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賽銭泥棒の災難  作者: 双澤金魚
6/7

縁を求めて

巧みなセールス技術でスーツや靴を買わされ、熱っぽい子供を助けるために薬を買ったら詐欺で、妊婦さんを病院まで運ぶも旦那が警察で、挙句の果てに不良にカツアゲされてしまった俺。

とことんついてない。

所持金は5円。

目の前には神社。

もう一度賽銭泥棒をしようか。という考えが一瞬よぎって泡のように消えた。

きっと結果は変わらないだろう。

それに加えて、この神社は防犯カメラがしっかりと設置されていた。


俺はゾンビのような足取りで、賽銭箱に向かった。

そうだ、町役場に行けば俺みたいな失業者には何らかの手当が貰えるのではないだろうか。

俺は、自分でなんでも解決したいと思うあまり、家を飛び出し。

自分なら何かをつかみ取れるのではないかと必死に自分の力だけで生きてきた。

その結果がこれだ。

他人を頼ればよかった。


思えば、服屋っていう仕事も客がいて初めて成り立つ。

詐欺家族も他人の金で生きている。

妊婦だって1人で子供をうみ育てることは難しいだろう。

不良どもは許さん。

そんなふうに、考えた時。俺は人を頼りたい気持ちになった。

何かに縋りたい気持ちになった。


気づくと俺は残った5円を賽銭箱に投げ入れて、手を合わせていた。


「ちょっと君」

「はいなんでしょうか」

俺が振り返ると、5人程の警察官がいた。

まさに、ご縁があったわけだ。

逃げるか否か、足を踏み出そうとして諦めた。

俺は両側を警察官に挟まれてパトカーに乗り込み、逮捕連行された。


これから語るのはパトカー内で警察官が話してくれたことだ。

俺がどうして捕まったのか、この運命を辿ったのかという警察の物語だ。


まず、俺の賽銭泥棒は1時間程で発覚したらしい。

付近の防犯カメラを調べると服屋に入る怪しい男がおり、マークしたらしい。

金木に話を聴くと、大量の小銭に不信感を持った話と、賽銭箱の中の木のクズと、小銭や紙幣についた木のクズが一致したという。

そして、自分でも笑ってしまうが、サングラスにネックウォーマー、スーツに革靴、紙袋を下げている怪しげな人物を見かけたという通報がいくつか入っていたようだ。

さらに、夕方カツアゲをしていた4人の少年が現行犯で逮捕され。

さっき怪しいスーツ男から金を奪ったと言ったらしい。

そしてすぐ近くの大国神社周辺を警察が見張っていたところ、俺が現れたという。


なんとも、残念な計画と残念な捕まり方。

俺の人生そのものを表現しているようだった。

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