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42-幕間2 約束を違えたならば、その醜さを笑ってやろう

 作戦開始までの露払いがプロ探索者たちの仕事だ。自衛隊はまだ出撃準備を整えている段階。その段階で美祢市へ入ることは許可されていない。ワニザメリュウを引きつけてしまう可能性は徹底的に排除する。


 そのため、先に旅館を出た《小人の干し首リトルヘッド》は美祢市の手前で止まっており、ナギたち《リープフロッガーズ》が合流できた。


 モモコたちの近くには大型トラックが二台並んでいた。どちらも荷台に巨大コンテナを乗せている。


「お母さーん!」


 自衛官と話し合い中のモモコは手を振るだけで応え、すぐにまた打ち合わせを続けた。《リトルヘッド》の他メンバーたちはモンスターと戦っている。

 そのモンスターは長門市から流れ込んできた『ウシウミケムシ』。草食モンスターではあるが危険度は高い。四足歩行で、体長は乳牛よりやや小さい程度。背中からびっしりと生えた長い触手には毒があり、刺されると痛い。


 そんなモンスターを相手に《リトルヘッド》のおっさんたちはタバコをふかしながら戦っていた。片手で武器を握ってウシウミケムシを倒している。

 その様子を見て、血の気の多い《リープフロッガーズ》の面々が動き出す。ついでに《さつまいも侍》まで参戦した。


「ちょっと! さつまいも侍は別チーでしょ! 横取りしないで!」


 薙刀を構えながら、清水ナギが注意する。

 返事する前に水無月ダイアは大太刀を抜いていた。一振りで2匹のウシウミケムシをぶった斬る。


「拙者のぶんをそちらの数に加えていいでござる!」


「いやいや、それはそれで困るってば。数で競っちゃいるけど、実力を超えたら意味ないから。不正は信用を落とす行為だよ」

「たしかにっ!」


 手代ロロの正論に対して、ダイアはそう答えながらも一振りでまた1匹仕留めた。ペースが速すぎる。たった一人で危なげもなく、おっさんたちよりも速く獲物を狩っている。


「流石ひとりでチーム名背負ってるだけあるっすね。でもおいら負けないっすよ!」


 森アルムが一人で飛び出し、ウシウミケムシの正面に立った。


 団体行動を乱したアルムに対して、ロロは注意しようとするが、アルムの気を逸らせてしまったら逆に危ないと考えて口を閉じる。


 それよりも目の前の敵に集中。ナギとロロの連携は今日が初めてではない。博多ダンジョンで何度か鉢合わせすることがあり、その度に協力してモンスターを狩っていた。ナギは基本的に薙刀を振り回さず、ロロも槍は刺突のみで戦いを切り抜けてきた。よって、巻き込み事故が起きる可能性は低い。

 この二人が横並びになるだけでも戦力は倍増する。

 二人で同時攻撃した場合、相手が目を開いたままでも一方は死角に入る。相手の弱点を狙いやすくなるという点では効果は絶大。間合いに入ってしまった場合、一度の回避行動では二人の攻撃を避けられない。


 薙刀と槍の連携を破るには、捨て身の特攻でどちらか片方を先に潰すしかない。

 ウシウミケムシは単に食べ物を求めて来たのではなく、他のモンスターから逃げてきた先で人間たちと衝突した。もう後ろには退けない。栄養補給しながらでないと長距離を移動できないため、人間を無視して移動するのは悪手だと本能でわかっている。ここが正念場だ。それは仲間のウシウミケムシもわかっていた。


 連携には連携で応える。それがウシウミケムシの回答だった。2匹のウシウミケムシが合図を出し合い、同時に突進攻撃。狙いはロロ。ナギを無視する。当然、ナギを無視すると無傷では済まない。だが武器攻撃は分散する。


