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第七話 効果なし

「ティア嬢、昨日ぶりですね」


扉を開けると、王子がたっていた。はっきり言って話す元気もなければ、何かする気力もない。でも、死亡フラグは回避しておかないとだよなぁ。まぁ、この悪役令嬢の死亡フラグ、王子とヒロイン以外にも大量にある気がしてきたけれど。


「殿下、昨日はわが身に宿いし呪のせいで、ゆっくりとお話しできずに申し訳ありません、今日は呪も随分と大人しいようです、いつまた襲い掛かるか私にも分からぬものですが」

「そうですか、残念ながら、呪の力は忌避されているようで、力を使える人や、どんな力があるかあまり情報が無いようなのです」


この作戦、功を成す日がくるのか? 王子は同い年、まだ幼いから純粋にそういうものだとおもっているのかもしれない、成長すれば、きっとただの痛い奴だと分かってくれるだろう、うん、そう信じよう。というか、実際に呪われているから、あながち嘘ではなくなってしまった。あれ、中二病越しなら、呪いのこと言えているような。でもあれこれ言葉を試すには、呪いが発動した時の痛みが辛すぎる、しばらく様子見かなぁ。


「そういえば、今日から、いろいろ勉強が始まると聞きました、ミュリーとはうまくいっていますか?」

「ミュリーは、とても素晴らしいです、丁寧に教えてくださいます。私、ミュリーに感謝しているほどなのですよ」


頭に靄にかかったような感覚に襲われながら、するりと口から言葉が出てくる。


「それはよかった、もし何があれば言ってくださいね」


あぁ、お気楽な言葉と、お気楽な笑顔が辛い。別にこの人は何も悪くない、でも、何も気づかず簡単に言ってくれるような相手に対して、深い闇が溜まるのを感じる。環境が劣悪だとこうも歪んでしまうものなのか、それとも自分がひねくれているのかよくわからない。


「私は、呪と雷の力を受けし者ですよ。殿下のお手を煩わせるようなことはございません」

「お強いのですね」


誰か、突っ込みをプリーズ。あるぇ、腹黒王子、めっちゃ純粋なんだが、なんでゲームはあんなに腹黒だったんだ。


「もちろんでございます、この力をもってすれば、右に出るものなどいません」

「そうですか、それなら、ぜひメファールに出場されてはいかがでしょう?」


メファール、なんか聞いたことあるぞ、なんだったけ、ええと種類がいろいろあったような。


「来月にメファールが開催されます。今回は子供の宝取りの部ですね。社交デビューをしていない子供が、魔法を駆使しながら宝を取りに行くのです。子供たちだけということで、他の子に対しての妨害工作は禁止、危ない仕掛けも少なく比較的安全ですので、女子の参加も認められています。あ、私も出場するのですよ」


なんだろう、こういうイベントは危ないって私の直感が言っている、第一、魔法なんて一個も知らないんだが!!


「わ、私の力は見せびらかすようなものとは違いますの、参加は……」

「してくれますよね? ぜひ、その強い力を一度見せてほしいのです、それに、今回の婚約、反対をしている人も少なくありません、良い成績をおさめればある程度声を抑えることができると思いませんか?」


抑えなくていいです、むしろ今すぐ破棄していただきたい。


「まさか、婚約はお嫌でしたか?」


上目遣いにこちらをじっと見つめてくる、婚約は嫌ですはあまりに不敬が過ぎる、要は拒否権がないぞこれ、RPGだったら、選択肢がはいとイエスのやつだ。


「さ、参加いたします」


この傷で参加とか鬼か! 悪魔か!! あ、返事した瞬間めっちゃ満足そうに笑っている、訂正する、こいつ絶対純粋じゃない、純粋な振りした、鬼畜な腹黒に違いない。


「よかった、楽しみにしていますね」


くそぅ、権力に屈する自分が憎たらしい。少し憂鬱な気分になりながら、お茶を飲んだ。

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