第10話.茶会の裏で、己の策と企みを巡らす。
ともあれ、皆一息入れたいと思っている。
泥だらけで、変な汗をかいている俺も同じ。
流石に、このまま茶を楽しむのも憚られる。
「皆様も、お風呂に入ってはいかがですかな? ひと汗かいてから茶席と参りましょう」
その様に言う、利休殿の提案は魅力的だ。
……混雑を避ける為、春風を感じて休みながら、交代で風呂に入る。
俺達も、家臣を連れてのんびりと風呂に行く。
殿は、その様子をニコニコと眺めている。殿は古今の作法に詳しく、毅然と座って大茶会を楽しんでいるようだ。
俺は、こういう集まりをしたかった。
三好家の名を売りながら、諸国の動向を掴みつつ民衆の反応を伺う。
それもまた、目的でもあった。
……だが、それは副次的な目的でしかない。
本当の目的、それは三好家での楽しい想い出作りなのだ……。
今の嫡男である義興殿に、十河殿。戦で命を落とす可能性のある実休殿も含めて、三好家が一体となるイベントを催したかった。
「あの時は楽しかった」と、後から笑い合える機会を作りたかったのだ。
将軍様の顛末は予想外だったが、畿内中の人々と三好家が一つの想い出を作り出す。そう言う催し物としては大成功だろう。
現に、松永殿がニコニコしながら、殿や一門衆と話をしている。
逆に三好三人衆は、肩身が狭そうだ。
「ふう、全く肝が冷えたわい。丿貫殿も、無茶をする」
「殿、やはり大名衆は西側のみ……毛利殿や本願寺が来られましたが」
雄利と一緒に、来訪した大名家について話し合う。
「波多野・赤松は併合するからの。浦上家は……」
「お取り潰しになりますか?」
小早川隆景が割り込んで来た。まだ年も若いのに、度胸のある事だ。
「良い機会ぞ、隆景。俺の元に来い……外交というものを教えてやる」
基本的に、うちは国の規模の割に人材が少ない。
人が少ない訳ではなく、派閥争いも激しいし「使える」人材がいない。
ここで、毛利から使える奴を引っ張って来るのも、悪くない。
「父上にお聞きしておきます。私としては、こちらにいる方が喜ばしいですね」
「そうか、毛利では満足に努める相手もおらぬからの」
外交とは、国が小さくては意味がない。
国力が大きいからこそ、様々な手が打てるものなのだ。
そう言う意味では、隆景もこちらで学ぶ方が今後の為になる。
「父上譲りの調略にも、力を貸して貰おう……。東へのけん制も必要じゃて」
やる事は多いが、うちは頭脳担当が少ない。
松永殿では大物過ぎて、かえって目立つ。
出来ない訳ではないが、松永殿には内部の切り崩しをお願いしたいものだ。
四国勢の始末と、将軍様への対応。
……クーデターを企てているのは、間違いないのだ。
どうやって、その証拠を掴むのか。その辺も知恵が欲しい。
まずは、クーデター対処の仲間集めも必要だしなぁ。
一門衆同士で争っていては、属国が動揺する。
「安宅殿や実休殿は、どうなのですかな?」
ずけずけと他国の争いに口を挟む隆景の度胸は、調略向けだろう。
「そこらも含めて、今回の大茶会を開く理由じゃな。腹を割って話したい」
正直、こちら側に付くという確信はあるが、いらぬ詮索をさせて緊張を高める訳にも行くまい。
クーデター側も手詰まりなのだ。
ちょっと刺激を与えただけで、何処まで影響が及ぶか分かったものではない。
ともかく、ここに居る大名連中の反応を見極めなければ。
三好勢のどちらに付くか……日和見する奴は、早目に叩いておく必要がある。
ましてや、東の動向が気になる。
織田家を飲み込んだ今川家が、今の仮想敵国だ。
伊勢を先に取っておかないと、勢いがあちらに付きかねない。
それに呼応する武田家。
斎藤家が武田家に臣従したとの噂もある。
道三がいる限りはその心配は無いが、斎藤義龍との仲が良くない。
……藪をつついて蛇を出すのも危険だ。
