第3話.三好家の日常
松永殿に、いや殿に直接お会いしてから、一月になる。
もちろん、手土産の茶器に大喜びしていたし、五人揃って陪臣となる事が出来た。
……利休の旦那も何を言ったのやら、物凄い喜び方だ。
「そのぅ、我らは別で店を営んでおりますゆえ、俸禄は不要でござる。こちらから毎月千貫文を、上納させて頂きまする」
「うんうん、良い心掛けじゃな。殿にもお伝えしておこう。儂とは別に、殿に直接上納しても構わんぞ」
そうか、その手があったか! 確かに松永殿だけに渡すと、いらぬ誤解を生みかねん。大殿にも、三千貫文をお渡しする旨をお伝えしてもらった。
うちの商売の規模なら、十分に黒字になる。三好家強化の為にも、欠かさず上納しよう。武器や馬などでもよいかもしれん。
そんなことを考えていると、松永の殿から辞令があった。
俺が侍大将で、残りの四名を足軽として召し抱える、との正式なお達しである。
しばらくの間、京で色々な政務を調べた。
……それにしても酷いものである。
応仁の乱以降、盗人や強盗の類は絶えない。
家を新しく建てようにも、金がない。
……まさに「ないない尽くしの京の町」という言葉が似あう。
何もないところから、色々と直し甲斐があるというものだ。
とにかくこの京の都を立て直して、商業が活発になるよう工夫するのが、当面の課題だ。俺に出来る事を考えておこう。
「戸島よ、月の初めに芥川山城にて評定がある。お主にも出仕してもらうぞ」
「ははっ、殿の仰せのままにっ!」
俺は、深々と頭を下げた。この時点で芥川山城は、傀儡である細川政権の本拠地となっている。持ち主の違いは、気にもされない。
「はっはっは。思うた通り、まっすぐな若武者じゃの。気にせんでええ、儂の事は『松永』で構わん」
「はいっ、松永殿。評定では、どのようなお話があるのでしょうか?」
松永殿は、少し考えた後、呟いた。
「そうさの、陪臣としてお主を紹介する。その後、各方面の状況を殿に説明する。三好家の版図は、四国から近畿に跨る。それだけでも一日かかるじゃろうて」
……思っていた以上に、大きな家だったのか、三好家。
歴史の授業では、崩れ落ちるように崩壊していく三好政権。
どうやら目の前のご老体は、それを望まないように思える。
……俺のやるべき事は、そのような未来を起こさせない事。
このご老人の名誉と命を預かるのだと、心に刻みこんだ。
「しかし、将軍家に畠山氏。西の赤松家もおる。どこもかしこも敵だらけじゃよ。儂らは、自衛出来るだけの兵隊を編成せねばならん」
「はい。その辺りは、島と木造にやらせまする」
剣道場で出会った、あの小僧はまだ子供だというのに元服を済ませ、俺の苗字から一文字取って「島 清興」を名乗った。
寺の小坊主も一緒に元服させてやった。今は「木造 三郎兵衛」を名乗らせてある。
それぞれ、兵の扱いと知略に長けており、二人で一人前といったところだ。
自分は、というと武芸は身に付かなかった。その代わりがこの筒だ。
「九鬼の奴と一緒に交易船で、最新の『てつはう』を手に入れまして。俺はこいつで戦います」
いわゆる「火縄銃」の元祖である。ざっくり石火矢と火縄銃の中間位の性能だが……。
……使いづらいが、連射を考えなければいいだけの事だ。
「ふむ、儂も殿から見せてもらった事があるが……もう作り始めておるのか?」
「ええ、堺の町や雑賀の里ではそろそろ工房が出来るそうです。まだ、ほとんど使われていませんが……」
一発当たりの費用も、馬鹿にはならない。
とはいえ、訓練せずとも使えるし、音で敵を怯ませる事も出来る。
『何とかと鋏は使いよう』、といったところだ。
「……まあええ。暫くは兵の訓練と、銭の勘定をしてもらうぞ。あそこにある紙の山を片付けてもらおうかの……」
それはもう、部屋一杯に詰まった嘆願書に手形、領収書の類……。
ああもう、滅茶苦茶じゃないか!!
