第12話.まずは身の回りの整理と嫁対策
……いきなり大名になって、名前は変わるわ、嫁は増えるわで、困惑するばかり。
「うーん、実休殿の娘御は、側室でよろしいので?」
「某は気にせぬし、娘もしがらみを避けたがる故、側室で良かろう」
実休殿は、そう言ってくれるが……まずは人となりを知らねば。
「早速、こちらに呼ぼうかの?」
実休殿が「美味い! よしっ!」と言いながら猪鍋をつつく。
……その度に松永殿が悲鳴を上げる。どういう流れだ、これは。
「……そうでござるなぁ。難しい話を終わらせてから、お顔を拝見したいところですがね」
そうと決まれば、この後の対応を相談しよう。
「まず、儂の家督相続を家臣衆に実休殿と安宅殿から伝えて頂きたい。その後は、各方面に一斉に動きます。時間を掛けると、流れが変わる。その前に片を付けたい」
その言葉に、一同は頷く。「儂」という言葉遣いに慣れないが、仕方が無い。
隆景はと言えば、聞いてはいけない事を聞いてしまったショックで頭を抱えている。ま、そうもなろう。
毛利元就殿は、寝ている……カルタゴがどうの、四号戦車は良いぞだの……訳の分からない寝言を言っている。一気にボケたとの事。隆景がフォローする。まあ、良いけど。
「……隆景、これが政治という奴じゃ。面倒じゃろう?」
俺は、隆景の肩に手を置いて同情した。
「某も色々と覚悟していたつもりでしたが、これ程の大事とは……どこまでお考えに?」
そう聞かれて困る……このような事態までは想定していなかった。
「とりあえず、問題は問題としてきちんと処理をせんとなぁ……考えについちゃあ、こっちが聞きたい位じゃわい」
それはともかく、最優先事項は将軍家の対処と内部家臣の切り崩し。そして、クーデター実行派の処分。
……三好三人衆と義継は、四国で決戦を挑むだろうし、将軍家は京から追い出す必要がある。
室町幕府そのものは、解体させずに置いておく。先程の話が広まれば、将軍家に憐憫の情を持つ者も出て来るだろう。
出来るだけ人死には少なくしたい……。
そう言う俺の想いは、松永殿がくみ取ってくれた。
「殿、なるべく被害を出さぬように致します故、ご心配なく。我々が一丸となって処理致します」
「うむ、有難い……。首謀者は確保後に切腹とし、三条河原に首を晒すとして……主犯は浦上家の『宇喜多 直家」じゃ。切腹を申し付けた上で、臣従させましょう」
俺からの提案に、長慶殿が助言下さった。
「赤松家や波多野家、山名家も同じく臣従させましょう……毛利家と尼子家はそのままでよろしかろう。その役目、儂が果たしましょうぞ」
よしなに、と俺が答える。ここ迄は良し。
「本願寺家からは、証如殿から同盟と朝倉家の打倒を方針として出して貰う。準備が整い次第、大和国と伊勢への侵攻をお願い致す。後は……紀伊の雑賀宗への渡りを」
あの爺、死ぬ前にきっちりとやる事をやって貰わねば……。
嫁を貰って云々の前に、必要な事を決めておく。
「顕如には、本願を伝えず儂が継ぐ……雑賀宗の若いの、孫市をこちらで預かれば、領地と自治権を安堵すると伝えて臣従させる。良いかの?」
「……ひひひ、相分かった。その条件で良ければ、すぐにでも答えが返ってくるじゃろうて」
跡継ぎと優秀な鉄砲使い、一門衆の兵さえ頂ければ文句はない。紀伊の他の豪族を併合して貰っても良いしな。
「儂の部隊で近江一円をかっさらう。恐らく、今川家と武田に付いた斎藤家、それに朝倉家とにらみ合いになる。場所は……恐らく国境の『関ケ原』じゃな」
……何の因果か、あの場所に呪いでもあるのだろうか。
ともかく決戦前までに、敵将の内応……調略を、隆景と一緒に何とかせねば。
概ね、近畿一円の支配と安定化は目途が付きそうだ。
本願寺からは、「下間 頼廉」に「七里 頼周」、「杉浦 玄任」が来れば良し。
追加にウチの武将を軍監に入れれば、部隊として機能する筈だ。
……四国を実休殿、海上を安宅殿と九鬼で支配したとして、他属国含めて十万の兵が動員できる。
臣従させたとして、使い物になるレベルは浦上家に何人か……。六角を取り込んで一人か二人。
部将の数が足りない。いや、正確には使い物になるレベルの武将……織田家基準で、不足しているなぁ。
……無い物ねだりで仕方が無いが、正直三好家の家臣は一段落ちるのだ。
一門衆や松永殿、内藤殿など……この辺りは良いとして。
その他大勢で、何とかするしかないか。
