表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/17

5 夢に対する考え

放課後になり、


帰宅前に携帯を確認するとそこには咲夜からのメッセージが入っていた。


『寄り道する。


たい焼き希望。


17:30


先帰ったら、怒る。』


と。


こうして暇つぶしを余儀なくされた。




睦美清隆はオカルト研究会の部室の前に来ていた。


その他の部室とは一線を隔するように禍々しい・・・異なる趣を示すそこに。


そこを目的地として目指していたわけではない。


暇つぶしとして歩いていたら、自然とそこにいた。


なにかに誘われるようにしてそこにいた。


もしかして出会い方が出会い方だから無意識にでも運命だと感じてしまったんだろうか?


「・・・少女趣味かもね。」



ここまで来てしまって、そのまま帰るのは忍びないので、


黒いカーテンで覆われた小窓の中が一体どうなっているのだろうと期待を抱きつつ、


扉をノックする。


コンコンコン。


すると、すぐに聞き覚えのある声で返事が返ってきた。


「どうぞ。」


「失礼します。」


扉を開け、案外普通な中の光景ではなく彼女に絶句する。


「っ!?」


「ん?


そんなところで突っ立ってどうしたんだい?


早く閉めてくれないかな?」


「・・・どうしたって・・・。」


「なんでもいいから早く閉めてくれないかね?


流石に風紀委員にでも見つかると面倒なんだ。


そこに座って待っていてくれるか?」


彼女はそうソファーを指さす。


「・・・・・・。」


清隆はそれに呆れを覚えつつ、何か言いたいのを堪えつつ、


大人しくドアを閉め、


彼女に促されるままにソファーに腰を下ろす。


彼女はソファーに座ったのを確認すると、


手慣れた様子でお茶の準備をし始めた。


湯を沸かし、


その間にカップの用意をし、


ポットに茶葉を入れていく。


清隆は彼女のそんな様子に感心しつつ、流れるような手つきに見惚れた。


そんな様子に気が付いたのか、


彼女は少々咎めるような口調で話しかけてくる。


「コラコラ。


そんなに凝視されると恥ずかしいのだがね。


女の子をそんなに見つめるものじゃないよ。」


「っ!?


・・・すいません。」


どうやら先ほどの言葉は冗談交じりだったようで、


彼女はおどけたような聞き方をしてくる。


「ははは、


そんなに魅力的だったのかい?」


「・・・まあ・・・そうですね・・・。」


事実かなり似合ってはいる。


おそらく10人、いや100人に聞いたとしても、


彼女の容姿に対して、その恰好を咎める者はいないと思う。


でもそれが理由じゃない、そう彼の顔は言っていた。


「命の恩人はゴスロリが好き・・・っと。」


・・・そう・・・


彼女こと、美鈴マリアが着ていたのは・・・



全身黒。



・・・それも大胆にフリルがあしらわれ、職人の腕が光る代物。



黒と銀のコントラスト・・・はたまた黒と白のコントラスト・・・。


先ほど彼女の容姿に言及したが、


それと合いあまってどこかおとぎ話の中にいるような気分になるほどに異質で魅力的だった。



・・・まあ、そんな恰好をした子がお茶くみをしている姿はおとぎ話ではそうそうないだろうが・・・。



「さて、お茶を用意したが、


お茶を飲みながら話でもしないかね?


