漫才 酒
二人「どーもー」
ボケ「あー、頭いてえ」
ツッコミ「どうしたん?」
ボケ「飲みすぎて二日酔いなんだよ。そんで、昨夜の記憶がないんだよな」
ツッコミ「いい年なんだから記憶をなくすほど飲むなよな」
ボケ「そんで、今朝目を覚まして部屋を見渡したら、なぜか薄汚い犬がいてさ」
ツッコミ「酔って拾ったのか」
ボケ「で、目が合った途端、すげえ吠えてくるんだよ。歯をむき出しにしてさ。んで、襲い掛かってくるんだよ」
ツッコミ「大丈夫だったのか?」
ボケ「漫画で読んだ知識を使う時だと思ってな。犬を避けた俺は、床に脱ぎ捨てていた服を腕に巻き付け、それを犬に噛ませたわけよ。あとは、このままこいつを風呂に沈めてやろうと、バスルームにいってさ」
ツッコミ「殺す気満々だな。躊躇ねえな」
ボケ「そしたら、風呂で裸のオッサンが髪を洗ってたんだよ」
ツッコミ「誰だよ」
ボケ「知らないオッサンだよ。そのオッサンをとりあえずスルーしてだな……」
ツッコミ「よくスルーできたな」
ボケ「犬の対処を優先したんだよ。オッサンが髪を洗ってる横で、風呂に犬を沈めてたんだが、犬がすげえ暴れるんだよ。そしたら、オッサンが慌てだして」
ツッコミ「バスルームの扉が開いた時点で慌てなかったのか」
ボケ「慌てたせいでシャンプーが目に入ったようでさ、『目がぁああああ!!! 目がぁあああ!!』って叫びだしてさ」
ツッコミ「シャンプーくらいで大げさだな」
ボケ「そしたら呼び鈴が鳴り出してな。犬をヤるのを後回しにして玄関に行ったんだよ。ドアを開けると隣の部屋の住人でさ」
ツッコミ「ああ、あのチンピラっぽいとか言ってた奴か」
ボケ「そいつ。で、扉を開けるなり『うるせえ!!! ぶち殺すぞ!!!』って怒鳴られてさ」
ツッコミ「犬とかオッサンとかが騒いだせいだな」
ボケ「そしたら、風呂場から出てきた犬が今度はチンピラを襲いだしてさ。腕を噛まれたチンピラが、犬をガンガン殴るのよ。それを見た全裸の知らないオッサンが『俺の犬に何すんの』ってチンピラを止めようとしてさ」
ツッコミ「オッサンの飼い犬だったのか」
ボケ「で、俺は部屋の外で騒いでる奴らを無視してドアの鍵を閉めて二度寝したわけ」
ツッコミ「よくそんな状況の後に二度寝できたな」
ボケ「そして、小一時間ほど寝て、目が覚めて気づいたんだよ。あのオッサン、親父だって。田舎から遊びに来てたんだよ」
ツッコミ「は? お前、知らないオッサンって言ってたよな」
ボケ「二日酔いだったからな。認知機能がどうかしてたというか。犬も、実家の飼い犬のペロだ」
ツッコミ「その犬に襲われたのか」
ボケ「昔から俺にだけ懐かなかったんだよな」
ツッコミ「懐かないとかいうレベルじゃねえけどな。そんで、親父さんはどうなったんだよ」
ボケ「ドアを開けると、全裸の親父が立っててよ。足元にはチンピラがのされてた」
ツッコミ「親父さん、強いんだな」
ボケ「学生時代、柔道やってたからな。んで、そんな親父の足にペロがまとわりついて、激しく腰を振ってんだよ」
ツッコミ「親父さんには懐いてるんだな」
ボケ「その後、親父が警察に連れていかれてな」
ツッコミ「全裸だったりなんやかんや問題があったもんな……」
ボケ「そんなわけで、やっぱり酒の飲みすぎはよくねえなぁ」
ツッコミ「お前が言うな」
ボケ「はい、ありがとうございました~」