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賽銭泥棒の災難  作者: 双澤金魚
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無一文になった男。賽銭泥棒をする

会社が潰れ、貯金も底をついた。

都会に来たのは5年前、その頃俺にあった選択肢は家を出るか、農家を継ぐかのどちらかだった。

ドンドン。と扉を叩く音がする。

「久保川信作さん!3ヶ月分の家賃払ってくださいよ!久保川さん!」

俺こと、久保川信作は大家の言う通り、3ヶ月分の家賃を滞納している。

電気、ガスについてもついに止められてしまった。

「やっぱり、家業を継ぐしかないか」

気持ちは固まっていた。

その証拠に、残りの金を使って深夜バスのチケットは昨日買ってあった。


チケットと僅かな食事代を握りしめ、俺はバスターミナルへ向かった。

秋の昼間、日差しは強いが風が冷たい。

バスの出発には時間がある。ゆっくり歩いていると大きな橋の上に着いた。

俺は川を眺めて僅かな所持金とチケットを見つめた。

「はぁ、都会って怖いぜ」

呟いて、濁った水面を眺めた。

その時、若いカップルの女の方が俺の肩に激突した。

「うわっ!」

この瞬間、俺はチケットと所持金を川に落とした。

「わー、ごめんなさーい」

俺にぶつかった女は笑いながら立ち去る。

絶望と共に怒りが沸いた。

しかし、怒りは収まり、絶望が渦巻いた。

終わった、まじで、一文無しになってしまった。


万引き、強盗、知り合いから借りるか、様々な思案をしながらゆくあてもなくブラブラしていると森の中に大黒神社という小さな神社を見つけた。

防犯カメラはない、人もいない、この時、俺の頭に賽銭泥棒という考えが浮かんだ。

罰当たりだし、昔の俺だったら絶対しないだろう。

しかし、今は違う。

やるしかない、生きるか死ぬかの分岐点にたった人間は、真の意味で強かった。

「必ず返します!」

変な宣誓をすると、賽銭箱を持ち上げ、ひっくり返し、裏にある取り出し口から大量の小銭と数枚のお札を盗った。


しかし、あまりに小銭が多かったため近くのゴミ箱をあさり、紙袋を手に入れ、その中に賽銭を入れて運ぶことにしした。

これで俺も立派は犯罪者。捕まれば人生終了と思いつつ、スリルを楽しんでいる自分がいることも気がついた。

さあ、とにかく実家に帰らないと、まずチケットだ。弁償はそれからでいい。

少し離れた公園の裏にある空き地に隠れると、賽銭を計算した。

107145円意外と多くて驚いた。

チケット代と食事代を残して、あとは戻そうかと思ったが、神社にちょうど人が入っていくのが見えたので諦めた。

「よし、町に向かうぞ」

俺は自分に喝を入れて立ち上がった。

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