90 ショロポルカとシワポルカ ※ステータスあり
お待たせしましたー!
紅茶をすすり、生クリームを乗せたブドウのパンケーキにフォークを突き立てる。待ち構えるように口を大きく開けたので、最後の一切れはウヅキさんに譲った。
「お嬢様言葉のウヅキさん可愛かったなぁ。めちゃくちゃ俺のこと嫌ってたけど」
「そうだったんですか?」
「ああ、逃げられまくったぜ」
「そうですか。まぁ、確かにそうですね。心が成熟してない人にはあなたの魅力はわかりませんよ」
「本当にそうか? 俺を好いてくれる奴、大体変人な気がするけど」
「ん? それって私も含まれてますか?」
「さぁな」
ユーキちゃんの番になってからそろそろ1時間が経つ。ウヅキさんのを合わせれば2時間だ。
嫌な視線を感じたので後ろを見る。DJスパルナによるスペシャルライブよりも順番待ちを優先した魂たちがイライラしていた。
流石に強メンタルな楽園の住人たちでも、列に割り込まれたうえ、その場でティーパーティをおっ始められたら感情がたかぶるみたいだ。
「日が暮れてきましたね。そういえば、向こうの時間はどうなってんですか?」
「同じように進んでるぜ。安心しろって。浦島太郎状態にはならねーからよ」
「仕事は?」
「気にしないことにしようぜ。それは」
「うっ……ううん」
ようやくユーキちゃんが目を覚ました。ハンドルから手を離し、ハンドスピナーを回す。
「おいおい。まさか、記憶が戻らないとか無いよな」
正直、魂の金庫で元に戻るかの確信は無かった。脳がダメでも、魂ならどうにかなるんじゃないかと思い、魂の金庫に賭けてみた。もしこれでダメなら、ダメ元で若返らせるしかない。マナガス神を倒したり、ドラゴンを食べて強化した体が貧弱になってしまうかもしれないけど、脳に障害が残ったまま放置するよりは安全だ。
「ユーキちゃん、話せるか?」
「え、なんだ?」
「おお! 意識が戻ったか!」
「うん。でも。バリ、ダルい」
虚な目でハンドスピナーを見つめている。魂の格は上がったが、姿が現世の身体と同じままなので、脳機能の障害が消えていないのだろう。
「意識を強く保って頭ん中の雲を払え。ここは天国や。強く願えば、叶えたい願いも全部叶う。強く願え。強く。生きたいと」
「願う……」
魂の形は意識次第。強い意志があれば、脳みそが最適な形状へと変化するはず。その脳みそさえコピーすれば、もし現世でユーキちゃんの若返りに失敗しても新しい脳みそを移植して元の強さに復元できる。スマホの機種変更とおんなじだ。
「あーー。なんだかー。気分が良くなってきとるが」
「スッキリするまで願い続けろ」
自分たちの番が終わったのに、ずっと列を塞ぐのも悪いんで、続きはパーティ会場でやってもらう。
会場に戻ると、羽を広げたDJスパルナがターンテーブルをスクラッチングしていた。クチバシと三本目の足でフェーダーを弄り、音量や楽曲のテンポを上げ下げする。
何も教えていないのにフィーリングだけで二つの曲をミックスしている。ベースのパートに別の曲のドラムが合わさって、聞き心地の良い繋ぎだった。俺も今日始めたばかりの初心者だが、スパルナのテクニックが凄いってことはなんとなくわかる。やはり鳥って生き物は音楽が得意なのかもしれない。インコが歌う動画とかSNSで見かけるし、スクラッチするカラスも探せば居そうだ。
ステージで一番目立つスパルナに目が行きがちだが、注目すべきはステージ全体だ。
知らないうちに会場が改造されていた。
ステージの両脇には鶴翼の陣みたく開いた階段が設置されていた。音のリズムに合わせて段差が光り、頂上には光るパラソルを備えたテラス席が出来上がっている。
十中八九、冥界神の仕業だ。魂たちと同じ目線で参加するのではなく、高い所から見下ろして楽しみたいのだろう。テラスをよく見ると、俺の予想通り、冥界神たちが食事していた。雇った覚えのないウェイターが配膳している。
冥界神の中には、下に降りてダンスを楽しむ変人もいた。その中にシャロポルカがいる。奴に話を聞いてみよう。
「ウヅキさん。ユーキちゃんを見といてくれ。外には出ないように」
