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15 最初のアトラクションは?

デートの場所はどうやら、


あの有名な遊園地のようだ。


イノシシを題材にした遊園地ウリボウランド。


この地域が牡丹桜という地名からきているのだろう。


マスコットが男女のイノシシ。


確か牡丹くんと桜ちゃんだったか?


そこに向かっている途中、


私は勇気を振り絞り口を開く。


「あのさっきは・・・。」


「うん、寝顔見ちゃってごめんね。」


「いえ、いえいえ、こちらこそお見苦しいものを。」


「いやいや、そんなことなかったよ。


見れば見るほど味があって・・・。」


そんな彼の言葉を聞いて、


私の頬はさらに赤みが増す。


「もうっ!


からかわないでくださいっ!」


「あはは・・・ごめんごめん。


その代わりと言ってはなんだけど、


ここは俺に奢らせて。」


はっ!


「いや、そういうつもりでいったんじゃあ・・「なんて。チケットは母がもらってきたものだから。」


ああ・・・それなら・・・てっ!


「・・・いえ、ですが・・・。」


「いいからいいから、他に行く相手なんかいないし。」


他に行く相手なんていないから・・・ですか・・・。


「・・・そうですか。」


・・・あれ?


「咲夜さんは?」


すると彼は驚いたような顔をした後、


どこか気まずそうに視線を彷徨わせる。


「・・・ああ、咲夜ね・・・咲夜とは何回か来てるから、たぶん飽きちゃったんじゃないかな。」


「・・・はあ・・・。」


納得はできないけど、


睦美さんがそこまで言うなら・・・。


私は納得がいかないまでもそれを受け入れ、


睦美さんの後に続く。



遊園地内の乗り物を目で物色しながら考える。



さっきは本当に危ないところだった。


危うくバレるところだった。


本格的なデートの前に失敗なんてことになるところだった。


そうなれば・・・うん、東京湾・・・かな・・・それこそ本当に・・・。


「・・・・・・。」


まあ、この考えはやめよう。


考えてもいいことはない。


実際のところ、このチケットは貰い物というところは正しい。


ただ母からというのは嘘だ。


例のあの人からもらった。


男を手玉に取りそうなあの人から。


相談すると、


この遊園地を紹介された。


ここならベタだけど、


それなりに恋人らしい経験ができるのではないか、


とのことだ。


その一環としてチケットもくれた。


おそらく奢ると言っても遠慮するだろうからと。


なんというか・・・うん・・・流石だ。


本当にダメもとで頼ってよかった。



さて、次は・・・。


「じゃあ、ジェット・・「それはダメですっ!!」


ダメです?


うん・・・ダメです・・・ふむ・・・。


俺は彼女に見えないようにメモを見る。


1、最初はジェットコースター。


うん・・・書いてある。


書いてある。


俺は彼女に視線を送る。


「じぇ、じぇ、じぇ、じぇ・・・。」


どうやら彼女は混乱しているようだ。


「こ、こ、こ、こ・・・。」


兎に角、混乱しているようだ。


うん、周りの目が気になってきた。


流石にこのまま放置はまずいだろう。


「はい、落ち着いて。


深呼吸、深呼吸。スーハー・・・はい、スーハー・・・。」


「スーハー・・・スーハー・・・。」


さて、一体どうしたのだろう?


先ほどまで普通の会話ができていたと思うのだけど、


ただジェットコースターが苦手というにしては明らかな過剰反応だ。



さて聞くべきか、


聞かざるべきか?


俺がこんなことを考えていると、


彼女は口を開く。


「あの・・・Jはちょっと・・・子供のときいろいろとありまして・・・。」


「ああ、トラウマってやつ?」


「はい、Jは以前乗ったとき・・・。」


彼女が小さいとき家族である遊園地に行ったことがあるらしい。


その遊園地はかなり古くからやっていて、


数々のアトラクションにガタが来ていたらしい。


そしてどうやら彼女はその当たりをひいたようだ。


ジェットコースターが頂上で止まったらしい。



まあ、そんな出来事があれば、


台所に現れるあのカサカサ動くやつと同じ扱いになるのも頷ける。



これ以上蒸し返すべきではないと考えた俺は間髪入れず他のアトラクションを提案することにした。



いきなり躓いてしまったが仕方ない。


あの先輩にだって間違いはある。


「じゃあ、あのメリー・・「ダメですっ!」


・・・うん、また?」


「・・・はい、Mもそこで・・・。」


すると彼女は口を閉ざしてしまった。


恐らく口に出すと思い出してしまうと考えたのだろう。



うん、メリーゴーランドが嫌になる理由は全く思いつかないんだけど、


馬に足を括り付けられ、引きずられでもしたのかな?


それってもはや拷問だけど。



「・・・M、Mはダメなんです・・・。」



頭を抱え、吐き出す言葉はさっきと同じだ。



それからもいくつか提案をしたんだが、


ほぼほぼ似たような反応。



恐らくその老朽化がひどく安全面に難のあった場所のせいだろう。



なんか彼女をトラウマの宝庫に連れてきてしまったようで申し訳なかったんだが、


ようやく決まった。



お化け屋敷だ。



最初からお化け屋敷って、


男としてはなんか欲に塗れていそうで敬遠していたんだけど仕方がない。


まあ、


ちょっとだけ期待しちゃうけど・・・。


深呼吸のとき、こっそり見ていないこともなかったそれに視線がいってしまったのは、


男なら仕方のないことだろう。



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