 瞬発力のあるアルムがいれば、ロロが引きつけている間にウシウミケムシの横っ腹にサーベルを突き刺してくれただろう。

 しかし、アルムはダイアと張り合うのに夢中。ナギとロロが苦戦する間にウシウミケムシを一人で葬っている。討伐ペースはダイアよりも遅いが、それはウシウミケムシが動かなくなるまで念入りにサーベルを突き刺しているからであって、致命的な一撃を与える速度はダイアよりも速い。


 ロロに向かってくる2匹のウシウミケムシ。1匹の首を薙刀が切り裂いた。鮮血が舞う。しかしウシウミケムシは止まらない。

 ロロは防御の構えを取った。槍を突き刺すことも考えたが、もしも槍を抜けなかった場合、ロロの握力では槍を手放してしまう。そうなれば終わりだ。素手で立ち向かう技術も勇気もロロは持っていない。


 ドンッ


「ぐふっ!」


 防御したにもかかわらず、肺が潰れるほどのショック。空気と一緒に胃液も吐き出した。同時に複数箇所を触手で刺された。ロロは吹き飛ばされたあと、地面の上で身をもがえて苦しんだ。


「「ロロ!」」


 流石にアルムも気がついた。責任を感じて戻ってくる。しかし阻まれる。アルムに別のウシウミケムシが突進してきた。


 ロロを突き飛ばしたウシウミケムシは止まらない。うずくまるロロへとそのまま向かった。トドメを刺す気だ。


 ナギが助けに向かう。しかし阻まれる。首から血を流すウシウミケムシが最後の力でナギの進路を塞いだ。


 ロロが危ない。ウシウミケムシが頭を下げて加速した次の瞬間──。


「やれやれ」


 (つば)の無い銀色の長剣を握る江野がつぶやいた。刃先から血が垂れている。ウシウミケムシの血だ。


 誰もがロロへ向かうウシウミケムシを見るなか、誰にも見えない速さでそのウシウミケムシが死んでいた。

 長剣に付いた血を振り払う江野。首を斬られて崩れ落ちるウシウミケムシ。誰が仕留めたのかは明白だった。


「え、つんよ。もう江野さん一人でやったらよくない?」

「そういうわけにもいかんだろう」


 ここには自衛官、《リトルヘッド》、《さつまいも侍》もいる。みんなが見ている中で、江野は何の躊躇いもなく超人的な能力を披露した。

 ダンジョンが現れたこの世界で、非日常的な現実に慣れ始めた者たちの目から見ても、江野は異常な強さをしていた。

 

 各々が江野の正体を知りたがり、戦いながらもその後の行動を観察する。

 そもそも長剣はどこに仕舞っていたのか。江野は手ぶらで来ていたのに。答えは簡単。次の瞬間に長剣が消えた。仕舞うところなんて見られない。そもそも仕舞っていなかったのだから。

 その瞬間を見て、こんな危ない場所に手ぶらで来た理由もわかった。あれほど簡単に長剣を消せるのならば、簡単に長剣を出せるのだろう。


 江野はもがき苦しむロロのもとで屈んだ。そしてロロの額に手を当てる。すると光が生まれた。


「よし。起きれるかロロ」

「はぁ…はぁ…あ、ありがとう江野さん」

「借りがあるからな」

「助かったよ」


 奇跡を見た。江野は人の痛みを取り除ける。この場にいる全員がとある存在を頭に浮かべる。あれほどのことができる存在を一度見たことがあった。ケーだ。

 同時に希望が湧いた。江野ならばワニザメリュウを倒せるのではないかと。

 初めに話を切り出したのはモモコだった。


「あの、江野さん」

「言っとくがドラゴンは倒せないからな」

「無駄だよモモコさん。普通に考えてみてよ。タイマンでドラゴンを倒せる奴なんてこの世に一人しかいないって」

「それもそうね……」


 他国ではケーの分身を改造したケーシリーズというロボットを操縦し、ドラゴンを倒すという計画が動いているらしい。日本も東京の研究機関で同じ物を開発していたが、核ミサイルにより焦土化。無論、分身は残っていたが研究の記録は消えてしまった。その後、自衛隊によって分身は回収され、京都府舞鶴市にある造船所に送られた。現在、舞鶴の造船所には多方面からデータが集まっており、ケーシリーズ化の開発が急ピッチで進められている。


