第2話
今回は短めです。
王都、ミッドガルドは大陸の中心にあり中継貿易で発展した都市であり広大な平原に城壁を立て四方からやって来る商人を管理している。
その城壁の真ん中には石で作られた大きな城が四方を見回していた。
そしてその性質上、整備された通りには多くの竜車や馬車が行き交い露店が並び、王都の真ん中を流れる川は船が所狭しと並んでいる。さらに空には飛空艇が大きな影を落としながら進んでいる。
見慣れた光景だが尾行しているというだけでキースの心拍数ははね上がる。対象はカナタ。朝、宿から出る所からつけているのだが武器屋、雑貨屋、本屋等々関係性の薄い所ばかりだった。
なぜ尾行しているのかは単純に好奇心に負けたからである。しかし、思ったよりも強敵で、ふと目を離すともうそこにいないということがよくあった。今だって八百屋の前でボーッとしているがいついなくなってもおかしくない。
そしてカナタは再び歩きだした。追おうとして気がつくとカナタが消えていた。
「…どこだ?」
辺りを見回してもどこにもいない。また聞き込みをしなくては。まずはここらであいつが行きそうな所を予想する。
「ここだよ」
もしかしたら路地裏に入ったのかも知れない。いや、どこか店の中に入ったのかも知れない。他にいそうなところは…
…ん?
「うわぁ!」
目の前に尾行対象がいた。それなのに全く気付けなかった。
「いっ…いつから気付いてた!?」
…ん?
(やっちまったぁぁ!!!)
あっいたんだ。くらいの対応しておけばよかった。これでは後をつけていたことを認めたようなものだ。今気付いても後の祭り。言ってしまった言葉は戻らない。
「武器屋から」
「結構前から気付いていたな!?」
なんてことだ。カナタは分かっていたんだ。分かっていて呼ばれたからやって来たのだ。自分が尾行出来ていたと思っていただけだったと知り羞恥が全身をつつむ。そんなことなど知らぬようにカナタは一枚の紙を差し出した。
「…これは?」
「案内。お願い」
差し出された紙は買い物のリストだった。しかしあまりチェックは入っていなかった。つまりはこいつは迷っていたんだ。
…ちょうどいい。これで付いていく理由ができた。
「任せろ。王都にはよく来ているんだ。」
そうしてキースは自信満々に王都を案内し始めた。
そして迷った。というのもキースは王都にはよく来る物のあまり王都を見て回ったことは少なかった。微笑んでいるカナタの視線が痛く感じる。
「…っ!いいだろ!俺だって分からないんだから!」
「まだ何も言ってない」
「まっまあ、何とかなるだろ!えーっと…どこだ?ここ?」
「お困りですか?」
突然、声が聞こえた。その声の方を見ると一人のどこかの制服を着た女性が立っていた。
「あんたは?」
「そうですね…案内人とでも呼んでください。どこへ行きたいんですか?」
*
私は案内人をやって5年目になるが大通りの真ん中で迷っている人を見たことがなかった。
一人は黄色のマントを着た金髪の背の高い男で、一人は黒のロングコートを着た女の子?だった。
そして一方は紙を差し出して案内してほしいと言ってきた。その紙を見てはっきりとわかったことがあった。
それはどちらかが王都冒険者育成学校の入学者希望であるということだ。
王都冒険者育成学校、通称王険校とは超エリート校で、学術、武術、技術、芸術、全てにおいてトップクラスの成績を修めた人しか入学を許可されないような学校だ。決して大通りの真ん中で迷うような人が入学できるような学校ではない。
なぜわかったかというと購入するリストの中に王険校の制服があったからだ。
今から買うなんて余程の自信があるのかただ単に馬鹿なのか。
だからといって私になにか関係があるかというと特にないので買い物リストにのっているものを順に回っていく。
おそらく入学希望者は黒髪の方だろう。行く先々でものを選ぶのはその子だ。しかし、悩む時間が長いので思ったよりも時間がかかってしまった。
途中、昼になったので休憩もかねて食事処による。三人で向かいかうように席につく。一通り料理を頼むと一方が話しかけてくる。
「スゲーなお前。王都のこと知り尽くしてるじゃん」
その視線の先には本や服など様々な荷物が積まれていた。
「いえ、仕事ですので」
「それでもすげーよ」
「ありがとうございます」
「いやーオレ、全然分かんなくって、本当に助かったぜ」
「じゃあなんであんなに自信満々に任せろって言ったの?」
「っ!…カナタ、お前、痛い所つくな…」
その後も他愛の無い話をしたが黒髪の子は終始微笑んでこちらを眺めていた。
そして昼も終わり、買い物リストの全てに印が付く頃には日も傾き始めていた。
「それでは買い物リストも全て埋まりましたし、ここで案内を終了させてもらいます。ちなみにお代は結構です。国から給料がもらえるので。」
それにキースが笑顔で答える。
「おう。ありがとう。国から給料もらえるのはいいな!」
そして黒髪の子は表情も変えずただ微笑んでいるだけだった。
ーその表情が少し寂しそうに見えた。
が、気にしてはいられない。そう思い、夜の帳が降り始めた王都に歩を進めるのだった。
いかがでしたか。
最近、この世界のキャラ設定や細かいことをまとめた話を書いた方がいい気がしています。
というわけでなにか書くかも知れないですけどその時もよろしくお願いいたします。
では第三話で。