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1 悪夢~最期~

大学を卒業後、


すぐに結婚した。


相手は可愛いくて、気立てもいい、人気もあって、中高と男子の憧れの存在だった。


奈緒美だ。


彼女は幼馴染で高校の2年の冬から付き合い始めた。


男子達からやっかみを受けなかったと言ったらうそになるが、


ほぼ概ねみんなが祝福してくれた。


高校時代は本当に最高だった。


好きな相手と付き合うことができて、


みんなから祝福を受けて、最高だと思っていた。


・・・本当にそう思っていたんだ。



彼女は変わってしまった。


いや、隠していた本性を現してきたというべきか・・・。


大学に入るまで。



大学に入ると、


新入生の勧誘だったりで女の子に相手をされることがあった。


すると、間に入ってきてそれを妨害したり、


そういえば、無理やり唇を奪われたこともあったか・・・。


当時は軽い嫉妬だと思っていた。



けれどもそれは違った。


俺が女の人と少し話すだけでも相手に射殺さんばかりの目を向けるようになった。


そして、後で会話内容をすべて聞かれる。


ある時は盗聴器なんてものがカバンに仕掛けられていたこともあった。



この辺りでかなり嫉妬深くて、疑い深い子だったんだと思い始めた。


もしかしたら浮気を疑われているのかもしれない。


俺はそんな彼女を安心させるべく、


なるべく女性と話すことは避け、


会話をしたとしても、聞かれれば、包み隠さずに話すことにした。



けれども彼女はその程度では満足できなかったようだ。



そのことを認識させられる出来事が起こる。



そして事件は起こった。


俺はある時レポートを出し忘れてしまい、


デートに遅れると連絡した。


これだけだったら問題はなかったんだろう。


けれどそれは起きてしまった。



俺はレポートを出した後、


知り合いの先輩に話しかけられ、少し話をした。


内容は大学生活によくある他愛のないほんの世間話。



すると、どうしてかわからないが奈緒美が来た。


きっと待ちきれなくて来てしまったんだ。


俺は内心彼女を可愛いなと思っていた。



俺はすぐに先輩と別れて、


彼女の方に向かう。


すると・・・。


彼女はおもむろにバッグの中から何かを取り出した。


・・・彼女は包丁を持っていた。



その瞬間、ひどく嫌な予感がした。


そして、


「清隆くんは悪くない。清隆くんは悪くない。


悪いのはあの女。


きっとあの女が誑かしたんだ。


そうだ、きっとそうなんだ。」


そして彼女が先輩に向かって走り、先輩に向かって・・・。



このとき俺が奈緒美を抱きしめて止めていなかったら、


こう考えると恐ろしくて仕方がない。



幸い先輩は気付かずにどこかへ行ってしまった。


それから、その先輩とは会うことはなかった。


顔が合わせづらかったというのもあるが、


彼女が丁度4年で、卒業する間近だったというのも大きいだろう。



きっとこのときだろう。


彼女の異常性を本当に自覚したのは・・・彼女がヤンデレだと・・・。



それからも細かいことがいくつか。


恐ろしいこともそれなりに・・・。



このような経験をした俺は、就職先は在宅ワークがほとんどの仕事を選んだ。


仮に打ち合わせがある場合は彼女も同行。


と言っても基本は封筒の受け渡しとパソコンでできない手続きのみ。



それからはデート。


こういった流れの生活をどれくらいか続け、


俺が30になったころ、


遂には俺に限界が訪れた。


俺の心が耐えきれなくなってきたんだ。



外界との交流は最低限、


両親や妹との会話すら許されない。



遂に最後の交友関係の同じ幼馴染の咲夜との交友すら禁じられたのだ。


彼女立会いのもとの会話だったというのに・・・。


当然俺は詰め寄った。


最後の外部との交流だったのだから、


本当に気を抜ける時間だったのだから。



・・・けど




・・・けれどダメだった。




そうして俺は屋上の上にいた。


今回がおそらく最後のチャンス。


束縛はすぐそこに迫っている。


両親や親友たちに・・・咲夜に詫びながら空を舞った。


これで終わり。


これで自由になれる。


・・・奈緒美から解放される。


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