 だがケーシリーズの完成を待ってはいられない。ワニザメリュウは自衛隊が倒す。そういう意気込みで今回の作戦は始まった。


 もしも江野がドラゴンを倒す実力を持っていて、ここにいる自衛官がそれを報告したとしても、作戦が変更されることはない。


「モモコさん! そろそろ予定時刻です! 準備をお願いします!」

「はい! アンタたち! 行きますよ!」

「「「おす!」」」


「他のプロ探索者の皆さんは引き続きモンスターの駆除をよろしくお願いします!」


 自衛官がそう言うと、コンテナを引く二台のトラックのエンジンがかかった。


 そのとき、後ろから新しいトラックがやってきた。屋根無しトラックだ。高機動車というものだろう。

 トラックの後部座席には見覚えのある面子が乗っている。


「ハナマル! サキ姉!」


 ナギの呼びかけに気づくと、二人は手を振って答えた。どんどん先へ進んでいく。もう美祢市に入った。

 続けてコンテナを引く二台のトラックも発進した。その後ろを《リトルヘッド》の車やバイクがついて行く。


「ナギー! 危なかったら逃げなさい!」

「お母さんもねー!」


 モモコはバイクのエンジンをふかして発進する。モモコは若い頃に大型二輪免許を取得していた。悪路も走り慣れている。

 普段見慣れない母親の一面を見て、ナギは驚きと憧れを同時に抱いた。


 残された《リープフロッガーズ》と《さつまいも侍》はここで別れ、担当の区間に徒歩で移動することとなった。ダイアとは車での移動中に連絡先を交換している。帰りたいときはこれでいつでも合流できる。


 担当区間へ移動する最中にも長門ダンジョンから流れてきたモンスターと交戦した。美祢市へ長距離砲を輸送するトラックを見送りながら、特に怪我することもなくモンスターを討伐していく。遠くの輸送道路では《浮揚漁団》の戦闘が見える。


「それほど苦戦していないな」


 江野は極娯楽神の言葉を思い出していた。今日一日の間に、ナギが危ない目に遭う可能性が大いにある。

 ナギを守ることができれば江野の願いは叶うのだが、あまりにも簡単すぎる。江野が手を貸したのはロロの命を救ったくらいだ。

 もしや役目はこれで終わりなのかと考えるが、決めつけるのはまだ早い。江野には未来が見えないため、今日が終わらない限りはどうなるかわからない。


 神は過去・現在・未来を同時に見ている。世界を観察するにはそれが好都合だからだ。全ての時空間はごくごく小さな力で変えられる。ただし、意識して時空間を変えられるのは限られた存在のみ。時空間を変える権利は最極の神から与えられる。権利を与えられた自覚がある場合と自覚がない場合があり、江野はその自覚がある。今日一日という限定付きではあるが意志の力で未来を変えられる。


 極娯楽神はナギの人生を変えることで何かを得ようとしている。そのために江野を利用している。


「おーい、そっちはどんな感じだーい?」


 向こうから3人組がやってきた。金髪ウルフ、茶髪キノコ、黒髪パーマだ。武器は手斧、金槌をそれぞれ持っている。武器とツルツルの服にはモンスターの血が付着していた。それなりにモンスターを狩ったようだ。


 対して、《リープフロッガーズ》の面々には返り血が少ない。遠目に見れば討伐数が少なく思えるだろう。だがしかし、その討伐数は……


「ウシウミケムシ25、トラフグトラ13合わせて38ってところかな」


 まだ1時間も経っていない。それでこの量は多すぎた。遭遇したモンスターを逃さず倒さなければこの量にはならない。


「へ、へぇー。やるじゃねーか。数え間違えじゃなけりゃあな!」


 《浮揚漁団》の総討伐数は26。14人いてもこれだけ時間がかかっていた。大勢で戦うような状況ではないため、適正な人数で班をつくり、味方を巻き込まないようにバラけて戦っていた。

