第4話.なぜ増えるのか? 誰か教えて!
松永の殿と一緒に、京の都を復旧すべく耐え難きを耐え、忍び難きを忍んできた。
だが、俺の周囲はそんな俺の悩みを他所に、変化し続けている。
あれは二年ほど前になる。
将軍を含む大人数で、うちの寺が襲われた。
「おい、お前ら! ここには何も無いのに、何であいつらが襲って来るんだ?」
「殿、ここには大量の手形やら借金の証文があります。何でも良いから、燃やしたいんですよ!」
くそっ……貧乏くじを引かされたか。
戦は嫌だと思っても、あっちの方からやって来る。
仕方が無い……ここにいる二千の兵で、何とか食い止めよう。
暫くすれば、殿が大軍勢を連れて助けに来てくれる筈……。
「お前ら、書類のある部屋の周りに水で濡らした畳を立てかけろ! とにかく、火矢で燃えるのだけは防ぐんだ!!」
『了解!!』
皆で井戸の水をあちこちに撒いて、燃やされない様にだけ気を付ける。
とにかく時間を稼ごう、幸い正門の閂が破られる事は無いだろう。
ここに居るのは、安井に木造と島だけだ。他の者は外出している。
……やるだけやって、駄目なら逃げれば良い。
そう腹を括って、「てつはう」を持って門の上に登る。
わらわらと寄って来る奴に、見覚えはない。
どうやら、本当に便乗した借金持ちばかりらしい。
……それならば、と手に持つ銭の束をバラして、門の前に撒く。
「それ、銭じゃ。銭じゃ! くれてやるから、拾いに来い!!」
……そう煽っておいて、「てつはう」をぶっ放す。
大きな音に驚いた奴らは、ばらばらと散っていく。
俺は、暫くそうやって少人数相手に時間を稼いでいた……。
一通り寄って来る人を捌くと、遠くに将軍らしき人影が見える。
……きらびやかな格好で錦の御旗を横に置いて、颯爽と馬に乗っている。
よく考えたら、全部あの将軍が悪いんじゃないか!!
そう思った俺は、手癖でつい磨いておいた「てつはう」を構えた。
当てる必要は無い。ちょっと脅かしてやろう……。
そう思っても、仕方のない状況だったと思う。
……後から猛烈に後悔する事になるとは、その時は全く思わなかった。
地面に向けて撃った弾は、跳ね返って錦の御旗に命中した。
……あれ、この場合ってどうなるの?
そう思う前に旗が倒れて、破れてしまった。
大きな音に驚いた馬は、嘶いて暴れる。
バランスを崩した将軍が、馬から落ちた……。
おい、あれでも武家の棟梁かよ!! そう思う前に将軍は逃げ出していた。
少し時を置いて、松永殿とその弟が軍勢を引き連れて、我々を助けてくれた。
まあ、そこまでは良い。
……問題は、その後なのだ。
何故か、俺は嫁を取る事になった。……しかも二人。
いと高きお方の考える事は、よくわからん。ともかく、公家同士の争いで事を治めたいのだと、後々聞く事になった。
どういう訳だか、公家の「九条の方」という女性を娶れ! そう言う事になった。
見た感じは、少し塞ぎがちでしっとりとした印象の同年代の女性だ……すこぶる美人ではある。
ともあれ、俺の正室として迎え入れる事になった。
三好家から言われるがまま、何も立場が変わらないのに、俺は公家になったらしい……。
……どういうことだか、俺の方が教えて欲しい位だ。
そして、もう一人が「伊都」という少女なのだが。
どうも、利休先生が連れてきたのだが、偉い武家の一人娘で戦で親を亡くしたらしい。
是非、側室として面倒を見て欲しい!! と言われれば、断れる筈も無く。
少し間違えれば、年の離れた兄妹の様に見える少女も娶る事になった。
……先生の強引さには困らせられるが、今回は特に問題だった。何かしらの対抗心があったらしい。知らんけど。
正室と側室の仲が悪い、というのは良くある話だと思う。
俺も、そんな話を聞いた覚えはある。
「正室と側室が手を組んで、俺に襲い掛かって子種を強請って来る」という状況は、初めて聞いた。
……つまり、どちらが先に子を授かるかという競争を行っている。
それで仲が良いのはともかく、そう言うのって談合じゃね?
……それから半年。先に身ごもったのは、伊都の方だった。
別に、そっちの趣味がある訳じゃないぞ!
二人同時に襲われて、たまたま片方だけに「当たった」のだ。
流石にその時ばかりは、二人の争いを止める苦労をする羽目になった。
……正室の「九条の方」の怒りと嫉妬のせいで、俺は閨に担ぎ込まれた。物理的にだ。
そんなこんなで、二年が経つ。
俺としては、当分の間はそう言う関係を持ちたくない。
二人とも、それぞれ正室が男を、側室が女を生んでくれた。
……その世話で手一杯なのは、俺にとっては幸せだ。
だが、俺はまだ知らなかった。
第二、第三の側室が俺を狙っている事を……。
どうも、伊都の奴が俺の顛末を数え歌にして、近所の童に教えたらしい。
やれ、身の丈七尺二寸の美男子だの、将軍相手に「てつはう」で追い払っただの。
嘘と真を混ぜ合わせれば、ゴシップ記事のいっちょ上がり、である。
……その噂はあちこちに広がり、とうとう三好家でも話題になった。
そう言う理由で、俺は今のところ街中では顔を隠していないと、女性に追いかけられる立場になってしまった。
何でも「鈴鳴りの美男子がてつはうを抱えて女性を囲っている」だそうだ。
……誰だよ、そんな噂を流したの!!
芥川山城への評定へ行くのも、一苦労である。
……どうして、こうなったんだろうなあ?
気を付けろよ……錦の御旗を見かけたら、決して鉄砲で撃ってはいけない。
嫁が増えるからな……。
だって……そう言うのが作者の好みなので、としか言いようがないwww
嫁は増やすべきだし、一度に相手にしないと可哀想でしょ!!
女性だって人間である。どっちが愛されているか、試したくなるのが人情である。
そう、そうなのだ……けして性癖が歪んでいるとか、ロリコンだとかそう言う話ではないのだ。
戦国時代で嫁を貰うなら、側室は必要。古事記にもそう書いてある。
正室と側室でギスギスしているの、見たくないでしょ!
むしろ、仲良くハーレムしてくれるのが、精神的に良いでしょ。ね……ねっ?
読者の皆さんも好きでしょ? そう言うの……。
ちなみに、これだってオマージュなのである。あっちでは4人はいた。きちんと経緯も同じような感じで。エタったけど……。
オマージュ元:やる夫の戦国立志伝
「http://yaruomatome.blog.2nt.com/?cat=89&page=0#1997」
これ、松永久秀がカッコいいのよ。まあ、シロッコなんだけども。
こっちもオマージュですね:やる太閤立志伝Ⅴ ~うつけの章~
「http://kanketsuyaruo.blog.fc2.com/blog-entry-603.html」
信の字を一文字与え、佐久間信信盛とする!! wwww
オマージュ元その3:やる夫の戦国立志伝 EVOLVE
「http://yaruokei.blog.fc2.com/blog-entry-1787.html」
両川崩れ……ああ、貴重な農筋が。
名は堤の堀に捨ててゆけ。命はこの地に置いて行け。
心は胸の香り紙に閉じておけ。これより、毛利軍を殲滅する。行くぞ。
「八十原の 実の土ぞ すす風に 種を運べや 豊穣の秋」