くらい歩いただろうかという頃にリンが足を止めて前を指差しながらこちらに何かを伝えようとしてくる。




「おぉ!あれは立派な塀ですな」


【これがリンの住んでいる集落のようですね】



よく見ると木々の奥に太い木でできた塀が広がっており、外敵の侵入を防ぐ重要な防壁である事が伺える。俺の身長の3倍ほどあり、その中には目測15メートルほどの物見櫓が立っておりゴブリンなどはそう簡単に侵入できない堅牢さだ。

おそらくこれがリン目的地で住んでいる村なのだろう。




「;&&;:)¥?..-“(,¥?:!!&@」


リンは走って物見櫓が見える位置へ行くと、大きな声で何か叫び出す。すると物見櫓に居た人物がリンに向かって手を振った後、門番に向かって扉を開ける様に指示した様だ。



やがて門が開くと中からリンと同じく狐耳で槍と盾をもった鎧姿の大柄な男と弓を持った小柄な男が出てきて、リンが2人に駆け寄る。そのうち槍を持つ大柄な男は右目に深い傷を負っており、鎧の隙間から見える古傷からも歴戦の猛者である事が藍にも分かる。



警戒されないためにも俺は少し離れた位置からリンと門番さんを見守っている事しばし、リンがこちらを向いて走ってきたかと思えば、俺の手を取り門の方へと引っ張って行く。後ろからは歴戦の猛者さんがついてきてくれる様だ。



リンに引っ張られるままに門を潜ると中には…






「ケモミミ祭りじゃぁぁあ!!」



突然叫び出し涎を垂らしそうなほど興奮している藍に向かって不審げな表情を向け、あるお母さんは子供の目をあれは見ちゃダメというかの様に覆う者も見られる。



多くの不審げな目線も後ろからついてくる槍を持った大柄な男を見ると安心したかの様に日常へと戻って行く。さすがは歴戦の猛者さんよほど村の者たちから信頼されているのだろう。



【マスター!マスター!正気を取り戻してください!】


「はっ!?

夢の光景すぎてトリップしてしまった。」



【周りを見てください。みんな汚物を見る様な目で見ていますよ】


「流石にそれは言い過ぎだろ…」



そう言いつつも無性に恥ずかしくなり、リンに向かってお辞儀をして謝罪するとリンを先に行く様に手振りで促す。



集落の家はどれも似ているが、木の骨組みと土壁などを利用して作られており、しっかりとした作りになっているようだ。



少し進んだ先でリンが1件の家の前で立ち止まる。この家は他の家よりも2回りほど大きな作りになっているのが分かる。



コンコン

「:(?&&¥;:&&?;;¥」



リンが扉をノックした後に声をかけると、扉が開き中から巫女装束を着た白銀の様な狐耳と尻尾をもつ美女が出てきた。

白銀の毛並みに負けないくらいの透き通る白い肌に腰まで伸びるさらりとした白髪をしており、巫女装束を押し上げる胸は妖艶さを強調させ見ているものを虜にする美しさだ。



「………」


【ヘンタイナヨナヨ引きこもりマスター。鼻の下伸ばしてないで中に入ってください。もうみんな向かっていますよ】


「あ、あぁ…」



衝撃を忘れられないまま家の中に入って行くと、白い狐耳の女性がコップにお茶の様なものを淹れてこちらに出してくれる。



「うまい!」

勧められるがまま口にすると、なんと緑茶の味がした。日本茶と同じ味に実際には数日ぶりであるが、濃密すぎる数日間はまるで数年ぶりかの様な気分を味わいホッとする。



「&,.¥!,)!¥/(&&(&?::&@?,アイダ)&&)::)’k」

「すみません。言葉がわからないんです」



白い狐耳の女性が俺に向かって透き通る声で何か話しているがさっぱりよく分からない。それに、リンから教えられたのか俺のことをアイダと呼んでいるようだ。



【マスター、そこにある本棚がある様なのでその本をスマホのカメラを開きながらパラパラめくって頂けませんか?】



おれは身振り手振りでどうにか本棚の本を見たいことを伝えると、アートの指示通りにカメラを開きながら本を素早くめくる。本棚にある本を10冊ほど同じ作業を繰り返すと…。



【もう大丈夫ですマスター。

こちらの言語を理解しましたので直接ノータイム変換します。これでこちらの言葉を話している人でも日本語と同じ様に聞き取れ、マスターの言葉も自動で変換され伝わる様になります】



「さすがアート!」



「「「!!!」」」


4人は急に理解できる言葉で話し始めた俺に対して非常に驚いている様子だ。



「あ〜聞こえていますか?」



「聞こえるよ!!すごい!」


俺の言葉にいち早く反応したのはリンだった。

ずっと言葉が通じず、身振り手振りでなんとかコミュニケーションをとっていたのに急に話始めれば驚くのも当然である。



「凄いですねアイダさん。でもこれでちゃんとお礼を言えそうで良かったわぁ

孫娘のリンを助けて頂き誠にありがとうございます。」



そう言いこちらに深くお辞儀をするのは白い狐耳の女性である。


「俺からも礼を言う」

歴戦の猛者さんが続いて俺に向かって同じくお辞儀をする。」



「いえいえ、むしろこちらこそリンちゃんに助けられ…て…

え?さっき孫娘って言いました!?

どう考えても妹かあっても娘にしか見えないですよね!?」



「あらあらうふふ〜

そんなこと言ってくれて私も嬉しいわぁ〜

でもリンは歴とした孫娘なんですよ」



「えぇええ!!」


藍にとって異世界に転移したことよりもよっぽど衝撃的な事実だった。


リンと歴戦の猛者さんは慣れているのか苦笑いしているだけでどうやら事実の様だ。



「申し遅れましたわ

私名前はレイですのでレイちゃんとお呼びくださいねぇ〜」



「さ、さすがにレイちゃんは…」



【マスターは女性経験ゼロのチェリーボーイですからね】


思わぬ発言に照れているとアートからヤジが飛んでくる。


「もうおばあちゃん!恥ずかしいからふざけないでよ!」


「あらあらうふふ」



「レイさんもリンもそのくらいにしないとアイダさんが困っておりますぞ。

アイダさん我はブライドと申します。呼びやすい様にお呼びください」



俺は歴戦の猛者さん改めブライドさんが2人の仲介をしてなんとか平常心を取り戻せた。



「リンにレイさんにブライドさんですね」


「レイさん…」

「もう!おばあちゃん?」


揶揄いながらもどこか諦めきれていない様子のレイさんであったが、またもリンに止められ諦めた様だ。



「あ〜私の名前実はアイダではなく藍と言うんです。戸田藍と言います。あ〜もしかするとこちらでは藍戸田になるかもしれませんが。」


「じゃあ藍戸田略してアイダだね!」


【ぷふふ】



せっかく名前を訂正したのに結局リンによってアイダにされてしまい、アートには笑われてしまう。


「そうだったのね。でも、私たちもリンのせいでアイダさんの方がしっくりくるからアイダさんと呼んでもいいかしら?」


「うむ、我も同じく」



「あはは…アイダでもなんでも大丈夫ですよ」


聞こえていないはずなのにまたアートに笑われた気がした。

読んで頂きありがとうございます!


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