 ちなみに3人組の討伐数は《浮揚漁団》の中では多い方であり、3人で6匹を狩っている。そのため3人組は自信満々にやってきたわけだが、たった一言で天狗の鼻をへし折られた。


「で、そっちは?」

「えっ! あっ……そういえば《さつまいも侍》はどうしたよ。

 アイツ馬鹿だよなー! ウチのバスに乗り込んで来たときはマジ笑ったわ! 何つってたっけ?」


「『え、拙者は徒歩なのでござるかー!』w」

「似てるw 似てるw」

「確か君らのとこに乗っていったよねw もしかして死んじゃった?w コスプレ野郎が俺らと一緒の区間とかぜってぇ何かの間違いだもんなw」


「お前らもひでぇよな。一緒に行動してやれよ。あんな馬鹿をひとりにしたらすぐに死んじまうだろ」


「恥かく前に忠告してやるっす。《さつまいも侍》をあんま馬鹿にしないほうが良いっすよ。実力はおいら達よりも確実に上っすから」


「おいらってw 今どき自分のことそんな呼び方するやついるーw おいらーおいらーオイラーの定理w」

「博識ーw」


「クソみたいなノリ。大人なのに恥ずかしっ」


 ボソッとナギが呟いた。これに対して真っ先に反応したのは江野だ。


 金髪ウルフからヒュッと金槌が投げられた。クルクルと縦回転して、真っ直ぐに飛んでくる。


「あ、ごめーんw 手が滑っ……」

「悪ふざけにしてはやりすぎだな」


 金槌がナギの顔に当たる直前で止められた。まさかこんなことじゃ無いだろうと思いながらも、警戒していて正解だった。

 江野は手渡しで金槌を返した。「モンスターにだけ使え」と金髪ウルフに釘を刺しながら。


「お、お前っ、役立たずの仲居じゃねーか!

 なんでここにいんだよ! ここはプロ探索者しか来ちゃいけねーんだぞ!」


 手ぶらで返り血ひとつ浴びていない江野を見て、金髪ウルフは威嚇した。


「江野さんはウチらのチームメイトだしっ!

 暴漢は帰れー!」

「帰れー帰れー」


「こっ、このブタ!」

「おい。相手にすんな。帰るぞ」


 金髪を叩いて茶髪キノコがそう言った。黒髪パーマはもう歩き始めている。


「恥かかせやがって! ぜってぇ仕返しすっから! 覚えてろ!」

「べー」


 ナギのベーを見て、江野も真似して舌を出した。そんな二人をロロとアルムが呆れた目で見ている。


「こういうのやってみたかったんだ」


 誰に向けたのかもわからない言い訳をする江野。


「江野さんありがとう! 危ないところ助けてくれて!」

「ああ。気にするな。それよりもそろそろ帰る時間じゃないか?」


 時計を見たロロが頷く。遠くで爆音も激しく鳴っていた。自衛隊の作戦がうまくいっていると信じて、《さつまいも侍》に帰宅の指示を送る。向こうはちょうど40匹目のモンスターを倒して休憩するところだったらしい。



 旅館に戻ると血生臭いにおいが玄関を支配していた。怪我をしたプロ探索者が待合室に運ばれている。中には重症者もいるようだ。医者がいない旅館では治療できない。じきに死人が出てくるだろう。

 江野なら治療できる。しかしそれを頼めるのは貸しのあるロロくらいだ。


「江野さん。あの人たちを助けてあげられませんか?」

「うーん。そうだなぁ」

「心からここに来たいと思って来た人ばかりじゃないんです。みんな無理して来てるんです」

「うーん。そうだなぁ」

「リスクがあるのはわかります。でも放っておけない。なんの見返りもないのに自分を犠牲にしている人たちを僕は見てみぬふりできない。江野さんの正体が広まっても、無理なく暮らせるようにお手伝いします。だからお願いします」