朝倉家が加賀の本願寺を滅ぼし、北陸の雄になっている。
万が一、武田家と同盟を組まれると、東日本オールスターで天下分け目の戦いになる事もありうる。
三好家の動き次第で、最悪のパターンもありうるのだ。
……全く、何時になったら落ち着けるのやら。
こっちは、子育てに疲れた妻達の相手も満足に出来ん。
早めに対処を行わないと、三好家以前に俺の家庭がヤバい。
「ふむ。スッキリとした事だし、面倒な話は終わりにして茶をしばきに行くか」
雄利はのぼせ上っているし、隆景が興奮している。
……よっぽど毛利家での身の上が不満だったらしい。
親に相談する前に、飛び出してきそうな勢いである。
「主だった者を連れて、茶室に向かうとするか……聞かれたくない話もある」
隆景には、毛利元就を連れてきて貰おう。
こちらは、利休殿から殿と三好一門を集めて、本願寺に声を掛けるとするか。
「伏見城の茶室にて、内密な話がしたい。お父上には、そうお伝えして欲しい」
隆景は頷いた。
……良く頭の回る奴だ。これだけで、色々と察したらしい。
「雄利。『本願寺 証如』殿が来られておる。利休先生と一緒に、お誘いしてくれ」
「はっ、畏まりました」
……これで良し、と。
俺の、一世一代の賭けが始まる。
この会談で、優位を取らねば三好家は滅びるだろう。
……今までに受けた恩を、返さねばならぬからな。
松永殿経由で、今回の会談についてはお伝えしてある。
残酷な物言いではあるが、反乱分子を泳がすのもここまでだ。
「辛い決断になる……。覚悟をせねば、な」
俺にとっては、断腸の想いであるが誰かがやらねばならぬ事。
手を汚すのは、俺だけで良い。
……大殿や松永殿に、子殺しをさせる訳にはいかん。
俺は、固く決意をするのだった。
主人公は、甲賀衆から暗殺の話を聞いてはいますが、詳細は知りません。
そして、この後の運命も……。
プロットは万全! 壊れたらまた組み直しですが。
※この時は、19話までのプロットを組んでいなかったのですが、凄い伏線になっていました。
脳内プロット、恐ろしい子!
―――――――――――――――――――――――――――――――――
それはともかく……パラドゲーと歴史改変って相性が良いというか、まあ『思想がとにかく変』なんです。
違う、そうじゃない!! とでも言われたいのか、皮肉が効き過ぎるというか……。
ゲームデザイン的には、面白い。CIV系とも光栄系とも違うというか「戦争なんか下らねーぜ!」とか。
ただ、たまに変な展開になる事も多い訳で……マイナーな方で「Victoria」系も産業革命とは? みたいな展開もある。戦争向けのゲームじゃねーから!!
そんな事を言っても、プレイヤーがね……修羅の国の人達だからねぇ。
VictoriaRをゆっくり実況 日本編第17話「https://www.nicovideo.jp/watch/sm24202570」
まとめ 「https://www.nicovideo.jp/user/4869684/mylist/41888606?ref=pc_watch_description」
なんだよ、「アメリカのファシスト化」って! などと言っても仕方が無い。
どっちかってーと、こっちの世界観に近い。
⇒【安価】ヒャッハー世界で日本がこの先生きのこるには【内政】
「https://rss.r401.net/yaruo/categories/13395」
ブリカスの冥福をお祈りいたします。まぁ、創作物で戦争回避は、禁じ手に近い。
必要が無ければ、見せ場の為にも好戦度が高いのに越した事は無い訳だ。
戦争もまた、政治の一部であり人類にとっては、必要な新陳代謝でもある……。
そう言う事にしておきたい。漫画版ナウシカ的に、それはもう人類じゃないと思うし。