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第四話 諦めと足掻き

裂けるような痛みが背中に走る。


「王子の前であのような発言をするなんて、頭は大丈夫なのかしら」


うん、なんだろう、発言だけでいくと母の方があっているような気がするよ。電波系の頭が大丈夫とは言えないだろう。って、んなこと考えてる場合じゃない、本気で痛い。こんなん人が我慢するような痛みじゃない、思わず身を捩って避けようとしたら、逆鱗に触れてしまったようでますます強くたたかれた。


「あなたが、変な発言をしたせいで、侯爵家の名に傷がついたのよ!!」


ここで電波発言したら、頭のおかしさにひいて叩くのをやめてくれないだろうか、いや、矯正とか言って益々叩きそうな気もする……。


「お、奥様、その王家からの通達が届きました。お嬢様を、婚約者にとのことでございます」


なにゆえっ!? え、この国大丈夫か、いくらなんでも電波少女が王子の婚約者はまずいでしょうが!


「なんですって!?」


その驚きは大いに共感できます。


「少しまずいことになったわね。使用人はこちら側から連れて行くとして、向こうで教育を受ける際に、なにもないようにしないといけないわ」


いきなり腕を掴むと、ナイフを持ち何か文字を刻み始めた。痛みに涙が溢れるが、泣くのが癪で唇をかむ。


「っ!? あぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」


ナイフが離れると、全身に焼けるような痛みがはしり、その場でのたうち回る。


「鞭で叩かれたといってごらんなさい」


しばらくしておさまり、その場に倒れていると急にそう言われた。意図が全く分からない。


「言わないとまた鞭でたたくわよ」

「鞭でたたか……っぅぅぅぅぅぅ!!」


鞭で叩かれるのが嫌で、思わず従うと背中に急激な痛みが走り呻いた、一瞬だけど意識が遠のきそうなほどの激しい痛みに、その場でうずくまる。


「どうやらしっかりと呪いがかかったみたいね、いい? 余計なことを言ってごらんなさい、苦しむことになるわよ」


このくそやろー!! どうやらとんでもない呪いをかけられたっぽい、この手のものって禁術だったりしないわけ!?


「わたしはやることがあるわ。今日は下がりなさい」


何をするか分からないけど、どうやら解放されたっぽい。あちこち痛くて足が震えるけれど、気が変わる前にその場を退散する。


「まさか、呪いまでお掛けになるとは思いませんでした」


ナイフで刻まれたはずの文字はいつの間にか消えている。あれはいったい何だったのだろうか。部屋に戻って他の人の目が無くなった瞬間にメイドは、私の手をひいてベッドに座らせた。


「お嬢様、その呪いは厄介なもので、先ほどのように特定のことを伝えようとすると体に痛みが走り止められるようになっています。無理に強行突破しようとすると最悪痛みでショック死してしまいます。奥様のことですから、家庭環境にかかわることなど、奥様の不利になるようなことについて封じられたのだと思われます」


死ぬような痛みで口封じとか、人生ハードモードすぎないかこの悪役令嬢。


「それは言葉以外でも?」

「手話や、筆談、あるいは他者を介しても無理です。他者を介した場合、お嬢様に痛みは走らないのですが、声が出なくなるのです。例えば私が、お嬢様以外にこの話をしようとすると、その場で私の声が奪われて、そのことについて言葉が出なくなります」

「なんで呪われてない使用人にまで影響あるの、どういうものよそれ」


いや、本当に。どういう仕組みで声が出なくなるのか全く分からない。


「魔法について勉強されると少し理解しやすくなると思われるのですが、この世界にはいろいろな力が張り巡らされており、その力で監視が行われ、呪いが発動するといった感じで、呪いは他者を巻き込むのでございます」


どうやら、逃げ場らしきものがないらしい、非常に困った事態になってしまった。つまり、助けを求める手段を封じ込められたと思った方がいい。


「これ、詰んでないかしら」

「割と詰んでおります、お嬢様」


どういうメイドとお嬢様の会話だよこれ。二人で一緒にため息を吐く。


「お嬢様は、癇癪を起されなくなりましたね」


ふっと思い出したかのように口を開いた。まぁ、唯一の話し相手を敵に回したくはない。と、はっきり口にするのもどうかと思う、なんて返したものか。


「癇癪を起してもどうにもならないんだもの。まぁ、今更遅いでしょうけれど」

「お嬢様、6歳で諦めを身につけないでくださいませ。良いですか、今からお嬢様の世界は広がります、王子様の婚約者であるお嬢様は王宮に出入りし、殿下や王妃様と交流されます、12歳から15歳までは学園に通うことになります。16歳になれば成人し、殿下と無事に結ばれればこの家を出ていくことが可能でございます。状況は厳しいですが、もしかしたら、一人や二人ぐらい、お嬢様を助けれるほどの権力を持った方が異質な環境に気付いて下さるかもしれません」


そういや、自分は侯爵家だったか。このメイドの身分だと母親をどうにもできないということか。


「さっきは、あなたが詰んでいるっていったじゃない」

「言いましたね、でも、やっぱり諦めてほしくはありませんよ」

「助けもしてくれないくせによく言うわ」


少しだけ恨みがましくいってしまう。口では調子のいいことを言って、うまく保身に回っているつもりなのだろうか。


「奥様の前で表立って庇うと、私は遠ざけられてしまいます。恨みがましく思っても無理はありません、ですがどうか、恨みで他の人まで遠ざけてしまわないで。環境はあまりに理不尽です、でも、そんな理不尽なまま、悲しみの中消えてしまわないで下さい。本来は子供を守るのが大人の役目なのです。私にはそれほどの力はないけれど、お嬢様の側にかじりついて、ずっとお見守りしますから。決して一人にさせませんから」


少しだけ、悪いことを言ってしまったかもしれない。身分差はとても厄介なもののようだ。はっきり言って、味方は欲しい、もともとこのメイドは味方につける予定だった。疑って、邪険にしても得はない、となるとどうにか歩み寄らないと。


「言い過ぎたわ。……あなた、名前はなんて言うの?」

「フラメウ・ディーラでございます。フラメウとお呼びくださいませ。さぁ、お嬢様お話はこの程度にしておやすみくださいませ。婚約者になられたので明日から、忙しくなりますよ」


そっと体を倒されると、そのまま眠気の中で意識を落とした。

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