ステージ裏の控室に二人を隠した。冥界神には俺だけで会う。視線だけで魂を転生させられる奴らに二人を会わせるわけにはいかん。
「よお、先輩。楽しんでますか?」
大勢の魂たちに囲まれてご機嫌なシャロポルカは、俺の顔を見て喜んだ。
「さ〜ぁいこ〜ぉだよ。こんなお祭り初めて〜ぇ」
「それはよかった。他の冥界神の方々も既にご来場なさっているようですね。お呼びかけありがとうございます。助かりました」
「ううん。天道くんの力だ〜ぁよ。僕が呼べたのは妻だけだも〜ぉん。妻もここに来るまでは渋ってたんだよ〜ぉ。ひどいよね〜ぇ」
「どのくらい集まりました?」
「みんな来たんだよ〜ぉ。地獄からも来たんだって〜ぇ。すごいよ〜ぉ」
「ありがとうございます」
冥界神は天国と地獄合わせて13。ボクちゃんを除けば残り12。テラスにいる奴らと、踊ってる奴らを合計するとちょうど同じ数になる。つまり、ショロポルカの妻がみんなを集めてくれたわけか。感謝感謝。
「奥様はどちらに?」
「あそこだよ〜ぉ」
ショロポルカが指を差す。その先を見ると、魂と手を繋いでダンスする蛇人間がいた。しっとりめの曲に合わせてステップを踏み、黒い鱗と同じ色のドレスをひらつかせている。
「奥様に挨拶してきますね。後ほどステージでスピーチを致しますので、それまで自由にされてください。パーティ最高!」
「パーティさいこ〜ぉ!」
踊る魂を掻い潜り、カップルダンスをするショロポルカの妻と元へ。リーダー役の魂とさりげなく入れ替わり、黒い鱗の手を取った。
「今日のパーティを主催した天道です。本日はご参加頂きありがとうございます。旦那様にお聞きましたが、参加の呼びかけにご協力くださったそうで。心よりお礼申し上げます」
「しゅるるるるぅ……ステキ……あっ、ごめんなさい。私ったら見惚れてしまって。初めまして、シワポルカよ。素敵なパーティに誘ってくれてありがとう。とっても楽しいわ」
「お喜びいただけて幸甚にございます。新鮮な気分を味わってもらいたく思い、地球のお祭りを参考にして開催させていただきました。冥界神の方々にとっては馴染みの薄いパーティかもしれませんが、こういったパーティは初めてですか?」
色を変えて点滅する電飾を見ながら、曲に合わせてステップを踏む。
「ええ、これほど華やかなパーティはひさしぶり。前の夫との披露宴以来ですわ」
「ありがとうございます。それにしても、皆さんの適応力には脱帽します。特にシワポルカ先輩はフェスの楽しみ方を地球人以上にわかってらっしゃる。下々の者と同じ土俵に立ちながら、テラス席よりも威光が際立っていました」
「あら、嬉しいわ。そんなふうに褒められたのは初めてよ。ちゃんと出来ていたかしら?」
「ええ、とてもお上手でしたよ。主役のような存在感に圧倒されました」
「しゅるるる……もう……照れちゃうわ」
「では、そろそろスピーチの準備に戻りますので失礼致します」
「お待ちになって。しゅるるる〜……もう少しだけ踊ってくださらない?」
「では、もう一曲だけ」
約束通り、一曲だけ踊って離れた。このまま二人でパーティを抜け出さないかと言われたが、身の危険を感じたのでやんわりと断った。
必要以上に体を寄せてくるし、尻を触る手の仕草がいやらしかった。蛇のように長い舌を伸ばして、俺の顔を味見してきたし。間違いない。こいつ、俺を食うつもりだった。
控室に戻り、二人の無事を確認してから、ステージへ上がる。こっちに気づいたDJスパルナが手を止めた。
「ご苦労様。演奏は続けてくれ。音を少し下げるぜ」
フェーダーをつまんで音量を落とす。踊っていた魂たちが音の変化に気づいたようだ。ダンスを中断して、ステージの方を向いてくれた。
会場の9割がこっちに注目するまで待ってからスピーチを始める。
「みんなーッ! 盛り上がってるかァァーッッ!!」
「「「オオオォォーーーーーッッ!!!」」」
会場が白けないように喋りの間には気をつける。盛り上がりポイントを付けることも忘れずに。
「冥界神の先輩方! 初めまして! 今回のパーティを企画した天道と申します! 突然の開催にも関わらず、ご参加ありがとうございますッ!