 他人のために頭を下げるロロを見て、江野はそれでもどうしようかと悩んだ。


「みんなにお茶を振る舞ったらどうっすか。寝込んでる人たちにも。余計なお世話かもしれないっすけど」


 重症者にお茶を配る。そう提案したアルムに訝しげな視線が注がれる。だがその中で江野だけが納得したような表情を見せた。


「そうだな。女将にお茶を淹れてもらおう」


 そう言って江野は関係者用ドアに入っていった。そのすぐ後に女将の怒声が待合室まで届いた。


 どうしてアルムはあんなことを言ったのか。そして何故江野は従ったのか。不思議に思ったロロとナギとダイアは、アルムにその意味を問う。


「江野さんは理由が欲しかったんじゃないっすかね。怪我人に近づくための理由が。触れたら人の怪我を治せるとか、そんなこと正直に言っても怪しまれるだけっすから」


 旅館に一泊したならば、江野のポンコツ具合を知らない人はいない。もし重症者にお茶を配ったとしても、江野ならそこまで怪しまれない。


「なるほど〜」


 おぼんにお茶を乗せた江野が関係者用ドアから出てきた。江野は待合室の探索者たちにお茶を配り、手を光らせている。


 怪しすぎる。光る手に触れた者たちはみんな元気になった。治療できる能力について疑いを持った探索者が江野に問いかけた。しかしその問いかけに江野は答えることなく、とぼけた顔で次の怪我人にお茶を配った。


 その晩、誰もが枕を濡らして寝静まった頃、二人の女がお湯に浸かっていた。


『本当は強敵と鉢あって厄介な事になるはずだったんだがな。ロロを助けたことでその未来は回避された。やるじゃないか』


「為すべきことを為したまでだ。それより願いを叶えろ。引き延ばすことは許さない」


『許さないときたか。まぁいい。願いを言え。ただし』


「貴様にしか叶えられない願いだ。今すぐ清水ナギの身柄を解放しろ。そしてこの私に取り憑け。こんないたいけな少女に、過酷な預言者の人生なんぞ送らせてたまるかっ」


『そうか。お前ならそう言うと思ったが、まさか本当に言うとはな。せっかくこの私を出し抜くチャンスだったのに、それを棒に振るのか』


「ふん。出し抜いて何になる。この私は神になれんのだぞ。予備世界から手を引かせたくても、貴様を倒して神になることはできん」


『ふふふ。そうだな。お前に可能性は無い。わかった。願いを叶えよう』


「さあ出て行け。この子の人生から」


 ナギから正気が抜けた。沈みそうなナギの身体を横から支える。このまま湯に浸からせておくのは危険だ。ナギを担いで風呂から上がり、脱衣室のベンチに寝かせた。


 〖天使パワー〗で互いの水気を飛ばし、タオルを被せる。ナギの介抱をしながら江野は思った。


「ちゃんと願いは叶ったんだろうな」


 以前と全く変化がない。ナギにも江野にも変化は見られない。ナギが解放されたか確かめるために、リスクをおかしてでも極娯楽神を自分に取り憑かせた。それなのに実感がない。

 預言者となった者は常に神と感覚を共有する。極愛神の場合はそうだった。なのに極娯楽神からは暖かみも冷たさも何も感じない。


 江野は極愛神しか知らない。基本世界ごとに最極神はひとつしかいないのだから当たり前だ。だから極娯楽神の預言者がどんな目に遭うのかもわからない。

 極愛神に取り憑かれた預言者は悲惨な人生を歩むことが決定付けられているため、同じものと考えて自分に取り憑かせたが、間違いだったのかもしれない。


「約束を違えたならば、その醜さを笑ってやろう。それだけのことだ」

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