「後は……安宅殿には九鬼と一緒に別の働きをお願いしたい」
「……ほう、なんじゃ? 西洋の航海術か……それとも船の作り方かの?」
……何時も酒を飲んでいるイメージだったから、気が付かなかった。
この人は、この人でチート海賊であったか。
「話が早い……先程のポルトガルの件、黙っている訳にも行かん。こちらから攻撃する為の、遠洋航海術……それに各種の測量器具の入手と船そのものが欲しい」
「……おう、密かに堺で人をやって覚えさせておる。別にあの話をせねば、ポルトガルの衆と交流しても構わんのだろう?」
「……ええ、それで構いません。あと、別の国との伝手が欲しい」
具体的にはイギリスとの同盟が欲しい所だ。
スペイン・ポルトガルとの関係は悪い。敵の敵は味方、とも言う。
幸い、あそこはキリスト教国でも無い。オランダを含め、他の国と連携して海外との交易を考えたいのだ。
「金がいくらあっても、足りなくなり申す……宣教師貿易ではなく、対等な交易相手……そいつが欲しい」
「承知した! どこかに漂流した外国人がいるかも知れん。そこら辺が俺の分担って訳だ」
……一通り、全体に指示を出した。
後は、野となれ山となれ……なるようになるさ、きっと。
俺達は、茶会に戻り嫁と子供達に「証如の娘」が嫁になる事。後、三好家を継ぐ事を説明せねばならん。
正直、こっちの問題の方が、難題じゃな……。
「隆景、雄利。坊主の嫁の事を上手く説明する策はないかのう……」
『ありません!!』と、断られた。そりゃそうか。
キリシタンでベジタリアンの嫁……しかも曰く付きかあ。
彼女の名は、洗礼名が「マリア」和名は「朱蓮尼」だそうだ。
「マリア殿……で宜しいか? うちには、すでに嫁が二人おる。色々と説明せねばならん」
「はい、旦那様。詳しい事はお話しませんが、経緯やそのお覚悟は、説明させて頂きます!」
……そうだなあ、この国に一人だけ秘密を抱えて生きていくんだ。
女って強いなぁ……うちの嫁達は口が堅いし、おおよその話は伝えねばな。
何処まで話せば、納得してくれるのやら……。
「嫁が増えるのも、考え物じゃのう……」
そう呟いた時、有利と隆景が大爆笑した。
そりゃ、普通の武将は、そこまで嫁さんが増えるもんじゃないからな……。
とはいえ、現代人の感覚ではやっていけない事も確かだ。
……三好家を継ぐとなれば、跡継ぎの事も考えねば。
正室の嫡男で良いのか……三好の血筋を重んじるのか。
唯々、身内の考える事は増えるばかりである。
休んでいる暇はないぞ、隆景! 投稿だ、なろう系を蹂躙するぞ!!
毛利元就は、ハンニバル枠。やっぱり毒電波である。またかよ、って言わないで!!
後、実休殿は「鬼滅の煉獄さん」だ。弁当を一心不乱に食べるあの姿が、萌えるのだ!!
正直、ここで関ヶ原で一気に国内統一をするつもりだったが、短すぎる!!
せめて、十万文字……だが、敵がいないし味方になりそうなマイナー武将は、まだ生まれていない。
あと十年内政ターンなんて、ご免被る!! 色々とやりたい事はあるのだ。
んで、中期目標をどうするか?
やはり、ここは『戦国物+大航海時代』という『男のロマン路線』で行こうと思う。
やはり海! 海は良いぞ。
やりたい事は一杯ある。
有名部将は要らないから、キリシタン大名をヨーロッパに送り込む方向で!!
ロマン大事に! 結構、歴史物って天下統一に向かうとダレる。
内政物やら、一大決戦すると消化試合になるのです。
かと言って、強大な敵をちまちま潰して……というのも何か違う。
ここは、目指せ、海のシルクロードという事で海外交易をメインに進める。
石見~上海経由で南方に向かうも良し!
一気にポルトガルのゴアまで交易を進めるのも良し。
前作で足りなかった、大航海路線を突き進みます。
戦国要素は薄くなりますが、ただ時間ばかり進むのも内政ばかりも飽きる。
読者より先に、作者が飽きます。
それでは困るので、『男のロマン』を追求します。
※三章タイトルを「畿内統一編」に変更……ポルトガルへの航海後に日本統一シナリオへプロット修正中。『プロットは壊れるもの!!』
10年以内にヨーロッパへ出発!! グダグダだった史実のアルマダの海戦をバシッと決めてみたい。日本領ネーデルランド、という面白架空戦記にしたい。
ネーデルランド本願寺とか、ゴア大宰府とか……そう言うふしぎ歴史改変。