過去の栄光に囚われた哀れな楽園の住人たちよ! こんな恵まれた機会は滅多にねーぞ! 自分らの幸運に感謝しろォォ!」
「「「オオオォォーーーーーッッ!!!」」」
テンション上がりっぱなしの魂たちは高らかに叫んだ。叫び声が弱まるのを待ってから続ける。
「そしてェ! 今回のパーティを開催するにあたって! 最も貢献してくださったお二方をご紹介します!」
天空に光の球体を飛ばし、スポットライトを二人に浴びせる。
「ショロポルカ先輩とシワポルカ先輩です! ご夫妻のご助力無しに今回のパーティは実現しなかったことでしょう! 心から御礼申し上げます!」
俺がお辞儀したと共に、二人に向けて盛大な拍手が送られる。テラス席からも拍手の音が聞こえてきた。それと同時に感じられた視線。冥界神たちから放たれた羨望の眼差しを俺は見逃さない。
「それでは、挨拶はこれくらいにしまして、第1回冥界フェスティバルin魂の金庫! 開幕いたします!」
いよいよ始まったパーティ本番。即興ビートボックスで会場のテンションをぶち上げる。選曲はマナガスの民謡だ。馴染み深い曲を演奏して、観客たちの心を掴む。歌詞はキャッチなフレーズのみ発音して、それ以外は客の記憶で補完させる。
数曲演奏した後は、即興カラオケ大会だ。参加者は冥界神の歌自慢から募る。曲のお題を貰ったら、ループステーションに記憶させたリズムに合わせて歌って貰い、メロディをビートボックスで模倣してハーモニーを作った。
普段聴けない冥界神たちの歌声を聴いて、観客たちのテンションは最高潮にまで高まった。
カラオケ大会と銘打ったとはいえ、優勝者は決めない。審査員不在の大会企画だと正当な評価を下すこともできない。そんな状況で順位争いなんてしたら揉めごとになるはず。だから、勇気ある参加者全員に第1回カラオケ王のトロフィーを贈呈した。
「大変名残惜しいですが、終わりの時間が近づいて参りました。夢を見ているうちは長いのに、目を覚ますと一瞬の出来事だったようにも感じます。皆さまも夢の終わりを感じていることでしょう。素敵な夢心地でしたね。
たくさん踊って、たくさん叫んで、きっとみなさんもお疲れのはず。お家に帰ってゆっくりとお休みください。これにて第1回冥界フェスティバルを閉幕します。
冥界神の先輩方には改めてご挨拶致しますので、もう少しの間、会場に残ってくださいますようお願い申し上げます。本日はご来場いただきありがとうございました」
興奮冷めやらぬ魂たちが散り散りに帰り始めた。会場が空になるまで、スパルナに退場曲を流してもらう。手持ち無沙汰な俺は、その間にステージを新しい形に改造する。12人と顔合わせするのに今の会場は広すぎるだろう。
魔法でビュッフェ形式の配膳台を片付け、テラス席も同様に片付ける。ゆっくりと階段を崩し、ステージと同じ高さまで下ろす。冥界神たちを不快にさせないよう慎重に運んだ。全員が同じ土俵に立ったところで、大きな円卓を作り、座席を設ける。
「皆さまお疲れ様でした。パーティは楽しんでいただけましたでしょうか。改めまして、自己紹介させていただきます。今は亡きボクヴォロスに代わり、極娯楽神から冥界に遣わされた天道と申します。何卒よろしくお願い致します」
乾いた拍手が鳴った。フェスの余韻にすら負けそうなクラップ音は、厳かな雰囲気に飲まれて消えてしまった。疑いの目を向けられるのは当然だろう。
