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第十九話 後日談

目が覚めるとベッドの上にいた、フラメウがベッドわきの椅子に座って寝ている、目の下に隈があるのを見るとずっと起きていたのかもしれない。涙目になったり、隈を作るまで起きていたり、忙しいメイドだ。原因は私にあるのだけれど。


あの光の後から、記憶がない。自分は助かったみたいだけど、王子はどうなったのだろうか。


「お嬢様! お目覚めになられたのですね」


動く気配を察知したのか、フラメウが目を覚ますと、安堵したような目を向けてくる。


「二週間、お目覚めになられなかったのです。心配しましたよ」


うっそ、そんなに寝ていたの? そりゃ、看病しているフラメウがやつれるわけだ。二週間の間ほとんど寝てないことになるのだろう。早く寝かせてあげたいけれど、流石に現状の確認はしておきたい。


「殿下は無事なのですか?」

「無事ですよ。殿下もお嬢様も、王宮にいる治癒魔法が使える魔法使いにより傷は完治していますし、殿下は保護された時に意識もありましたから。お嬢様は魔力の使い過ぎで、しばらく目覚めることが出来なかったのです」


殿下はどうやら無事らしい。完治しているという言葉の通り、体に痛みはない。魔力の使い過ぎのせいか、だるさだけは残っているような状態だ。


「殿下を襲った六人組は?」

「捕まりましたよ、安心してください」


なんとなくそれ以上聞いてほしくないような感じで、ぴしゃりと話を切られた。何を黙っているのだろうかと、口を開きかけたか、それ以上聞きづらく、一度間を開けると質問を変えた。


「殿下の護衛がいなかったり、騎士が来なかったりしたけど、どうしたの?」

「順番に説明致します。最初は、お嬢様と殿下がメファールをしている様子が映し出されていたのですが、急にお姿を消しになったのです。その時点で、騎士が探しに行かれたのですが、見つかったのは、倒れた護衛で、お嬢様たちが見つかりませんでした。騎士は、すぐに戻り王宮の魔法使いに殿下たちの居場所を探すように依頼しました。王宮の魔法使いの中には、魔力から居場所を探知できる魔法使いがいるのですよ。その魔法使いが、殿下の出した信号弾を検知して、王宮から離れた場所にある森にいることがわかり、救出に向かうと、意識を失くしたお嬢様に、倒れた不審な人物、お嬢様を心配そうにゆする殿下の姿があったようです」


となると、あの光のあと何かが起きて、どうにか不審な人物を倒すことが出来たのだろう。王宮の森から離れていたということは、足元が光った瞬間に転移でもさせられていたのだろうか。そういえば、意識をなくす前に、光の粒子が見たけど。


ベッドに座ったまま、辺りを見回してみる。特に光の粒子が浮かんでいる様子はない。あれはいったい何だったのだろうか。


「さ、お嬢様、もう休んでください。起きたばかりとは言え、無茶をした後なのですから」


自分が起きていては、フラメウが休むことが出来ないだろう。何より体もだるいし、これ以上頭も回らない。言われた通りに、そのまま眠ることにした。


次の日になると、殿下が見舞いに来ていた。完治しているの言葉通り元気そうにしている。


「ティア嬢、目が覚めたと聞いて安心しました。ティア嬢のおかげで、助かったのですよ、ありがとうございます」

「お、大げさですわ」


はっきり言って、倒した自覚も無ければ、メファールがあったこと自体がふわふわと夢みたいにも思えてくる。あまりに変わったことが起きると、実感がわかない。事の大きさは違うけど、修学旅行の初日なんかは、どことなくふわふわと現実感がないような気持になったりしていた、今がそんな感じだ。その状態で感謝されてしまうと、どことなくむず痒い気持ちになってしまう。


「大げさではないですよ。両親も、ティア嬢に御礼がしたいと言っていました。元気になったら、王宮に来てください」


これ、王妃だけじゃなく、陛下にも会うことになるんだろうか。私前世、一般人! 平民! 貴族生活が始まった時にも思ったけど、無茶ぶりが過ぎるよ。ハートが鋼鉄で出来ているわけじゃないんだから。いつか猫の皮が剥げて盛大に粗相をやらかしやしないだろうかなんて、少し気が重くなった。


「あ、私はこの辺りで。ティア嬢が目覚めたので外出許可が下りたのですが、あんなことがあったばかりなので、できるだけ王宮にいるように言われているんです」


そういうと、王子は帰っていった。窓から帰る様子を眺めていると、沢山の護衛に囲まれている様子が見えた。襲ってきた人は捕まえたけど、まだ安心できる状況ではないのかもしれないと溜息を吐く。


「実は、襲ってきた人の背後にいた人物が分かっていないのです。お嬢様も、王宮の行きかえりはありますが、それ以外で外出はしばらく難しいと思われます、それから、護衛もふえることになりました」


元々、王宮以外に外出することはなかったから、それは問題ないだろう。問題は護衛が増えることだ。バイオレンスな護衛はこれ以上要らないんだが。げんなりした顔をしていると、フラメウは苦笑いした。


「顔合わせは後日します。出来ることは少ないかもしれないですが、何かあれば言って下さいね。……あまり無茶をなさらないでくださいね。目覚めないお嬢様を待ち続けるのはもう嫌ですよ」


そっと、手を伸ばされた。今度はふりはらわなかった。

触れる寸前に少しためらうように手が止まったけど、そのまま優しく抱き寄せられた。


あぁ、やっぱり嫌いになれないや。そんなことをあらためて思った。

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