魔法、超常現象なんでもいいよ。」


「・・・・・・。」


綺麗な人だが、どうやら変な人のようだ。


第一印象、第二印象、第三印象それぞれ違ったものが見えて呆気にとられる。


天使、ゴスロリ、オカルト。


『まあ、ある意味つながりとしては妥当・・・っと、そういえば、ここはオカルト研究会だった。』


そういう意味ではこの会話は妥当なのかもしれないと納得する。



でも残念ながら、


清隆はそんな出来事とは無縁の人間だ。


ただ普通のただびと。


異世界に行ったり、連れていかれたり、


はたまたUFOをみたり、牛が連れて行かれるのを見たことすらない。


やはり超常現象だったり、


魔法といったこととの関わりは皆無と言っていいだろう・・・言ってよかった、今朝までは。


「・・・あった・・・。」


彼女は清隆の言葉に微笑む。


清隆はそんな彼女の様子に気付かず、今朝の夢の話をし始めた。


別に特段理由なんかは存在しない。


ただふと思い出したそれを・・・。



「ふ~ん・・・なかなかおもしろいんじゃないかな。」


どうやらお気に召してもらえたようで、


マリアは悪女の如く楽しそうに微笑んでいる。


「・・・それではお茶もなくなったのでそろそろ・・・。」


その様子を見て、清隆が家に帰ろうとすると、


彼女はそれを制する。


「まあ、待ちたまえ。」


清隆はその声掛けにやはりなにかあるのかと身構えてしまう。


「・・・まさか・・・。」


ゴクリッ・・・。


するとマリアはこちら側にあった先ほど空っぽになったカップを手に取った。


ん?手に取る?


「???」


そして、ポットの中に余っていたであろう紅茶を注いできた。


『・・・なんだ・・・お茶か・・・。』


彼女はおそらく喉を潤して話を進めるんだろうと納得する。


その瞬間、あることに気が付く。


こちら側?


『・・・って、いやいや、それは・・・そのカップはっ!?』


この先起こるであろう行為を予想して、清隆の視線は彼女の唇に行く。


リップが塗られているのか、艶やかで柔らかそうなそこに。


彼女はその釘付けの視線に気づくことなく、


カップに口をつけるより先に口が動いた。


「どうぞ。話が長くなるだろうからね。」


「・・・・・・。」


清隆は言われるままにそれを受け取る。


そこには罰の悪さそんなものもあったのだろう。


そして中を見て後悔する。


中は濃い赤だった。


「・・・これは・・・。」


「紅茶、紅のお茶だ。


さて私の唇とどちらが赤いだろうね?」


バレていた。


清隆は更なる言及を恐れたのか、


血のように赤い液体を一気に煽る。


而して、苦み・・・渋みに口の中を支配され、悶絶する。


彼女はコロコロと楽しそうに笑う。


どうやら揶揄われていたようだ。


肩を落とし、踵を返そうとすると、今度はより真剣な様子でに引き留められた。


「悪かった。本当はまだ話の続きがあるんだ。」


「・・・わかりました。」


本当に俺に伝えておきたいことがあるんだろう。



俺は席に戻り、苦くない水を片手に話を聞く。


「まあ、これは私の考えなのだがね。


参考までに聞いてくれないだろうか。」


水を口に含む。


ゴクリ。


「君が見たのは予知夢じゃないかと思うんだ。」


「・・・予知夢?」



「ああ、簡単に言うと虫の知らせに近いもの。」


彼女によると、


奈緒美に対してのアレは体、というか本能が彼女を危ないものと認識してしまっただけ


とのことだ。



虫の知らせ。


彼女に関わると不幸になるとかだろうか?


生物としての本能が危険信号を出すって一体。


まったく気分が重くなる話である。



「まあ、完全に合致するとは限らない。


これからの行動の指針にでもしたらどうかなという程度のものだと思うよ。」


「・・・アドバイスありがとうございます。」


このとき、清隆はなんとなく彼女のような人がこれからもいたらと思った。



「また相談に来てもいいですか?」


清隆は思わずこんな言葉を発していた。


『・・・何をやっているんだ・・・僕は・・・。』


「ん?


・・・そうだね・・・。」


するとマリアは考え事をするように顎に手を当てる。


「さっきのは忘れて・・


「・・・だったらここに入部したらどうかな?」


・・・へっ?」


「うん、それがいい。


丁度、掃除係・・・もとい話し相手がほしかったんだ。」


「あれ?・・・今本音が・・・。」


「これでギブ&テイクじゃないかな?」


彼女は身を乗り出して言ってきた。


ギブ&テイク?


って、どういう意味だっただろうか?などと一瞬真面目に考えるが、


そんな思考はすぐにどこかにやる。


マリアの言うことには少しばかり反論がないわけでもなかったが、


確かにある意味では等価になるのかもしれない。



なにせ清隆はあの悪夢について咲夜にさえ話す気がなかったんだから。


・・・その相談相手ができるというのなら。



「・・・わかりました。」


釈然とはしなかったが、


こうして清隆は興味がないにもかかわらずオカルト研究会に身を置くことになった。


次から本編の予定

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