「ボクヴォロスの継承者であることを証明します。こちらをご拝観くださいませ」
円卓の中心に『冥府送り』を置く。すると、重々しい空気が少し軽くなったのを感じた。本人にしか所有出来ない神器を見せたことで、俺の言葉がハッタリでないと伝わったのかもしれない。ハッタリだが。
「新しい冥界神は何年ぶりだろ〜ぉ」
ショロポルカの独り言に、シワポルカが答える。
「前に入った子が5回前の日蝕でしたから、およそ100年ぶりと思うわ。その喋り方のせいで脳まで蕩けちゃったんじゃない?」
「わはは〜ぁ。辞めちゃった子までは覚えられないよ〜ぉ」
二人が喋り出したおかげで、周りも声を出し始めた。基本的に冥界に篭りっぱなしで陰気な性格に変わっていく冥界神たちも、話すきっかけがあれば早口になる。
やれ、次のパーティはいつか教えてくれだ。やれ、次も主催をやってくれだ。やれ、次の呼びかけ人には自分を選んでくれだ。賞賛を浴びる機会を逃すまいと主張していた。
望むところだったので答えてやる。
「次回のパーティは今週末に地獄での開催を考えております。詳細は決まっておりませんので、地獄で一番盛り上がっている場所があれば、お教えいただきたく存じます」
「釜ノ池で温泉ライブも楽しそうでは……」「釘ヶ丘はどうでしょう……」「鉄蟻処もよろしいかと……」
次の開催地になりそうな場所のヒントを集めつつ、冥界神たちとの交流を深める。色々話をした結果、今日と同じように当日一番最初に出会った冥界神の案を聞き入れることにした。
「それでは解散ということで。週末にまたお会いしましょう」
散会すると、冥界神たちは俺に一言挨拶して離れて行った。皆、空飛ぶ綿菓子みたいな乗り物で帰っていく。あれは冥界内を自由に高速移動できる魔法のアイテムだ。冥界の地理を熟知しなければ使えないデメリット付きなので、ボクちゃんは所有していなかった。俺もいつかはアレを乗り回したい。
冥界神の姿が見えなくなってからステージの片付けに入る。その前に、控室の二人を避難させなければ。
「あいつら殺さなくても良かったんですか?」
まっさらなお祭り会場跡を見て余韻に浸っていると、物騒な問いかけが聞こえた。
「もちろん始末するぜ。でもまだ先の話よ。地獄でパーティもあるしな」
「将来殺す相手とよく仲良くできますね。今度は何を企んでるんですか?」
「企むって、そんな人を悪者みたいに言わないでくれよ。俺はただ、当たり前なことをしたいだけなんだって」
「本当にぃ?」
「おう。死んだ地球人もここに来るだろ。だから、死後の世界をより良い場所にしたいんだ。でも俺ひとりじゃまだ無理なんよ。冥界神たちの協力が絶対に必要になる」
「そのためのパーティってわけですか」
「そーゆーことよ。大義のためなら、好かん奴らとも笑ってやるさ」
楽園でやることも無くなったのでソウルノートを準備する。だが、名前を書くのはユーキちゃんの容態を見てからだ。
「頭の調子はどうよ?」
「スッキリしただ」
「そうか。よかった。スッキリしたか。ほんじゃあちょっと頭触るぜ」
完全回復したユーキちゃんの脳みそをコピーしておく。とても綺麗な脳みそだ。以前までの脳みそが病魔に侵されて爛れたピーマンだとしたら、今の脳みそは最新型のCPUだろう。シワの形が人間の物とも似つかない。最適化された脳みそのシワは全体的に角張っていて、圧縮された無数の溝が電子回路みたいな模様を描いている。
