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14 待ち合わせ2

私は睦美清隆さんに恋人の真似事をしてくれるように頼んだ。


理由は簡単、


咲夜さんが私の曲を見て、


眉を顰めているのがわかったから。


音楽の世界で天才と称される彼女が如何にも弾きたくなさそうなそんな顔をしていたから。


自分で努力して解決する。


彼女が納得できるようなものを生み出す。


いつもならこう考えていただろう。


・・・けれども今回は残念ながら、明らかに時間がない。


期間は・・・一週間。


流石にこの期間に劇的な変化が生まれると考えるのは現実的ではない。


このまま努力をし続けても、


本当の意味で奇跡でも起こらない限りは彼女を満足させることはできないだろう。


最期の覚悟を持って挑むこの曲を半端なものにはしたくない。


私は恥を忍んで、天才たる彼本人にヒントをもらえないかと頼むことにした。


すると彼女は私にこんな提案をしてきた。


咲夜さんの彼氏の睦美清隆さんとのデートを許すと・・・。




朝起きると、


時間は5時。


「・・・。」


緊張からか、早く目が覚めてしまった。


今日は待ちに待ったデートの日。


私にとっては初めてのデート。


乙女としてはこの初めては好きな人と・・・。


こんな幻想を抱いていた。


そういう意味では残念なのかもしれない。


決まった当初はこのような不満もあった。


けれども私はこれもいい経験と思うようになった。


よくよく考えると、そもそも男の人が苦手な私にとってはそんなものは夢のまた夢。


今回のように人の彼氏。


要するに危険性は皆無。


それに優しい人だということは先輩との話し合いを見ても明らかな人。


要するに信用できる人とのデートというのは渡りに舟かもしれない。


でも、そういうことにデメリットがないわけではない。


「・・・失礼は許されない・・・よね・・・はあ・・・。」


早めに待ち合わせ場所に着いているのはもちろんのこと、


仮にも彼の彼女の役を仰せつかったわけだから、


彼の価値を下げるような真似は絶対に禁止。


身だしなみをしっかりするのはもちろんのこと、


間違っても奢ってもらうなんてことはなしだ。



・・・まずは早めに待ち合わせ場所に向かわなくては・・・。


・・・とはいえだ。


流石に早すぎる。


確か昨日の夜は2時くらいに寝たような・・・。


・・・もう一度寝ようかな?


集合は10時だし・・・9時に出れば早めに着くかな・・・。


今から寝れば、3,4時間は・・・。


「・・・うん・・・。」


最近疲れてるからたぶんもう一回寝たら当分は起きないと思う。


気が付いたら12時や昼過ぎになってると思う。


今日はお母さんもあの子もいないし・・・。


「・・・はあ・・・仕方ないかな・・・。」


カーテンを開け、


窓を開ける。


朝の冷えた空気が部屋の中に入り込んでくる。


まだ5月とはいえ、流石に少し肌寒い。


まあ、今の私にはちょうどいいくらいかも。


うん・・・かなり早いけどご飯食べたら出ようかな?


そうすれば、


この肌寒さが起こしていてくれるかも。



なんてことを考えたのが間違いでした。


暇つぶしに本を読んでいたのですが、


徐々に気温が上がってきたせいか、


肌寒さはどこへやら。


どうやら眠りについてしまったようです。



私は目を開くすると目の前には男の人の顔。


あれ?


この人は?


「おはよう、花咲さん。」


「おはようございます?」


・・・睦美清隆・・・さん?


なんで彼が?


あれ?ここ・・・私の部屋・・・じゃない?


そして私の頭の下には何やら暖かいものが・・・。


私は思わず飛び起きる。


「あれ?


うん、え?」


見た先にあったのは彼の足。


太ももの辺りに何やらしわのようなものができている。


やっぱり膝枕をしてくれていたようだ。


「あ、あの・・・その・・・。」


すると、視線を彷徨わせた私の視界に駅の時計が入る。


「・・・じゅ、11時・・・っ!」


あ、謝らなくっちゃっ!


で、でも何を?


まずは・・・


こっちからお願いしたことなのに眠っちゃって、


時間には遅れちゃって、


おまけにお膝まで借りちゃって・・・。


うわ~ん・・・どれから、どれから謝ればっ!?


混乱している私に彼は声を掛ける。


「?それじゃあ行こうか?」


「あっ、はい・・・。」


そう思わず答えちゃう私。


ううう・・・なにやってるの・・・私・・・。



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