……俺と安井で手分けして、書類の整理をこなすのだった。
俺達が京の都で悪戦苦闘している間、店は安井の親父に任せている。
昔取った杵柄という奴だろう。滞りなく、店は開いているらしい。
「おい、皆。俺と松永殿で評定へ行ってくる。二~三日はかかると思って、各自担当の仕事をこなしてくれ」
『はいっ、殿!』という元気の良い返事に見送られて、初めての評定に向かうのだった。
評定の前に、あちこちの責任者から挨拶を受ける。ちょっとばかし、銭を握らせて気持ち良く第一印象を持ってもらおう。
どいつもこいつも、銭だとわかるとコロッと態度を変える。
……ま、人間なんてそんなもんだ。
一方で、大声で励ましの声を受けた人がいた。
「安宅 冬康」殿だ。三好家一門でも第三男の大物だ。
どうやら、那覇行きの交易船の話を聞いたらしい。そういえば、護衛を頼んだ記憶がある。
「はっはっは、良い若武者じゃのう。単身で大海原に赴くとは、良い度胸じゃわい」
……どうやら、素直に褒められているらしい。
ここは、言葉通りに受け取っておこう。
「安宅殿、この度は三好家の末席に入れて頂き、誠に感謝の極み……」
「よかよか、そげな堅苦しい話は無しじゃ。海の男なら、一杯やっていかんか?」
見れば、手元に酒と杯がある。
杯は、平たいところに置けないように、底が三角形になっている。
「安宅殿、もうすぐ評定じゃ。今度、改めて挨拶に参るので、その位に……」
「いえいえ、せっかくですので一杯だけですが……。頂けますか?」
その返事が、よほど気に入ったのだろう。
ゲラゲラ笑いながら、杯に酒を注ぐ。
俺は、気合を入れるつもりで一気に杯を煽った。
ほんのりとしたどぶろくの香りが、口一杯に広がる。
……この人には、後々世話になるだろう。
きちんと挨拶をしておかねば、と俺は心の中で呟いた。
多分、松永久秀が喜んでいるのは、利休先生が「アイツなら平蜘蛛を大量生産してくれるでしょう」とでも言ったのでしょう。知らんけど。
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第三話というのは、物語の中で大きな役割を持っている……。
とりあえず、目新しいものは三話まで見ておこう。読者の人はそう思う事が多い。
いわゆる「3話切り」という奴である。
作者にとっては、止めて欲しい行為であるが……コスパ・タイパなどと言う流行には逆らえない。
ならばどうするか? その物語でのメインテーマをしっかりと伝える必要がある訳だ。
間違っても、主人公に近しいキャラをサクッと殺して、次の回がカレーを作る回になってはいけない(戒め
この物語のテーマが、「カッコいい三好家」を魅せる以上、外せない所である。
一番プロットで悩む部分と言っても良い。
ここで食いついて貰わないと、どんなにいい作品でも離脱される。
前作で、物凄い編集をして第三話で主題が明確になる様にするまで、試行錯誤した結果である。
これが上手く出来ないと、殆どがブラバされる。経験則ではあるが、どんなに長くても三話までは読んでくれる。
そこをしっかりと意識しないと、初期のPVが大きく変わる。
そう言う経験を積むためにも、短編で試してばかりではなく、中編くらいはやっておくべきだ。
作者の経験として言っておこう。もちろん、読者の方にも釘を刺しておく。
テンプレなろうと違い、しっかりとメインテーマを決めてプロットやキャラを考え尽くした結果がこれなのだ。
なので、暖かく見守って下さい。
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それはそれとして。
過去の作品をする機会が少ないというあなた……せっかく目の前にPCがあるのだったら、見るだけでも楽しめますよ!!
おすすめは「ワイルドアームズ2ndイグニッション」まぁ名作中の名作である。
そして、それを確立した「奴ら」が居るのだ……。「世界観の違う二匹」である。
有名だとは思う。だが、元ネタを見た事が無い、やった事が無いという人も多かろう。
随分と昔の話だしね……なので、ちょうどいい動画を用意した。
『ワイルドアームズ2 数年ぶりにプレイ55』
単体 「https://www.nicovideo.jp/watch/sm1904149」←『具体的には、12分40秒頃ッ!!』
まとめ「https://www.nicovideo.jp/user/6354174/mylist/10795907?ref=pc_watch_description」
さあ、皆で叫ぼう「プルコギド~ン!!」
^^) _旦~~←ニッカウヰスキーロックで