おそらく、ドラゴン状態のときの巨大な脳みそまで人型に収めたために起きた変化だろう。ドラゴンの巨大な身体を動かすための脳みそだ。普通の形には収まらない。
「いい感じだ。これなら元通りの生活に戻れるぞ」
「やったー」
「ほんじゃあ、帰ろうか。ユーキちゃんはここに残ってくれ」
「え?」
喜びが一転。ユーキちゃんは不安そうな顔をした。
「俺らは二人で地球に帰る。ユーキちゃんはここに残るんだ」
「オラひとり?」
「そうだよ。じゃあな」
ソウルノートに名前を書き込み、ウヅキさんと二人で身体に戻った。肌から伝わるソファの感触。かすかに残る紅茶の香り。現実に帰ってきた。
「あははははっ! 見たかユーキちゃんの顔! 絶望の表情! サイコーだったな!」
「笑いすぎ。あんまりイジメちゃ可哀想ですよ」
「ぷくくくっ……ふぅ。そうだよね。でもさ。本気で置いてかれるって思わなきゃあんな表情できねぇよなあ! あははははっ!」
「本当に性格悪いですよ」
「だって、人の困った顔がいっちゃん好きなんだもん。あの顔……くくくくっ……」
「ほらもう。早く起こしてあげてください」
「あはははっ。わかってるって。くくくっ……まずは身体を治さねぇとな」
ボロボロの脳みそを若返らせ、ついさっきコピーしたばかりの脳みそに変換する。若返りによるステータスの変動は見られない。
そういえば、若返ったウヅキさんは貧弱だったな。スキルとスペックはそのままだけど、レベルやタフネスがリセットされていたはず。
もしかしたら、魂の格を上げたおかげでパワーが戻ったかもしれない。そう思って、ステータスを見てみる。
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【LV.0】
【種族】ヒト
【重さ】 50
【戦闘力】MAX:1050
【タフネス】 950
【魔力】 10+(10^8)
【スペック】
『消失』『魔剣』
『竜殺し』『結婚指輪(呪い)』
〈スキル〉
〖武芸百般〗〖恐慌無効〗
〖存在消失〗〖不老〗
〖空腹〗〖魔力変換〗
〖スーパー黄色人〗
〖硬質化〗〖明鏡止水〗
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そんな都合の良いことは無かった。ダンジョン未経験の一般人と同じステータスだ。
「ウヅキさん。ステータスがだいぶやばいことなってるぜ」
皮膚を剥がしたウヅキさんは、更新されたステータスカードを手にして困った表情を見せた。
「あはははっ! 老けさせようか? もしかしたら、元のステータスに戻るかもしれねーぜ」
「確証が持てないならいいです。今のままで」
「それならレベルを上げ直さないとな。ちなみに思考力は低下してないか?」
「さぁ。そんなこと聞かれても分かりませんよ」
脳みそも若返ったままのはずだから、こんな風にいつも通りの会話ができるのは不思議だ。きっと魂の格が上がった影響だろう。特に弊害がなければ今のままでいいんだが、魂の格が落ちたりしたら、また記憶喪失になったりするんだろうか。
「まぁいっか。何かあればまた天国へ行けばいいだけやしな」
「それはそうと、天ちゃんはどこですか?」
「俺の分身にお世話させてる」
「いつもそうしてくれれば助かるのに」
「そんなこと言うなって。分身とは感覚を共有してないから今も心配なんだぜ。それじゃ、ユーキちゃんを起こすか……」
そう思って、テーブルを見た。
「ソウルノートが無い」




