文章のこと
キャベツのお味噌汁が好きです。特に、油揚げのはいっているものが。
初めて食べた正確な日付は覚えていませんが、場所は覚えています。入院先でした。
病院食といえばまずいのがお馴染みですが、そこのご飯はとてもおいしく、特にお味噌汁の味が家のものと似ていて、最初の食事でほっとした記憶があります。ただ、家ではキャベツのお味噌汁も、油揚げのはいったお味噌汁も、食べたことがなかったので、初めて見た時は驚きました。
食べるものに制限はありましたが、さばの塩焼きが結構な頻度で出てきて、さば好きなので喜んでいました。
入院して、日記を毎日につけるようになりました。
入院前から日記はつけていたのですが、一週間くらい間隔があくことはざらで、真面目につけてはいませんでした。
でも、入院先には本の持ち込み制限や、ゲーム類禁止(カードゲームなども厳禁)という決まりがあったので、日課をこなすとひまなのです。家とはかなり違う環境なので、なにもしないでいると気が滅入るし、かといって家が遠いので頻繁に本を届けてもらう訳にもいかない。なので、文章を書くか、絵を描くか、患者同士遊ぶかの三択でした。
最初は遊んでいたのですが、子どもたちがうるさいと苦情がはいったので、日記と絵、に落ち着いたのです。
日記といっても短く、二・三行か、下手すると一言だけです。本棟まで行って検査をした、とか、同室に新しい子がはいった、とか。
そのうち、当時はまっていたTRPGのキャラシートをつくるようになりました。そこから、このキャラがこうなったら面白いな、こういう事件にまきこまれたどうなるだろう、こんなひとと恋愛をしたら……と考えるようになり、ノートにこっそり文章をつづっていました。といっても、まんがやゲームの登場人物、それと現実の知り合いや友達をもとにしたキャラだったので、ぎりぎり二次創作の範疇、だと思います。
ストーリーは、しりすぼみになって、うやむやで完結させました。退院が決まったからです。昔から遅筆です。
日記は今でもつけています。あの時の日記帳もさがせばあるでしょう。読み返せば、キャベツのお味噌汁を初めて食べた日がはっきりするかもしれません。