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第二十二話 手放せない

授業を終わらせて、王子との茶会に行く。王子は座って待っていたようで、来たのを見るとニコニコと笑っている。


「よかった、もうすっかり元気そうですね。あ、ネックレスも付けてくれているのですね、ティア嬢を守りたくて作ったのです、できるだけつけてくれたらうれしいです」


普段使いにするのはどうやら正解だったらしい。とてもうれしそうだ。ただこのネックレスの宝石の色、殿下の目の色と同じなのがどうにも気恥ずかしい。とはいえ、着けておいた方がいいのは間違いないだろう。


「ありがとうございます、殿下がいろいろと研究してくださっていると聞きました。ですが、お忘れなきよう殿下、私は最強の魔法使いでしてよ。私を守りたいと仰られる前に、御身を一番に考えてくださいませ」


この人、王子のくせに守られようと行動していない気がするのだ。別に他人事といえばそうなのだけど、王子という立場にいる以上は、あっさりと死んだら国が大混乱になりそうである。王子はほかにいない。王子が死んだら、継承権が一番高いのは王弟になるのだろうか。まぁ、その前に死んだ時点で次をこさえていきそうな気もする。


「では、私のことと、ティア嬢のことを一番に考えます。それなら問題ありませんね」


にこやかにはっきりと言われてしまった。そうですか、私のことも一番に考えますか。かあぁっと顔に熱がたまるのを感じる。あぁもう、ドン引きさせる予定だったのに腹正しいなぁ。手放したくないって思っちゃうんだから。


「殿下、一つだけお願いがあるのです」


手放したくないのならば、手放せないのならば。


「もしも、私が処刑されるようなことになったときには、できるだけ苦しまない方法になるように進言してくださいませ。痛いのは嫌なのです」


ヒロインを守るために、ヒロインを苦しめた制裁をするために、ありとあらゆる苦痛を与えて殺す。あれはゲーム越しだけれどとても恐ろしかった。せめて、それぐらいはお願いしても許されるだろう。


「処刑となると、よほどの罪を犯さない限り処刑されることはありませんよ。ティア嬢、なにかするおつもりなのですか?」

「いいえ、全くございませんわ」

「それなら、気にする必要はないでしょう」


まぁ、記憶の片隅にぐらい置いてくれていたらいいか。あまり言い過ぎても不自然だろう、王子もどことなく不安そうにこちらを見ている気がする。にっこりと笑顔を作っておいた。


「そうですわね、大きな戦いの後で少々不安定なっていたようですわ。呪の力は心さえかき乱してしまうのです」


殿下の目は不安げなままだったが、それ以上追求をする気はないようだ。


「そうですか。あ、そろそろ母との茶会の時間でしたね、また今度話しましょう」


いつの間にかそんな時間になっていたようだ。礼をとり場所を移動する。ちなみに王子との茶会の時に出てきた、紅茶とクッキーの量はかなり控えめだった。王妃が大量に用意しないかぎり、お腹がタポタポになるような事態にはならないだろう。扉を開けられ、部屋に入り礼をとると、あまり間を置かずに座るように言われた。よし、紅茶とケーキの量は控えめ! 思わず一番に机の上を確認してしまって、慌てて王妃に意識を向けなおす。


「ふふっ、大丈夫よ。流石に食べれないような量を用意したりしないわ」


机を真っ先に確認したの、しっかりとばれていたらしい、笑っているから気分は害していないようだ。


「無理を言って悪かったわ。どうしても早くお礼を言いたかったのよ。シャルを守ってくれてありがとう」

「と、とんでもありません」


最近はこんなことばかりで、ほんとにむず痒いような、落ち着かない心地になりつつ返事を返す。


「そういわないで頂戴。あの子の母親としては本当に、いくら感謝してもし足りないぐらいなのだから。陛下からは、雷と呪を纏いし守護者の称号を……」

「げほげほっ」


思わずむせたわ!! 急な中二ワードに紅茶をふきださなかった私を褒めてほしいぐらいだ。


「だ、大丈夫?」

「はい」


「そ、そぅ? あ、続きを言うわね。陛下から称号が与えられ、シャルからはそのネックレスが渡されているけど、私からはまだ何も渡していなかったわね。何か欲しいものはあるかしら」


ゲーム! と前世なら間髪入れずに答えているところである。残念ながらこの世界にゲームなんて物は存在していない。ぱっと思いつくようなものがないのでそう答える。


「あら、そぅ? 何かあればそれを用意しようと思ったのだけれど。あ、じゃあこれをあげるわ」


スッと王妃の頭についていた飾りを一つ取り、私の頭に着けてにっこりと笑った。これもこれでけっこうな値段になりそうだ。金を纏って歩いているような感覚、庶民の私には落ち着かないのだけど、ニコニコしている王妃にそんなこと言えるはずもない。何より今はこれでも侯爵令嬢である。感覚はともかく肩書だけは庶民ではない。


「ありがとうございます。大切に致しますわ」

「えぇ、そうして頂戴。そういえば、ディーダとはうまくいっているかしら」


教育係については、いろいろと王妃が気を揉んでくれているおかげで、ミュリーから変わって平和な授業になった。


「えぇ、ディーダの授業はとても楽しいです。ありがとうございます」

「とても頑張っているようね、授業の様子はディーダから聞いているわ。大変だと思うけれど、シャルの婚約者はあなたであってほしいと思っているの、頑張って頂戴」


どうやら、婚約者の立場は王妃公認のものになったようです。





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